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知識の宝庫〜異世界で上を目指す方法〜  作者: あやた
第2章 学園〜小等部〜
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第十九話 虎徹

白く高く聳える外壁。


たくさんの人がまだかまだかと何かを待っている。


「…懐かしいなぁ」


短めの灰色の髪に印象的な瞳。


その瞳は右目が赤色をしており、左目は灰色のオッドアイ。


まだ幼さの残る顔には可愛らしさが残っている、男の子。


前世では事故により死を迎え、前世の記憶を持ったまま転生した。


気づいたときにはこの世界で、特殊な加護を持って生まれ育っていた。


「まぁ、問題なく合格してるとは思うけど…」


その特殊な転生といった事象。


おかげで特殊な加護を、不気味な黒い影から授かっている。


そのおかげで順調にステータスを上げ、成長することが出来た。


だがその加護のおかげで昨日はパニックとなった。



ーーーー



その時は突然訪れた。


太陽の光によって明るかった神殿内が、急に深い闇にのまれていく。

その瞬間は、アヤトが祭壇に横になりホージ司祭が祝詞をあげ始めた時だった。


漆黒の闇の中、アヤトの身体が神々しく光る。


その光は一向に収まらず、薄いベールを纏っているかのようだ。


神秘的だが少し怪しげな光景に、周りの人々は固まっていた。


神殿内にはホージ司祭の祝詞だけが響いている。


「…おつかれさまです。無事に終わりましたよ」


だんだんと白い光が収まっていき、暗かった神殿内に陽の光が戻っていく。


「ご兄弟そろって規格外ですな」


なかなか目を開けないアヤトの意識は既に戻っていた。


自分の異常な加護についてどう説明したらいいのか悩んでいたのだ。


(加護のレベルが10っていうのは異常だよな…)


解りきってはいたが、最後の足掻きをみせる為の寝たふり作戦。


(絶対騒ぎになるよな…)


そんな作戦は明らかに無駄である。


(なんだか周りが凄い静かだな…諦めるか)


もしかしたら、今までの異世界生活が夢だったのではないかと思ってみたりする。


(…みんなの目線が痛い)


ゆっくりと身体を起こし、目を開けて周りを見渡す。


静かに見つめるいくつもの目の中に、サムズアップした能天気なロドフが瞳に映る。


(こんなとき父さんには救われるよな…)


祭壇から降りて家族のもとに戻っていく。



ーーーー



その姿は以前協会を訪れた3年前とは見違えるようであった。


周りの同年代の子達と比べると背は少し高く、体つきはしっかりとしていた。


この3年間、地獄のような鍛錬を積み重ねてきたからである。


身体の見えないところには無数の傷跡が残っている。


規格外の加護を手に入れたといっても、所詮は子供でレベルも1である。


ロドフに軽く捻られては、リーナの魔法を身体で体感するという他の家では到底想像のつかない特訓の日々である。


当初、生まれながらに加護を持ち合わせていることから、ある程度鍛錬にはついていけると思っていた。


(甘かったなぁ…初日から死にかけるとは…)


2歳から本格的に始まった鍛錬は、気絶をしても休ませてはくれない。


意識が遠のけば水をかけられ覚醒する。


怪我をしても魔法で治り、すぐに再開される。


鍛錬にはご近所さんの『シュガー家』も一緒だ。


これが地獄の鍛錬に拍車をかけていった。


熱血男のロドフに「女の子が立っているのに、男のお前が寝ていてもいいのか!」と拍車をかけられる。


この女の子は、アヤトと同い年の『サーラ』だ。


ユリカ姉さんに憧れる脳筋女だ。


そんなサーラはどんな厳しい鍛錬でも「ユリカはそのくらいじゃへこたれなかったぞ」と言われればすぐさま復活する。


ツェット家とシュガー家の合同訓練は、朝早くから陽が落ちるまで休み無く続く。


一度だけアヤトは「サーラと比べられても…、そんなこと言っても…」と口答えをしてみたことがあった。


その日からは更なる地獄が待っていたのは言うまでもない。


4歳になる頃には『魔の森』の近くまで行き、そこから漏れ出てくるモンスター狩りの日々である。


姉のユリカとロドフがこっそりモンスターを狩っていたことがばれた一件により、ツェット家、シュガー家そろっての遠征となっていた。


元SランクとAランクの冒険者が居れば、モンスターが可哀想になってしまう程だ。


この時初めて聞いたのが、以前は4人でパーティーを組んで冒険者活動をしていたとのこと。


Sランク2人に、Aランク2人の最強パーティー。


『ロドフ』剣術士としてパーティーの前衛を務めるアタッカー。


『リーナ』魔術師として、攻撃・回復両面をサポートできる万能型。


『ガウル』槍術士として、槍と盾を使いこなすパーティーのタンク的ポジション。


『ローラ』弓術士として、パーティーの穴を埋める遊撃手。


その4人の英才教育によって育て上げられた2人である。


リーナの提案により、モンスターを狩るのであればきちんとした武器が必要だろうとなり、アヤトの腰には真っ黒な剣が下げられていた。


その剣は、この世界で一般的な物と比べ刀身が細身である。


半分くらいの幅の刀身は、競合った際に折れてしまわないか心配なものだ。


この剣は、名工『エドワード』による一品だ。


製作の際にはアヤトが口を出して、憧れの『日本刀』を模した物にした。


鞘も刀身も真っ黒な刀は『ダマスカス鋼』を使用した一品。


アヤトは持ち前の検索機能を使用して、刀の性質やどんな金属が良いかを調べ上げた。


調べた結果と、この世界の金属・鉱石を調べ特注した。


黒い木目のような波紋が光る刀身には『神鎚文字ミョルニルワード』が刻まれている。


神鎚文字について調べ上げたアヤトは、新たな挑戦を施した。


通常、剣と持ち主をコネクトする力は、成長に合わせて剣が変化していく物だ。


このコネクトのパイプを魔力とも繋ぎ合わせた。


それにより、任意に刀に魔力を流すことが可能となった。


炎のフレイムを流し込むとたちまち『焰刀』と姿を変えていく。


この相棒を『虎徹』と名付け、肌身離さず身につけている。


ーーーー


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