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さようなら  作者: けふまろ
本編
4/20

4 自分が助かる代わりに

 ここは一体どこだろう。


 暗くて、寒くて、冷たくて。


 本当にここはどこなんだろう。

 

 ふと、誰かの声がした。


「あいつ誘拐したら多額の金が入るからね、いやぁ、誘拐してよかったね」

「あいつを心配してくれてる奴らもいるかもしれないな。もうちょっと早めにしといた方がよかったか? クリスマスじゃあいくら何でも遅すぎる。一ヶ月も先だし、早く金手に入れた方が、パチンコ早く行けるじゃん?」

 男達の含み笑いが聞こえる。


 どうやら、僕は誘拐されてしまったみたいだ。


 それに、どうやら金目当てで誘拐されてしまったみたいだ。

 パチンコに行く金がなくなったらまた誘拐する気だ。誰かを。


 そんなこと、絶対にさせたりしない。


 僕は立ち上がって、その男達に歩み……寄ろうとした。

 だが、すぐに転んでしまう。両足がガムテープで縛り付けられている。こんなんじゃ身動きも取れない。

 転んだときの音が予想以上に大きかったため、男達が僕に気付き、こちらに向かってきた。


「お前は俺らの遊ぶ金の為の人質だ。逃げるなんて無駄な抵抗はやめて、大人しくしてろ」

 刈り上げの男が僕の胸倉を掴んで、そんなことを言ってきた。


「リーダー、どうします? こいつ、殺しますか? 捜索願出されていると思いますから、晒されたら俺達一生刑務所暮らしですよ」

「ふん、どうせ金渡す奴にも見られてんだろ? そいつも殺しちゃえばいいじゃん。あぁ、金渡す奴は、両親じゃなくて子供の方がいいだろ? 確か、何て言ったっけな」


 僕の両親じゃなくて子供の方がいい? 何で? 子供なんて金渡すときに見た奴のことなんかよく覚えてるし……。って、だから殺すのか。



「あぁ、木下麗香だっけ? そいつに金持ってこさせろ。そして殺してどっかの海に沈めとけ」



 リーダーなる仏頂面の男がそう言った。

 待て、麗香を殺すだって?


 麗香……。木下麗香を?


 あいつは僕に告白してくれたんだぞ。


 自分の気持ちを正直に言ってくれたんだぞ。それなのに殺すとか……。

 あいつは何も悪いことはしてないのに、何で殺されなきゃいけないんだよ。


 せめて、俺を殺してくれよ、麗香は何にも悪いことはしてないのに!


 心の中で言ったつもりが、口に出してしまったらしい。

 刈り上げのリーダーなる男が、舌打ちをして僕にこう言った。


「うるせぇよ、その代わり、お前を戻してやる。

 麗香ちゃんって子が死ぬ代わりに、君は幸せな生活を送れるよ。

 でも、君が死んでも、麗香ちゃんも死ぬんだよね。

 つまりどっちを選んでも麗香ちゃんは死ぬわけ」


 刈り上げ男の得意そうな笑顔を、殴りたくなった。


「自分の命、大切にしたいでしょ?」


 その笑顔を、たっぷり見せつけながら、刈り上げの男がニヤついた。


 ちくしょう……。


 麗香はどっちにしろ死んでしまう。


 僕は男達が去った後、静かに泣いた。

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