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さようなら  作者: けふまろ
本編
17/20

17 騙された…

 公園で偽札が入ったバッグを持って、刑事さんが来るのを待っていると、突然、背後に嫌な気配がした。


 私が振り返ると、そこにいたのは中年男性だった。

「こんにちは。僕は榎本篤志(えのもとあつし)。早速だけど、行かない?」

 私は首を捻る。何かホームレスみたいな顔立ちだけど。

「はぁ? 榎本篤志? 誰?」

「誰とは失礼な。私服警官ですよ」

 そこで思い出した。この人、私服警官なんだ。2時30分に約束した……。

「いや、あと何人か私服警官の人いますよね? 流石に私服警官一人っていうのは少々……」

「いやぁ、あはは。僕だけ早く来すぎちゃったみたいだね。……さ、早く行こう」

 榎本さんは私に手を伸ばす。

 私はその手を振り払い、榎本さんを睨みつけた。

「とにかく、私今、待っているんで。全員を。

 っていうか刑事さんには分かんないと思いますけど、翔は大切な友達なんです。

 よく男女間の友情は有り得ないって言いますけど、私はそうじゃないと思います。少なくとも翔はそう思ってます。私のこと友達だと思っているはずなんです。

 なのにそのノリで言わないでくださいよ」

 一瞬榎本さんは真顔になった。

「あはは、ごめん。君がそんな風に思ってるなんて知らなかった。

 でももう行こう。その大切な友達が待ってるんだよ。その大切な友達が殺されるかもしれないしね」


「!!」


 榎本さんが、私の心をえぐるような言葉を、軽いノリで発した。


「ふざけないでくださいよ! ……私は翔のことを大切に……」

「うるせぇよっ!」

 

 榎本さんが私を殴った。


「もう行こう。他の警察にも連絡しておく。そのうち倉庫に来るから!」


「え、でも……」


 グイッッッッ!


 突然、榎本さんが私の腕を掴んで、駅の方向へと引っ張っていった。

 何かこの刑事さん、怖い……。



  ◆◇


 榎本さんは、「仲間に連絡する」と言ってケータイを持ってトイレに駆け込んでいった。

 

 私は電話し終わった榎本さんと電車に乗り込んだ。


 公園の目の前を電車が通ったときに見た光景は。


 私服警官十数人が、公園を見渡しているのが分かった。


「え?」


 私服警官に連絡したと、榎本さんは言ってなかったか?


「あの、榎本さ……」



「騙されちゃったね、麗香ちゃん?」



 榎本さんはニヤニヤと笑ってそう言った。


 


 その瞬間、私はやっと分かったんだ。



 あぁ、私、騙されちゃったんだって……。

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