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さようなら  作者: けふまろ
本編
5/20

5 事件の資料

 私達は森口さんの家に出向いた。

 森口さんの家は古きよき日本家屋らしいから、すぐ分かる。

「もしかして森口、自分の部屋もあるのかな? それで見せ付けてきたら超自慢じゃん。最悪よ、そんなだったら」

 悠美香が私に向かってそんなことを言ってきた。

 はい、森口さんの事が好きだと一発でバレるお言葉、ありがとう。

 私達はそんな他愛のない話をしながら、森口さんの家に向かって歩いた。

 これからすることは全然他愛のない話ではないけど。

 誘拐事件の資料を見るのに他愛もないもクソもない。

「大丈夫? 森口の家もうすぐだから。多分ジュースとかお菓子出ると思うから」

「悠美香、私は決してそれ目当てで来たんじゃないからね?」

「わ、分かってるわよ」


 着いたのは午後四時五十分。辺りは暗く、公園で遊ぶ長袖の小学生も、「帰るねー」と解散していた。

 彼らは翔の誘拐事件等気にも求めてないだろう。私の知らない小学生ばっかりだ。

「あ、ここだね」

 悠美香が地図から顔を上げた。

「って、デカ!」

 それは古きよき日本家屋。

 門がでかく、和風建築で、日本はこれだよ、と叫びたくなるほど落ち着きのある家が、そこにあった。

「これぞ、日本よね……」

 悠美香がそっと呟いた。


 室内に入ると、森口さんが迎えてくれた。

「あぁ、良いわね、こんな家」

「ね、そうでしょ? 転校してきたときの家、お母さんがここがいいって決めたんだ」

 森口さんは、戸棚から出したチョコチップクッキーを三十個取り出した。お金持ちだなぁ。普通客相手にそんな出さないよ。

「入って。僕の部屋」

 森口さんはクッキーの袋を乗っけたお盆を片手に扉を開ける。

「って、ここだけ西洋風なんですけど!」

 そう、ここだけ木造の和風建築には似合わない、現代風の勉強机等があった。

 本棚には偉人の伝記、その隣にはライトノベル。ここも組み合わせが全く持って似合わない。児童書が上の段にあるけど、現代風の棚に、現代風の勉強机。更に青色の三角模様のベッド。この部屋全体が古きよき日本家屋に合わない現代風の部屋だ。建築デザイナーが見たら、怒りそう。

 私がアンバランスさに驚いていると、悠美香は早速私の手からむしり取った事件のファイルを森口さんに見せた。

「この中に、翔の誘拐事件と似たような手口があるか調べるわよ!」

 森口さんと私はしぶしぶ頷いた。


「まず、一番最初の誘拐事件が、これ」

 森口さんが一枚の書類を指差した。

「『2010年、2月14日、午後2時15分に、小学生の大竹直樹(おおたけなおき)(10)が誘拐された。犯人は変声機を使い、「2月20日に千万円を用意しろ、さもないと殺す」という犯行声明を出しており、現金を取引するところに、警官が犯人を取り押さえ、無事救出』……。これは無事救出パターンか。次。

『2011年3月12日、午前3時12分。東日本大震災で家族を失った人達に相次ぐように、一人の男の子が消えた。中学生の樋口蓮(ひぐちれん)(12)が誘拐されたのだ。樋口家の人は、これに興味がないと言った様子で、ひたすらパチンコ、酒等に溺れていた。いつになってもお金を払わず、樋口蓮君は死亡した。』……」

「……もしも樋口君みたいに、翔が死んだら……」

「ちょっと麗香! 冗談でもそんなこと言っちゃ駄目だよ!」

 悠美香が私を慰める。


 もしも、本当に、翔が死んだら……。

 私は、どうなっちゃうんだろう。


「次ね。『2011年10月30日、午前8時ちょうど、登校中の小学生女児、田宮胡桃(たみやくるみ)(9)が誘拐された。胡桃ちゃんは自分で誘拐犯から逃げ切り、小学校に戻った。容疑者の田宮武士(たみやまさし)は胡桃の父親である。』」

 そこからどんどん、誘拐資料をあさって行き、そして……。

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