2 私は行く
修正しました。
全校集会中の体育館は、校長しか喋らない。校長の声がマイクを通して、体育館中に響き渡り、皆は無言で聞いているか、ひそひそ話をする。そんな日常が破られる日が来た。
「今日未明、いなくなった白崎翔さんの自宅のポストに、このような文面の手紙が送られていたそうです。ちなみにこれはコピーです。では、読み上げますね」
校長先生が軽く咳払いをして、一つの紙を取り出した。
翔は誘拐した。
返してほしければ、今年の十二月二十五日に港の倉庫まで三億円を持って来い。
その瞬間、体育館中が一斉にざわめいた。
え? 何、白崎、誘拐されたの? 告白してくれたこいつを置いてか?
そんなぁ、嘘でしょ? 翔君が? ふざけんなよ、嘘だろ?
白崎君、大丈夫かなぁ。心配。 何で誘拐されたんだ?
「れっち、大丈夫?」
隣に並んでいる親友が私を心配してくれる。
木下麗香。私の名前だ。クラスの男子に麗香よりももっと男の子っぽい名前の方がお似合いだぞ! と言われたが、気にしていない。
って何自己紹介しているんだ。今は自己紹介などをしている場合じゃない。
翔が誘拐されたのだ。
「そりゃあ、麗香は翔のことが好きだったもんなぁー」
男子がこちらに向かって微笑みながら、と言うより、ニヤニヤしながらそう言った。
「男子って空気読めないよね。もう、今はそんなこと関係ないのよ。ねぇ、私、れっちの為に探したいんだけど。翔君のこと」
私は隣に並んでいる親友、峰口悠美香に感謝した。