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知識の宝庫〜異世界で上を目指す方法〜  作者: あやた
第1章 幼少期
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第一話 プロローグ

緑豊かな平原が視界いっぱいに広がっている。

(……ここはどこだろう?確か学校に向かっている途中だった気が……)


僕は16歳の高校2年生。平凡な人生を送っている一般的な高校生だった。

……だったはずなのだ。

だがここは、緑豊かな平原に馬が数頭、見かけない作りの家屋が見える範囲で2軒だけ。僕の地元ではこんなところ見た記憶が無い。


「ー…ーーー……?ーーー…」


後ろから声をかけられたが、何を言っているのかわからなかった。

(あれ?どうしたんだろう何を言っているのかわからなかったな)


「ーーー…ーーー………」



(日本語…じゃないのか?英語?中国語?いや全然違うな)

声をかけてきた女性は僕を見ながら何か言っている。


(ん?何を言っているのかもわからないけど、、、なんだ!女性に抱えられている?)

僕はその女性に抱えられており、優しく微笑みながら話しかけられている。


(どうして?高校生の僕を抱えることなんかこんな女性にはできないだろ!)

不思議そうに女性を見つめる僕に、今度は見たことの無い男性が話しかけてきた。


「——ーーー……、…ー…ーー」


こちらの男性は口角が緩みきった表情で僕に話しかけてきた。


この見知らぬ男女は、だいたい20代半ばくらいだろうか?僕の顔を見ては、お互いの顔を見合わせて仲睦まじく話している。

わからないこと、おかしいことが目の前で起こっていく…



ーーーー



「……あ…あや…綾人(あやと)!早く起きなさい!」


朝から甲高い声が僕の脳を揺さぶり起こす。

(ん…朝?…さっきのは夢だったのか?そりゃそうか、しかしよくわからない夢だったな。なんだか頭も痛いし…)


「起きたなら早くしなさい!あんたのおかげで私達まで遅刻するじゃない!」


「…朝からうるさいな。そんな大きな声で言わなくてもわかってるよ。急げばいいんだろ?」

先程から大きな声で騒いでいるのは僕の幼馴染み『永盛ながもり奈々(なな)

「なによその言い方!この!」


起き抜けの身体に、奇麗な手が握り拳を…いや、これはもはや凶器だ。

僕の下っ腹に突き刺さる。


「ぐぅ……ばか…入ったぞ」

(くそ、いつもの癖で余計なことを言ってしまった)


「綾人が悪いんでしょ!いくら起こしてもなかなか起きないし、起こしてあげたのに文句は言うし!もう知らない!」


奈々はドタドタとわざと足音をたてて部屋を出て行く

(くそ…朝から余計な一撃を…しかしさっきのは夢だったのか?今までに見たことも無い変な夢だったな…)


そんなことを考えながら急いで制服に着替えて階段を降りリビングに向かう。


「おはよう、綾人」


制服にエプロン姿で優しく声を抱えてきたのは『永盛(ながもり)風香(ふうか)

奈々の姉であり、癒しの女神だ。


「朝ご飯出来てるよ。早く食べちゃってね」


お味噌汁のいい香りが、綾の目を覚ます。


『ーーーいただきます』

この二人が朝から僕と食卓を囲むのには理由がある。



ーーーー



今から12年前…まだ4歳だった僕は両親と、幼馴染みの風香と奈々で海に遊びに行っていた。


僕は泳ぐのが苦手だったのか、水を怖がってしまい砂浜で父とお城を作って遊んでいた。


何かにつけて熱中してしまうと、とことんこだわってしまう性格の父は巨大な砂の城を作って、それを背景にした写真も残っている。



そんな楽しい旅行中に事故が起きてしまった。



風香と奈々と一緒に水際で遊んでいた母がーーー溺れた子供を助ける為に自らも溺れて命を失ってしまったのだ。


泳ぎの上手かった母であったが、子供を抱えて泳ぐのは困難だったのか多量の海水を飲んでしまい帰らぬ人となってしまった。



ーーーー



そのことがきっかけか、片親となってしまった僕の母親がわりのように風香はいつもご飯を作ってくれている。

同じ高校に通う2人は、姉の風香が高校3年、妹の奈々は高校1年と今年からは3人仲良く同じ高校に通えることになっている。


「綾人の起きるのが遅いから急いで食べなくちゃいけないじゃない!」


妹の奈々は勝ち気な性格で、いつも僕に突っかかってくる。ちなみに剣道と空手は全国レベルの強者だ。…こんな奴に朝から一撃をもらって無事な僕も凄いと思う。

(まぁ…僕が悪いのかもしれないけど、手加減してくれよ……ほんと)


それにひきかえ、姉の風香は優しく気の利いた性格で学校でもアイドル的な存在である。長い黒髪に豊満なボディーは学校中の男達を魅了する。そんな彼女は学校では生徒会長を勤め上げる才色兼備な女性だ。

(僕にとっては女神だ!)


そんな風香と幼馴染みで、朝からご飯を作ってもらえる僕は幸せ者だ。しかし奈々のおかげでマイナスだ。

そんないつもの朝の風景、違ったのは謎の夢くらいだった。



ーーーー



「早く学校行くよ!綾人のおかげでいっつもギリギリじゃんか!」

玄関を急いで出て行く3人は、いつもの道を走って行く。


「お、今日は白と水色のストライプか!」

前を走る奈々のスカートがめくれ上がり、綾人がニヤニヤしながら今日の報告を済ませる。何故か同じスカート丈のはずの風香の下着が見えたことが無いのが謎だ。


「ごふ。」

見事な蹴りが綾人のみぞおちに決まり、悶え苦しむ。


「ッホント。サイテイ。」

見下した奈々のスカートから改めて覗き込む綾人。


「お前が油断してるからだ!風香のパンツなんて見えたこと無いんだぞ!」


「お馬鹿さんね。ほら」

風香が綾人の手を取って起こしあげようとしたその時だった。



『キーーーーギギキキーガガキキギ』



小型のトラックが交差点を曲がりきれずに、轟音をたててこちらに向かってくる。


「ッッッツ!」


声に出ない声で綾人は奈々と風香の手を力一派引っぱり、トラックの軌道から二人を逃し、その反動で車道へ飛び出してしまうのだ。



ーーーー

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