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かけだし勇者の放浪日記  作者: hearo
異世界と旅立ちと運命の出会い
7/64

旅立ちの日 5

タイトルに反して2日目(ぉ

翌日。


「おお、来たか。出発の準備はすんだのか?」


朝食を取ってすぐ、ジェイさんの居る教官室を尋ねた。


「ええ。昼前には出ようと思っています」


街に出て冒険者ギルドに登録を済ませ、仕事を探す。後は旅に必要な買い物をして、街で宿を取って情報収集。

仕事が受けられた場合は変わる可能性もあるけど、まずは南下して初代魔王の墓標であるエアーストを目指す。その後は蟲や魔獣の発生が多い大森林周辺の都市まで移動して、しばらくはそこに滞在。

これが昨日メーナを加えた3人で頭を捻って出たルートだった。


「そうか、いよいよだな。お前の成長を見ると感慨深い物があるが、引き止めちゃあ悪いな。ちょっと待ってろ、今持ってくる」


「すいません」


この人には随分お世話になった。……むちゃくちゃしごかれた。

魔王が特別扱いで負傷からの即治癒、筋肉痛からの即治癒と回復しまくらなかったら、もっとお世話に成っていただろう。呪いがなけりゃそれでも良かったのに……。


「ほれ、餞別だ。こいつらを持ってきな」


そう言って奥から引っ張り出してきたのは、赤黒く光るチェストプレートとアーム&レッグガード。


「お前さんが最初に倒した蟻から切り出したもんだ」


「おお!ありがとう御座います!でも良いんですか?討伐した蟲の材料はここの収入源でしょう?」


「かまわねぇよ。魔王様も売上を懐に入れるのはダメだが必要なら使う分にはいいって言ってるしな」


なんとまあ。あの魔王がね。


「それと、昨日のやつから取れたギ酸の瓶が3本。こいつはおまけだな」


200mlほどの小瓶が3つ。これもありがたい。そのままでは少々使いにくいが、威嚇や目暗ましになるし売って路銀にも出来る。


「最後にこいつだ。身につけると良い」


そう言って投げてよこしたのは、2つの槍が交差する紋章の刻まれたブロンズのブローチ。


「知ってると思うがエターニア警邏隊の合格証だ。ブロンズは合格者に、シルバーは隊員に配られる。持ってっと地方で就職する時に有利だからって、結構取りに来る奴が多いから貴重なもんじゃないが、バカに舐められる可能性は減るだろうさ」


「ありがとうございます」


良かった。もらえるとは聞いていたけど、受け取っては居なかったっていうね。

これが有るのと無いのじゃ大違いだ。

この世界じゃ実年齢より若く見られがちだし、変なのに絡まれるのは御免被りたいから常時つけさせてもらおう。


「何から何まで、お世話になりました」


「構わねぇよ。仕事だってのもあるが、お前のソレ、育てる方にとっても便利だし面白かったしな」


ステータスカードか。足りない所がひと目でわかるからって、だいぶ重宝されてたよなぁ。


「気をつけろよ。蟲も魔獣も厄介だが、街の外じゃ何より人がおっかねぇ」


「わかってますよ」


城塞都市が転々としているこの世界じゃ、壁の向こう側は無法地帯だ。集落が襲われることは少ないが、旅人が山賊や追いはぎに狙われることもそれなりにあるらしい。

そのためこの3ヶ月間は対人スキルを叩き込まれた。対蟲人スキルはそのおまけだ。


「わざわざ呼びつけて悪かったな。あまり引き止めても悪い。もういっていいぞ。がんばれよ」


「いいえ。……お世話になりました」


もらったものをまとめて抱え、頭を下げて部屋を出る。……がんばろう。




部屋に戻って荷物の最終確認を行い、普段着ているレザーアーマーの上から貰った防具を身につける。

蟻の外骨格は、強度は鉄には劣るが軽くて扱いやすい。元のレザーアーマーと組み合わせればそれなりの防御力になる。

左手のアームガードはどうするかな。魔王に貰ったバックラーと干渉しそうだけど……アームガードで良いか。バックラーでかいし。戦闘時に装着するとしても、普段は外しておくだろうしアームガードはつけておこう。別に上から装着できないわけじゃない。

剣は左腰、弓は右腰、矢筒を横にして後腰にまわして、それにかぶせるようにバックラーを装着。背中に地球(向こう)からがめてきた銀色の防災リュックを背負って準備完了。


「……重い」


軽装とはいえリュックを入れたら10kgは余裕で越える。これ以上荷物を増やすのは難しいかもしれないな。

リュックの中身は水、保存食、レジャーシートなどのサバイバル用品と日用品が最低限。文明人としては下着以外の着替えもほしいんだけど……さすがに贅沢か。

部屋を出て、出入り口となっている門までいくと、ミーナとメーナの二人が待っていた。


「いよいよですね!」


「ああ、見送りありがとう」


教官もそうだったが、城のみんなは絶賛仕事中だ。二人が見送りに来てくれただけでもありがたい。


「早々に出戻られても困るから。がんばって」


双子ということで外見はそっくりだが、微妙にメーナのほうが口が悪い。


「レポート楽しみにしていますからねっ」


「気が向いたらな」


「ちゃんと書かないとダメ」


何を書けば良いかわからんし、魔王が見るのも気になるからなぁ。二人だけなら……いやいや。どうせ魔王は俺がどこに居るとか何してるとか定期的にモニターしてるはずなんで、あまり重要性を感じない。


「いくよ。遅くなってもまずい」


そろそろ出発の予定時刻だ。名残惜しくないとは言えないが、ずるずると駄弁っているわけにもいかない。最初が肝心なのだ。

二人に見送られ、門番の兵士さんに軽く頭を下げてから門を抜ける。


約束の地(プロミスド・ランド)に来て約3ヶ月。ようやく自由の身(仮)になれたのだった。


『旅立ちの日 3』でアキトが言っている「貰ったバッチ分くらいは~」と言うのは警邏隊の記章のことです。わかりづらく成ってしまった(汗


明日も23時の更新を予定しています。


■人類

『始まりの女神』と呼ばれる存在によって生み出された24の種族。

24種族が一団となって生きていくため、各種族には『役割』が与えられている。

代表的な所で言えば、人間族の『農耕』、牙狼族の『戦士』、鬼族の『人類に対する脅威』、などである。


■始まりの女神

人類を作った創造主とされる存在。

各地に残る伝承や遺跡から、確かに存在したモノとされているが、どのような存在であったかは分かっていない。

多くの人類に信奉されており、『役割』をはじめとした女神の教えを遵守する者たちは女神教徒と呼ばれる事が多い。

ちなみに、『始まりの女神』と呼ばれるが実際は複数人で男も居たという伝承が残っている。


魔王(ソーマ)に言わせると『人類によくわからない設定を詰め込みまくった困った奴ら』とのこと。

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