9 両想い……?
僕は、本当にいる必要があるのだろうか。
僕は、毎日のように蹴られて、殴られて……。
あの笑顔で殴ってきて、生きる価値ないんだって、平気な顔して、僕のことを、笑っていた。
その笑顔も、何もかもが憎すぎて。
いつしか、本当に殺される日が来るのだろう。
せめて、麗香に会わせてくれ。
僕には、麗香が必要なんだ。
麗香に会わせてくれなきゃ、僕は、もう……。
「こいつ本当に反応ねぇな。そろそろ殺しちまう?」
「馬鹿、金がどうなってもいいのか」
「そんなん、生きてるって言って、貰えばいいだろ。そしてそいつにも死んでもらう」
「あぁ、麗香ちゃんって子だろ? お前の携帯で見たら、意外とボーイッシュな少女だったからな。殺して内臓どっかに売れば、それも大儲けだろ?」
途端に、周りは、大爆笑の渦。
僕は、不快感を覚えた。
刈り上げの男から、その言葉を聞きたくない。
その名前を、その口から、言わないでくれ。
麗香、大丈夫かな。
僕のこと、好きでいてくれるか。
麗香は、無事で家に帰れるか……。
「なぁ、麗香って、どんな奴なんだ…?」
刈り上げの男の隣にいつもいる中年男性が、俺に聞いてきた。今は刈り上げのリーダーはいない。パチンコに行っているのである。
「麗香…は、まぁ色々と、いい奴だよ……」
「ふぅん。どんな奴?」
「騒がしいけど、優しいんだよ。甘やかすというか……そんな、お母さんっぽい安心感があって、可愛い……というか、すごく頼られているというか……」
「へぇ、そんないい人なんだよね」
「僕、麗香は、いい人だと思って……」
「お前、そいつのこと、好きなんじゃねぇの?」
「はぁ?」
「だって、そんなに麗香ちゃんのこと、気にしてるじゃん。長所いっぱい見付けるって、結構すごいことだよ」
中年男性が僕に向かってそんなことを言ってきた。
「でも僕、麗香の告白断っちゃって……。いまさら何て言っていいか……」
「告白って、君、麗香ちゃんに告白されたの?」
中年男性が、目を見開いて、尋ねた。
「でも、麗香の告白を断って、今更好きだって言っても、聞くわけじゃないだろ? だって、僕と麗香はもうすごく離れているんだぞ……」
僕がそう言った途端に、中年男性は、僕の肩に手を置いた。
「大丈夫だ。麗香ちゃんは、絶対翔君を見捨てたりしない」
「そうなのかな……」
「あぁ、そうだ。絶対」
中年男性は嬉しそうに僕を見た。
「そんな奴を好きになって、良かったな」
この人は、少しだけだけど……良い人だと思う。




