第十四話 錬金術
『コンコン』
扉の方から音がした。
「失礼します。お茶をお持ちいたしました」
修道女の方が人数分のお茶を用意してくれた。
「こちらは焼きたてのクッキーです。よろしければ」
「すまないね。祭壇の方は大丈夫かね?」
そういえばホージ司祭が抜けてきて大丈夫だったのだろうか?
「はい。代わりの方が祝福を行っております」
問題は無いようだ。代わりの司祭が居たようだ。
「では、次にウタ殿の番ですな」
「はい。ステータスオープン…」
先程、怪物ユリカの誕生に加護を3つ受けた自分を忘れてしまっているウタであった。
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Name:ウタ・フレー・トラバース
Level:1
Job:ー
HP:115(115)
MP:415(415)
ST:105(105)
IR:ー
筋力:80
物理攻撃力:60
物理防御力:55
魔力:90
魔法攻撃力:120
魔法防御力:100
敏捷:50
運:30
スキル:黒魔術師Ⅲ
(炎のフレイムⅡ、水のフレイムⅡ)
練金術
戦術
加護:黒魔術師の加護Ⅲ、練金術の加護、戦術の加護
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「ど…どうですかね?」
「これまた…珍しい加護もありますな」
ホージ司祭は、ほぉーっと白いひげを触りながら感心している。
「まぁ!ウタ君は魔法の才能があるわね。私以上の魔法使いになれるわ」
リーナに褒められると、特徴的なたれ目が余計に下がる。
「…リーナ以上か」
なにか遠い目をしているロドフはさておき、錬金術と戦術の加護とはどのようなものかと綾人が考えていると…
「戦術の加護については見たことはありますが、練金術の加護は初めて知りますな」
加護は人の数ほど様々な種類があるため、確認されたことの無い加護も稀に授かる者がいる。
「どんな加護なんだろう…」
期待と不安の入り交じった表情になるウタ。
「スキル欄にも錬金術とありますな。錬金術といえば、金属など錬成する術だと文献などには記載されておるが、実際に使った者は…」
「…っち。私の凄さが薄れるじゃない」
ウタの耳元で、肘で小突くように責め立てる。
「ご、ごめんって」
(ウタさん!そこは謝っちゃダメだ!)
「こんな珍しい加護であるならば、学園で研究してくことをおすすめさせていただきます」
学園には優秀な先生や、多彩な才能を持った上級生などが居る。
しっかりと学べばきっと多彩な活用方法が発見できるだろう。
「…でも。入学試験なんてとてもじゃないけど…」
この学園には山ほど受験者が押し寄せる。
倍率も異常なほど高いので、合格者はほんの一握りの存在だ。
「大丈夫だ!男は度胸だ!」
ロドフらしい考え方だ。
「…それはさておき、ウタ君」
「はい!」
リーナはロドフの発言を完璧に流し、真剣な顔になる。
「ウタ君は日頃ちゃんと魔法の訓練をしてたみたいね」
「…いえ、訓練というか…家の手伝いをするのにうちに…」
実家が宿屋ということもあり、火と水を使う頻度が高いことから自然とそれが魔術の鍛錬となっていたのだ。
「フレイムⅡレベルがあればある程度のところまで行けるはずよ」
「でも、家の手伝いもあるし…」
「任せといて、ガウルさんには私たちから話してあげる」
「あとは、ウタ君の挑戦する心だけだ!」
懲りずに拳を握りしめて熱く訴えかけるロドフ。
「…ありがとうございます。僕、頑張ってみます!」
残念だが、ロドフのことは全員無視だ。
(…父さん。僕は見方だよ。)
「じゃあ、いったん宿屋に戻りましょうか?」
ホージ司祭の私室から出て宿に戻る一行。
「るんるん…アヤトくんの加護も楽しみね」
ユリカは自分の加護に満足したのか、早くも3年後の綾人に期待する。
「私の弟だもん!アヤトはきっと凄いよねー」
弟大好きの姉はまだろくに喋れない赤ん坊のほっぺたを伸ばして戻して遊んでいた。
(…姉さん、痛いよ)
優しく遊んであげているつもりだろうが、脳筋の力は普通ではなかった。
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