14 悠美香の怒り
冬休みが近付いてきた。今日は12月25日。
学校に来る人は、私をじっと見つめてきて、次々に質問をされた。
「ねぇれっち、本当に大丈夫?」
朝の校庭。皆に囲まれる中、一緒に登校してきた悠美香は私を心配して声をかけてくれた。
「大丈夫なわけ、ない……」
私は震えて、そんなことを口にした。
「麗香、落ち着いて。大丈夫だから。現金を渡すときは、もう、警察官が待機しているから!」
悠美香は、私の肩に手を置いた。
「でも、不安だよ……。私、殺されるかもしれないんだよ? 翔のことは手加減しているだけかもしれない奴らだったとしたら? 人の命を何とも思わないで平気で人を殺せる奴らだったら? もしも3年前の模倣犯だったら? 私、殺されちゃうよ……。翔も、私も……」
「れっちっ!」
悠美香は私の頬を引っ叩いた。
「っ!!」
何で?
「いいの? そんなこと言って。
何にも希望持たなくて、良いの!?
もしかしたら、模倣犯じゃなくって、森口の推理が外れていたらって、そう思わないのっ!?
もしかしたら翔も、自分も殺されちゃうかもしれないって、そんな弱気になって、良いのっ!?
私も、親友だからって、色々と黙っていたけど、もうこれだけは言わせてもらうよっ!
あんたは、翔を、本当に助けたいのっ!?」
「!!!」
「最初はさ、自信持って、図書館に行ったでしょっ!? そして森口に会ったわけでしょっ!?
今まで翔の家族とも協力して、捜査したんでしょ!? そのときのことを、思い出してよ!
私は麗香を心配していたよ! 私は、麗香を信頼していた! なのに、なのに!」
いつの間にか、悠美香は涙をめいっぱい溜めながら、言った。
「私は、片想いするれっちの味方にもなってあげた! 私も、自分のことは自分でちゃんとやって、それでも、私は、麗香を応援していたいの! 私は、れっちと一緒に翔君を助けたいの!」
私は胸を打たれたような気持ちだった。
「なのに、れっちは、自分の心配ばっか! 見かけだけで、本当は翔君を助けて、英雄ぶりたいだけじゃないの!?
翔君を助けたいんじゃないの!? だったら、模倣犯模倣犯って言ってる暇ないじゃん! 模倣犯模倣犯言ってる暇があるなら、捜査しようよ! 私は翔君を見つけ出して、またいつもの生活に戻ってほしい、そう考えてるだけだよ!」
「ゆ、悠美香ぁぁ……」
私も涙ながらに悠美香に歩み寄る。
「もしも、もしもね、もしも模倣犯で、麗香が殺されちゃったら、私はもう生きていけない。今すぐ麗香の所に行きたいよ! 責任も取る。
でもさ、模倣犯か分からないのに、そんなことを言われる、こっちの身にもなってよ!」
私と悠美香は泣いていた。
朝の校庭。
12月25日。
私達は泣いた。
今日は、翔を帰してもらう日だった。