第十七話 合格発表
会話内に登場する主人公の呼称を変更
「綾人」⇒「アヤト」
異世界での雰囲気を壊さないようにいたしました。
※会話以外の綾人は前世での記憶を引きずっています。
幼少期を抜けると「アヤト」に統一されていきます。
「ただいまぁー!」
ユリカは元気よく銀の匙亭の暖簾をくぐる。
「おがえりぃー」
頭を抱えたロドフとブルが食堂の机に突っ伏している。
(おいおい、何時まで呑んでたんだよ)
「お帰りなさい。どうだった?」
店の奥からドロシーが出てきた。
「ただいま、母さん。まぁ…頑張ってきたよ」
「私は完璧ね!絶対合格よ!」
「そりゃー試験官を病院送りにする受験生なんてそう居ないからね」
「まぁ!ユリカちゃん、本当なの?」
(姉さんマジか…試験官さん御愁傷様です)
この世界には回復魔法もあるので多少のことでは大丈夫であろうが、試験官が可哀想に思う綾人であった。
「リーナそっくりね!リーナも入学試験の時に試験官を倒しちゃったのよ」
(親子そろって…僕は入学試験の時はちゃんとセーブしよう)
「それは内緒でしょドロシー!」
「私はリーナの2個下だったから噂でしか聞いたこと無いんだけど、それ以来リーナは『怪物』って影で呼ばれてたんだから」
(うん、いっそのことその『怪物』受け継いじゃえよ)
「ドーローシー!あとで許さないんだから」
「あー怖い!ふふふ」
ドロシーは店の奥に逃げていく。
「合格発表はみんなで見に行こうと思ってたけど…これじゃ無理ね」
ロドフとブルは相変わらず机に突っ伏しており、うめき声をあげている。
宿屋の主人がこの状態の為、ウタの両親も忙しそうだ。
「じゃあ、仕方ないけど私たちだけで行きますか」
「はーい!いってきまぁす!」
「ゔゔぅー」
せっかく戻ってきた宿に別れを告げて、学園に戻っていく。
ーーーー
「合格してるとは思うけど、なんだかドキドキするわね!」
「僕は口から心臓が飛び出してきそうだよ」
「なにそれ!面白そうだからやってみてよ!」
「…はぁ。本当に出てくるわけないだろ…馬鹿が」
あきれた様子で最後の言葉を小さく吐き捨てる。
(ウタさん急激に黒くなっていってる気がする…)
「馬鹿で悪かったわね!」
「っごほ」
鋭いリバーブローがウタに突き刺さる。
(もし2人が合格したら…これが続いていくのか。ウタさん大丈夫かな?)
「2人とも、もうすぐ発表みたいよ」
集まる群衆の目線は、学園の一角にある建物の壁に向かっていた。
「お集りの受験生の皆さん、お待たせいたしました。これより合格者の発表を行います」
『わわわー』
歓声が地鳴りのように聞こえる。
「これより合格者の受験番号のみ、この壁面に表示されます」
「合格者はこの後、受験票と合格証書を交換いたしますので室内に速やかに移動してください」
若い男性教員の声は魔法によって拡散され響き渡る。
「では…ご確認ください」
その瞬間、白い壁に受験番号が表示されていく。
魔法によって表示された番号は500に満たない数だ。
受験者はその10倍は優に超える。
自身の受験番号が表示されて歓喜に沸く者、探しても探しても見つからず膝から崩れ落ちる者。
「あった!あったよ!」
「…あ…僕の番号だ」
自分の番号を見つけ抱き合うユリカとウタ。
「2人とも良かったわね」
リーナはその2人を優しい表情で見つめる。
(ウタさん…これから学園生活頑張って生き延びてください。姉さんは任せます)
ここで密かにお祈りをあげる赤ん坊がいるのであった。
ーーーー
2人の番号が見つかってから数分が経過したが、周りの状況が落ち着かず、未だに動けない。
そんな中、ユリカはわかりやすいくらい喜んではしゃいでいた。
一方、ウタは安堵の表情といったところだ。
「おい、貴様の受験番号は表示されたのか?」
突如後方から男性の声がかかる。
「え?もちろんじゃない」
それに反射的に答えるユリカ。
「嘆かわしい。うちの子が落ちて、こんな子汚い平民風情が…」
「お前の受験票をよこせ!」
(なんだこの親子は?)
煌びやかな衣装を身に纏った親子が声をかけてきた。
「はぁ?なめんじゃないわよ、誰があんたなんかに渡すもんですか!」
その親子の言葉に、怒りのこもった声で答える。
「どちらの方か存じ上げませんが、それは違法行為です」
親の方に注意をするリーナ。
「余はヘンリー子爵であるぞ」
「だから何よ!」
かぶせ気味に答えるユリカ。
「これだから…小汚い平民風情は礼儀がなっておらんのだ」
「いいから受験票をよこせ。俺が合格者としてふさわしい」
ユリカの手から受験票を奪おうとするヘンリー子爵。
「はぁ?実力が無いから落ちたんでしょ?」
受験票を奪おうとする男を身軽に避ける。
「ふっ…そんな身のこなしじゃ受からないでしょうね」
(…姉さん、明らかに煽ってるでしょ)
すると貴族の子供は腰に下げていた短剣を抜く。
「この平民風情が!思い知らせてやる!」
貴族の子供が短剣を振りかざしユリカに迫ってくる。
(御愁傷様です)
リーナ、ウタ、綾人の3人は貴族の子供を哀れみの目で見ている。
「ごふっ」
ユリカの得意のボディーブローが決まった。
先程、ウタの鳩尾にも決まった得意技だ。
ウタは自分の腹をさすり、心配そうに見つめている。
(あのボディーブローの恐さを知っているんですね…)
その光景を見ていた貴族の親がなんだか騒いでいる。
「な…こんなこと許されると思っているのか!」
貴族がより一層大きな声をあげたその時だった…
「これ、やめぬか。何をしておる」
綾人達の上空から声がかかる。
「あら、エドワード校長。お久しぶりです」
リーナは口に手を当てて、「おほほほ」と上品に見せている。
「な!!校長だと!!」
貴族が明らかに動揺を見せる。
空から舞い降りてきた老人にざわめきが起こる。
「ひさしぶりじゃのぉ。リーナ」
「先生もお元気そうで何よりです」
「まったくお主はいつも問題の渦中に居るな」
「まぁ!そんなことないですわ」
親しげに会話をする2人。
(この人が校長か…圧力がすごいな)
綾人はその人物が放つ圧に圧倒されていた。
「ふむ…そういったことか。…ヘンリー子爵殿」
逃げ出そうと後ろを向いて歩いている貴族に話しかける。
「はっはい!!!」
「…次は無いからのぉ」
「っはい!」
凄まじい逃げ足で逃げていくヘンリー子爵の背中は、小物感が漂っていた。
「さて、これで解決じゃの。君たちも早く合格証書と交換してきたまえ」
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(なんだと…こんなことは初めてだ…)
ステータス画面の検索機能を使っていた綾人は困惑していた。
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[ エドワード校長 ]検索
『エドワード・サン・ケリー』
アインスト王国首都アインハートの学園にて校長の職務を勤めるもの
ーーーErrorーーー
※魔法でプロテクトされています。
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(本当に基本的なことしかわからないな…)
検索の加護は検索したいワードがあれば、万能かと思っていた。
(あの圧力に、このエラー…何者なんだ)
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「今年も粒ぞろいの生徒が集まったのぉ…しかし3年後も楽しみじゃの」
エドワード校長は独り言をつぶやきながら廊下を歩いていた。
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