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かけだし勇者の放浪日記  作者: hearo
女神の教えと隠里
53/64

東の森の狼たち 1

ようやく更新できました。

軽量化(ライトウェイト)は役に立たなかった。


荷馬車に対して魔力5点分くらいでかけてみたが、試しに引いてみたサクラさん曰く、変化があるようには感じられないとのこと。


きっと魔力が足らなくて効果時間が短いか、効果が薄すぎるのだろう。


最も早く移動する方法は、たぶん荷馬車にロバを乗せてサクラさんが引く事だっただろう。荷物の乗った荷馬車を軽々引いていたし。もちろん、口には出さなかった。馬車馬扱いはいくらなんでも失礼だ。

ロバには休憩ごとにたっぷりの水と草を与えた後、生命力活性化バイタル・アクティベートを使って強制回復してもらった。


おかげでずいぶん快調そうだ。


ポンさんが、覚えれば畜産に役立ちそうだと言っていたが……まぁ、覚えるのは無理だろうな。できても普及はしないだろう。どちらかと言うと高難易度の魔法だし。

途中、大口蛙(カエル)大鼠(ネズミ)に出くわしたが、隠れ身(ハイド)を使っていたこともあって不意打ちであっさり仕留め、今は荷馬車に乗せられている。


そして日が地平線の向こうに消えるころ、何とかエルルにたどり着くことができた。



□□□



エルルは風の丘の東の端に位置する、人口700人ほどの町である。

おもな産業は林業と狩猟。風の丘と狼たちの森の間に位置するこの町は、狩場へのアクセスが格段に良い代わり、周辺に緩衝地帯がなく常に魔獣の脅威にさらされている。そのため背の高い丸太の壁と堀が外周を囲っており、少々物々しい雰囲気がある。常時門番が居るのもこういう町の特徴か。


「積み荷は……日用品、薬、衣類……貴金属類は?」


「ここに。真鍮都銀のアクセサリーが少々です。アトハ魔術に用いるものがいくつか」


魔王が人やモノの移動を推奨していることもあって、この世界では通行税と言うものは存在しない。

その代わりに行商をする場合には、売買の金額や利益に応じて税金がかかる。行商の場合は手続きが少し複雑で、出発元のギルドで物品リストを作成し、各村で売った物、買ったものをリストに記述、そのたびに領収書を発行する。村は商人が発行する領収書をまとめて税務官に提出。商人も物品リストを提出し納税を行う。そして税務官はこれらを比較して監査する。

非常に手間と労力がかかるが、どんぶり勘定で徴税するより不正は起きにくい。また、その仕事をするための雇用も生まれるし、資産の少ない商人でも商売ができるというメリットもある。


「ここでの行商の予定は?」


「ありません。カエルとネズミは買取をお願いします」


「……冒険者なら雑貨屋だな。宿と併設だからそっちに行くといい」


メアリーさんの荷馬車の検分が終わる。結構な品数のはずだが、魔術を使ったチェックのためかかった時間は五分に満たない。


「そっちは」


「護衛のパーティー、世界の架け橋(ワールド・ブリッジ)です。三名プラス従者1名と、うさぎ二羽」


「うさぎ二羽」


渋い顔をされた。


「認め証出てますよ。どうぞ」


風の丘で子兎を狩るのは主との盟約に触れるので問題になるからな。ギルドで二羽はパーティーメンバー(ペット)ですと言う認め証を発行してもらってある。


「……これは私ではどうにもならんな。入るのはかまわんが、向こうへ抜けるのは認められんと思うぞ」


「どういうことです?」


「詳しい話は町長に聞くといい。明日の朝一で会えるように連絡しておこう。認め証は預かるぞ。宿は一軒だけだ、こっちを宿に、こっちは町長との面会の時に渡せ。案内は宿で聞ける」


「はぁ?」


次が待っているからと中へ通されるが、なんとなく腑に落ちない。


「何なのかしらね?」


「ラーンさん、知ってますか?」


「大体予想は着く。まぁ、こればかりは明日、町長に話すしかないだろう。今は宿へ向かおう。この子を預ける必要があるし、獲物の清算もしないとね。それに、食事の前に風呂に入りたいよ」


たしかに町に入ってもやることは多い。


宿に行き、併設された解体場に獲物を下ろす。

俺は伝票の受け取り、ポンさんはロバを預けに、サクラさんは荷馬車を引いて残りの二人とレンタル倉庫に向かった。日が落ちてしまっているので、旅の片づけは分業だ。


幸い、照明(ライト)をサービスしたら査定はすぐにやってくれた。代金の一部は宿代に差し引いてもらう。カエルはデカいのでそれなりの金額になる。ここはそれほど小さな村ではないが、現金は割と貴重なのでそうした方が喜ばれるのだ。


宿は聞いていた通り一軒しかなかったが、かなりの大きさだった。エターニアやシルケポーで泊まっていたところ以上だろう。

ここはシルケポーに向かう人、来る人がほぼ必ず泊まる町なので、おのずと規模が大きくなったらしい。男女別に二部屋を取ったが、清掃が行き届いていてベッドの寝心地も悪くなさそうだ。


風呂屋も、一日に三百人以上が使うこともあってか、男女別で結構な広さがあった。人口の割にこういった設備が行き届いているのは、広い畑が作れない立地の分、冒険者や行商人に対するサービスに力を入れているからだろう。


「結構にぎわってますね」


一通りの片づけを終えて、併設された食堂でテーブルを囲む。

食堂のテーブルはほぼ満席だ。冒険者らしきグループに行商人、村人らしきグループもちらほら見える。


「酒場はここしかないからね」


「久々だけど変わらないわねぇ〜」


ラーンさんとメアリーさんは以前滞在したことがあるらしい。

夕食のメニューはうさぎ肉の煮込みと、カエル肉の野菜炒め。カエルは俺たちが狩ったやつかね。料理の雰囲気はエターニアやシルケポーと変わらない。


「サクラさんの地元とか郷土料理見たいのってあります?」


「郷土料理ねぇ……パンの代わりに、芋をつぶして焼いたり揚げたりしたのをよく食べるくらいかしら。揚げるのはここ最近のはやりらしいけど」


芋を……芋餅みたいな感じかな?


「この近辺はどこでもこんな感じですよね。シルケポーはうさぎが特産っぽいですけど、エターニアの羊や鶏料理も調理方法はほとんど同じでしたし」


最近出回り始めた香辛料で味をつけて煮込んだり焼いたり。サクラさんの言う通り揚げ物はここ最近のはやりではあるが、まだ一般的ではない。


「食に興味があるのかい?この辺は、魔王様が打った生産性の高い作物を優先して育てる政策の影響を受けているからね」


「以前よりだいぶ飽食になった代わりに、食べなくなったものも結構あるわねぇ〜」


「そうだね。私が覚えている中だと、豆類が減ったね。生産していないわけではないけど、寒村地域への配給や、飼料に回されることが多くなった。まぁ、パンはおいしいからね。麦の生産が安定したならそうなるのも分かる」


確かにこの世界のパンはうまい。特に小麦を使った白パンは、保存が効かないからか焼き立てで出てくることも多い。


「俺の故郷だと祝い事の時に食べる料理とかあったんですけど、この辺だと以前はうさぎですか?」


「いや、うさぎはメイン食材にするようになって30年も経っていないんじゃないかな。春兎(スプリング・ラビット)の発生は、歴史を振り返るとごく最近だよ。エルルは分からないけど、シルケポーでの祝い料理は魚だね。ナマズの類で、おいしいのが居るのさ。普段食べないのは、臭みがを取るのに井戸水でひと月ほど寝かす必要があって手がかかるからだね」


「へぇ……ちょっと食べてみたいですね」


「魚は大丈夫な口かい?そのまま包み焼きにするから、結構ダメな人も多いと聞くけど」


「故郷は結構魚を食べるので、その辺は大体平気ですね」


ずっと同じ宿に泊まっていたせいで、食事も似たような感じの物ばかりだったからなぁ。ラーンさんに初めて会った時に入った酒場は結構おいしかったっけ。


「……アキトって、エターニア出身じゃなかったっけ?」


「冒険者になる前はエターニアに居ましたけど、故郷は違いますよ?あれ?全く話してなかったでしたっけ?」


「……聞いてない」


……そうか、話していなかったか。

常識に齟齬が出るから絶対ツッコまれると思って、いろいろ言い訳を考えていたが……確かにあんまり話した記憶はないな。


「ふむ、聞いてわかるか分からないけど、どこの出身なんだい?」


「それは秘密です」


「……何よそれ」


「いや、一応公式な出身はエターニアって事になってるんで。まぁ、魔王にスカウトされてエターニアに来た感じなんですけどね」


「む、それはこの辺の出身ではないということかい?研究対象とはではないが、少し興味があるね」


「ええ?でもアキトは良いとこの育ちっぽいわよ?食事の仕方とかすごい洗練されてる感があるし」


「……ふぁい?なんでしょ〜」


無言で骨付き肉に被りついていたポンさんが顔を上げる。子供かっ!


「イラーナも大きな街だったけど、エターニアほど洗練された雰囲気は無かったわ。この辺よりいいとこ育ちってどこよ」


「……そんなお坊ちゃんに見えますかね?」


「アキトくんは物腰柔らかいし、受け答えも丁寧だし、確かにそうね〜」


「割とお人よしだしね。無論、それが悪いとは言わないよ」


「そうですね〜。丘で倒れていた見ず知らずの私を拾ってくれるくらいには〜、心の広い御方だと思いますよ〜」


そりゃサクラさんがとどめを刺した可能性があったからだ。


「そう思うなら、そりゃ俺の両親や魔王の教育。それにサクラさんのおかげですよ」


冒険者になって、曲がりなりにもやっていけてるのは、あの地獄の3か月があったからだ。

そしてサクラさんとパーティーを組んで、戦闘に余裕が出ているのが大きい。そうでなければもっとがつがつしていた可能性が高い。


「あたし?」


「俺一人じゃ、ネズミや、せいぜいカエルをちまちま狩るくらいですよ。それだと生活に余裕が出ませんし、余裕が無けりゃ心も荒む。それに鬼人の一件も、うさぎの主とやり合ったのも、俺一人じゃどうにもなりませんでした」


「それはあたしが居なかったら、そもそも遭遇してないと思うわ」


「そうとも言い切れませんよ。まあ、ここでこうして居る事は無かったでしょうね」


「廻り合わせと言うのは奇異な物だからね。それで出身は?」


「それは秘密です」


サクラさんとラーンさんがブーブー文句を言うが、ここは譲るつもりは無いからね。


「ポンさんはこの辺の出身でしたっけ?」


「はい〜。川を越えて少し南に行ったあたりですね〜。うちの特産品は山羊チーズと豚ベーコンですね〜。馬鈴薯とチーズと豚ベーコンの組み合わせは最強ですよ〜」


「ああ、それはわかります」


「ベーコンはつまみにもいいわね」


「そうね〜。でも、シルケポーじゃあんまり流通して居ないわよねぇ。特にチーズは〜」


「お金にはなるんですが〜、みんな村で消費してしまいますので〜」


ポックルの村じゃありがちだな。何かにつけて宴会をするだろうし。……役割に縛られず、チーズの量産とかしたら儲かるんじゃなかろうか。


「メアリーさんはどこの出身ですか?」


「私は〜……うん、私も秘密♪」


む……ぐっと来た!ワインでほんのり赤みを帯びた肌と、口元に手をやるしぐさが色っぽい。


「そう言えば、私もメアリーの生まれは知らないな。私はエターニア生まれだが、出会ったのはこっちに出て来てからだ」


「へぇ……あれ?って事は20年くらい前ですか?」


「ああ、そうだね。魔王様が盟約を交わした後、数十年で環境が激変したこの辺の生態系に興味を持ってね。テーマに決めたのさ。メアリーとはそのころに知り合って、だいぶ世話に……」


「……あれ?そうするとメアリーさんっていったい幾t」


「アキトくん」


「……は、はい」


「人には知らなくていいこともあるのよ」


「……あ、はい」


どうやらこの話題はNGだったらしい。背後から立ち上るオーラが半端ない。

……そうかー、メアリーさん、長寿の種族だったかー。見た目は人間族っぽいんだけどなぁ。エルフのハーフとかなのかなぁ。


「まぁ、それは良いとして……そう言えば、明日の話をしていなかったね」


「一応、朝一で町長宅に行くことになっています。すいませんが出発は少し遅くなるかもしれません」


「大丈夫よ〜、それも考えた上でお願いしているから」


ラーンさんによると、兎の縄張りを出るさいに止められるのは予想の範疇だったらしい。偶にうさぎの肉や毛皮を輸送する商人がオオカミに襲われることがあるとか。

だったらアリスとピーターは置いてくればよかったのでは?と聞いたら、『それでは私が観察できないじゃないか』とのこと。揺らぎねぇなぁ。


「以前からエルルに狼たちが居ることに疑問はあったがね。魔獣が人の言葉がわかるだけでなく、一部は会話もできるとなると話は全く変わってくる。この街にも話をつけられる個体が居ると、そう考えるのが妥当だろう」


アリスとピーターを連れて狼の縄張りを抜けるにはここで話をつけてしまうのが一番だ。


「今日は見てませんが」


「森側の門のそばにいることが多いね。ただ……どうも専用の出入り口があるようだよ」


なるほど。魔獣と直接的な交流があるとするなら、あまり大っぴらにしていないだろう。

この世界の村は地球に比べれば人口は少ないけれど、防衛のために住居は過密になっている。この町も200軒以上の家があるし、全様を把握できてはいない。利用する旅人は多いが、宿のある大通りは1本道の様だし、隠し事(そういうこと)のための裏口でもあるのだろう。


「しかし嫌がられませんかね?」


「大っぴらにしていないだけで、隠しているわけじゃないから大丈夫だと思うよ」


「……何が違うんですか、それ」


「魔獣との共存は難しいんだよ。前時代の戦いで家族や友人を失ったものもいる。シルケポーでも、風の丘を人類に取り戻そうという動きがいまだにあるくらいだ」


「お肉が安定供給されているのは、丘をうさぎに明け渡したからなのにねぇ」


メアリーさんは骨付き肉を食べる姿も優雅だなぁ。


「その辺、ポックル的にはどうですか?」


「風の丘の広さがあっても、山羊や羊で同じようにお肉を生産するのは難しいんですよ〜。普通の動物は病気にもなりますし〜、草だけでよく育つわけではありませんから〜」


「魔獣は強いからね」


「魔獣を飼育しようとはしないんですかね?」


「難しいんですよ〜。知能が高かったり、気性が荒かったり……食用では無理じゃないでしょうか〜」


人語を理解するようだし、それもそうか。

魔王軍でもグリフォンやペガサスと言ったまんまな魔獣――動物かも知れない――を飼育していたけど、食用ではないし、かなり気難しいと聞いている。


「今の魔王様が統治するようになってから、魔獣に対する理解を進めようという動きはあるけどね。住み分けがほぼ出来たエターニア周辺地域以外は、未だに人類、魔獣、蟲人が生育地を巡って争っている状態だからね。うちはお隣さんと上手くやってます、と言っても納得しない者たちもいる。そのへんはアキト君のほうが詳しいんじゃないかな?」


「ええまぁ、そう言う話は魔王城で学びましたよ。本で読むのと見聞きするのじゃ大違いですけどね」


魔王が環境問題にかなり力を入れているのは知っている。なかなか理解してもらうのが大変らしく、毎年結構な人数がしょっ引かれているらしいが……。

下手にバランスが崩れると、ネズミの大量発生とか致命的な状況を引き起こすことになるらしい。

ハグレの蟲人が出たキルナ村周辺のネズミ駆除は結構手間取っているようだし、下手につついて手に負えないことになった場合に出る被害は、地球とは比べ物にならない。


「何にせよ狼の方も含めて話し合いで解決出来ることを望みますよ。うさぎの主みたいに力を示せ、とか言われたら命がいくつあっても足りゃしない」


「あ〜……主とやりあうのはあたしも嫌ね」


ぜひとも話の通じる相手であってほしいね。


そんな話をしながら食事に興じる事数十分。


そろそろ料理も空になるという所で、酒場の中が静かになった。

どうやら吟遊詩人が何かを演奏するらしい。娯楽の少ない世界だからな。吟遊詩人や踊り子はどこの酒場でも大抵働き口がある。


「む!歌いますか〜、歌いますね〜、それじゃあ行ってきます〜」


流れ始める弦楽器の音楽に、止める間もなくポンさんが即効席を立つ。


「……あれ、行かせちゃって良かったんでしょうか?」


「……いや、きっと良くないねぇ。杖、杖は……しまった、部屋だ」


ポックルはトラブルメーカーだ。宴会大好き。自嘲しない。そして歌って踊るのは彼らの文化みたいなものだ。

すぐにポンさんを含め、その場に居たポックル達のソプラノボイスが酒場の中に響き始める。


「……ふひっ」


嫌な声を聞いた。


「あは、あはははは、あははははは!なんかすごくいい気分だわ!アキト!あんたも飲みなさい!」


「サクラさん!レジストレジスト!」


やっぱこれ陽気な歌(呪歌)じゃねぇか!


「あらあら〜」


「いかん、これは楽しいね。どうしよう、語りたい語りたい」


ダメだ、ラーンさんもレジストに失敗した!


「ディサうぷっ!」


口にねじ込まれたワインボトルから注がれるアルコールが、急速に思考を奪い取っていくのが……あはは〜、たのし〜。


「おね〜さん、もう一本追加で〜」


記憶の最後に残っているのは、サクラさんが3本目のワインを追加オーダーする姿で。

翌日は中和(ナチュライジング)が大活躍することになった。



□□□



「え〜……この町では魔王様が魔獣の主と盟約を結ばれて依頼、隣人として共存関係にありまして〜」


翌朝、町長の家に伺うと子兎の話は直接オオカミに確認をしてほしいと頼まれた。意思の疎通が出来るのは、この街の住人には周知の事実らしい。

仕方ないのでサクラさんと二人、狼たちに伺いを立てるため彼らの住処へ向かう。


「魔獣とは共存できないという者も居ります。また知能が高いのこともあり、子供をさらって犬のように従えようと考える者もたまに出ます。そういうこともあり、あまり大っぴらにはしないという取り決めでやらせていただいて居ます」


案内をしてくれるたのは、犬人族の青年。町長の息子だそうだ。町長は人間族だったから、何気にハーフ。


「結構ややこしい作りになって居るのね」


大通りから裏路地に入ると、家一軒一軒が互い違いに建っていて、なかなかまっすぐ住めない。行き止まりや、元の道にしか戻れないルートもあるようだ。


「昔の名残ですよ。ところどころ、井戸の周りなんかは広場にもなってます」


防衛を考えた場合のきわめて典型的な路地のつくり方だな。

この世界のほとんどの敵性生物は好き好んで壁だの柱だのに攻撃を仕掛けたりしない。こうやって区切ってやると、スピードを生かして戦う相手……狼なんかに侵入された時に、立ち回りやすい。


「狼たちの出入り口……森の門と呼んでいますが、ちょうど街の北側にあります。狼たちのために作った小屋も、そこに」


「いつも同じ狼が居るんですか?」


「さぁ……同じ気もしますが、わかりません。多い時だと10匹ほどが居ますからね。もう日ものぼっているので、ほとんどは町の中か森に出ていると思いますが、いつも門には必ず一組のつがいが居ますから。……小屋はあれです」


丸太で作られた壁のそば、小さく開いた門の脇に、小屋というには上等な木造の建物が見えた。


「……大きいですね」


「人が入って掃除もしますし、そもそも狼が人と同じくらいの高さがあって、人より長くて重いですから」


ん〜……一角狼(ホーン・ウルフ)は雷撃を武器にする魔獣じゃなかったっけ?そんだけ体格良いなら小細工いらんだろう。出来れば戦いたくない相手だな。


「お邪魔します。お話が合ってまいりました」


案内をしてくれた町長の息子さんが、人用の扉をノックする。

返事があったのかは分からない。建付けの悪い引き戸を開けるて中へ踏み込むと、隙間の空いた壁から差し込むうっすらとした光で部屋の中が照らされていたことに気付く。


部屋の中に漂う獣の臭い。


床一面にひかれた藁の寝床の山。


一瞬、その藁に埋もれて、そこにいるのが気づかなかった。


灰よりも黒に近い毛並み。巨大な体躯。そして額から伸びる乳白色の角。

かつてこの地を支配し、今人と共に共存するオオカミの魔獣が、そこにいた。

出張中はほとんど作業できませんでしたorz

オオカミですが、毛並みの色は違いますが某もののけ姫のモロの子たちに角が生えた感じ、と思ってもらえればいいです。成獣のうさぎより1~2周り大きい感じ。

文章だと中々サイズ感を出すのが難しいですね。


次回更新は2/26……を予定しますが、書き溜めが出来なかったので伸びるかも。頑張ります。


■陽気な歌

強制的に気分を明るくハッピーにする呪いの歌。

ポックル達は息をするようにこの歌を歌いだす。

この歌を聞いて抵抗レジストに失敗すると……あはは~~た~のし~~。

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