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さようなら  作者: けふまろ
本編
6/20

6 事件と一緒

 私は事件資料を1時間読んでいた。

 他の二人は飽きて小説や漫画を読み始めたが、私は好きな人が誘拐されてそんな呑気に漫画小説を読んでいる暇などなかった。1分1秒たりとも無駄になど出来なかった。


「あっ!」

 私の声に、森口さんと悠美香が、事件資料を覗いてきた。

「どうしたの?」


「これなんだけどね……。

『 児童誘拐殺人事件

 

 2013年の9月25日、新築のマンションで誘拐事件が発生。誘拐されたのは草野恋緒(くさのれお)(10)。

 後日容疑者の菊池邦雄(きくちくにお)(48)容疑者から恋緒君の自宅に、「息子を返してほしければ今年の12月25日、東京スカイツリーに現金三億円を持って来い」という脅迫電話が届き、その後何故か一人で行くことになった恋緒君の友達の木崎優莉(きさきゆり)(11)が行くことになり、東京スカイツリーの男子トイレに連れて行かれ、菊池容疑者の仲間に集団暴行をされた優莉ちゃんはまもなく死亡した。

 現金を奪った菊池容疑者とその仲間数人は恋緒君を解放し、逃走しようとしたが、東京スカイツリーの警備員に取り押さえられ、事件は幕を閉じた。』……。

 これ、どう見ても同じ点がいくつかあるの。三億円っていう数字も、時期も、渡す日も」

 私が言うと、森口さんは、顎に手を当てて考える素振りを見せた。

「児童誘拐殺人事件か……。興味深いなぁ……。そのときの新聞記事も挟まってるみたいだし……というより、こんなに内容が一致している事件が三年前にあったなんて、驚きだよ」

「そうだよね……。私も」

 この菊池邦雄容疑者というのは、無職のフリーターで、ネットでよく男子向けの記事などを書いている、身内も縁を切りたいと考えていた、ボロアパート住みの不潔な引き篭りらしい(48歳にして)。

「あ、恋緒君のインタビューも載ってる」

 新聞の切り出しには、恋緒君のインタビュー記事も載っている。恋緒君は眼鏡をかけている、ちょっと痩せている男の子だった。

「『彼女は僕の初恋の人で、いつも優莉さんとデート出来ないかなぁ……と思っていました。だけど、優莉さんが無残に暴力を振るわれている姿を見ると、もう、どうでもよくなって、どうにでもなれって思いましたね……。数分前までは暴力を振るわれている優莉の姿を見て泣き喚いていたっていうのに、本当に、あのときの僕はどうかしてました』……。ふぅん、何とも真っ当な意見じゃない」

 悠美香が上から目線で語った。

「もしかしたら、この事件と同じ展開なんてこともあるかも知れないわよ……?」

「悠美香、冗談でもそういうこと言うの、やめて!」

 私の迫力に、悠美香は「れっちごめん……、やりすぎた」と謝った。


 

 でも、その冗談が本当になるときが、やってきてしまった。

 私は、誘拐犯の命令で、本当に12月25日にお金を港の倉庫まで持って来るということになってしまったのだ。

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