鬼と鬼人 2
更に小一時間後。
キルナ村までたどり着くと、十数人の男たちが鋤やフォークなどの農具を携えた男たちが村の入口に集まっているところだった。
「おお、サクラさん、アキトさん、無事だったぁか!」
「はぁ……はぁ……な、なんとか」
「ふぅ……ハンスさん。あなたもね。この人達は?」
「おめさん達を助けに行こうと、村のモン集めてた〜だよ」
剣を携えた自警団らしき人が6人、狩人らしき人が3名、それに農具を持った男たちが10名あまり。
自警団にドワーフが一人、狩人に犬人族が一人、農民の集まりにオークとホブゴブリンらしき人が同じく一人づつ居る以外、全員人間族のようだ。
「ありがとう。でも村から出ないほうが良いわ。私達もなんとかまいて来ただけだから。見張りを増やして、門は閉じておいて。村長は?」
「今、村に来ていた冒険者さんと話してるだ」
「通してもらえる?」
「構わねぇ。すまねぇ皆、聞いたとおりだ。見はり櫓を二人にして、門は閉じて待っててくんれ」
ハンスさんを伴って村長宅へ向かう。
しかしタフだね。こっちはもう息が上がりっぱなしなのに、サクラさんはもう落ち着いてる。
村長宅に着くとすぐさま居間に通される。居間には村長の他に冒険者らしき餓狼族の男が居て、地図を広げて話をしているところだった。
「おお、ご無事でしたか!」
「なんとか戻りました。そちらは……聞くまでもないですね」
時間的に言って、昼の馬車で村に寄った冒険者の一人だろう。
オオカミの頭を持つ戦士の種族、牙狼族。濃い青の体毛、身長は2メートルを下らない。身に着けているのは鋼鉄製と思しき年期の入ったプレートメイル。獲物は立てかけてあるバトルアックスか。
年齢は解らないが、装備から言ってそれなりの戦士なのだろう。
「はじめまして。私は見ての通り、鬼族のサクラ。こっちは人間族のアキトさん。ランク2の冒険者よ」
「おう。俺は牙狼族、蒼き鬣のラルフ。ランク4の冒険者だ。嬢ちゃん、兄ちゃん、よろしくな」
牙狼族の表情はあまり読めないが、どうやら割りと気さくな人らしい。
「悠長に話してる時間はありそうか?」
「たぶん」
「なら、座りな。話が聞きたい」
サクラさんと二人でならんでソファに腰を下ろす。っと、そうだ。
「すいません、食事をお願いしていいですか?出来れば山と。朝以降何も食べてなくて」
「ああ、それなら私もお願いします」
走りっぱなしで腹が減ったのもあるが、魔力がない。どうも俺は食事をしないと魔力がほとんど回復しないらしいのだ。
水でも多少は回復するのだが、とにかく飯を喰う。これに限る。
「はぁ……構いませんが……ちょっと待っていてください」
村長さんが食事の準備を頼んでくれた。
「兄ちゃん、この忙しい時に飯とはなかなか図太いな」
「すいません。腹が減ったのもそうなんですが、魔力切れを何とかしないと」
「魔力切れ?そりゃ大丈夫なのか?」
「ええ、ちょっと変わった体質なもので」
この世界の人類は皆魔力を保持している。
魔王が言うには人類は多かれ少なかれ肉体の機能を維持するのに魔力を使っているらしく、ステータスカードの魔力を0まで使い切るようなことは出来ない。
70〜80ほどで不調になり、50を切ると意識を失う事もあるそうだ。魔力切れと呼ばれる状態は、すごく不調である事が普通らしい。
「話を戻しましょう。すいませんが、ラルフさんはお一人ですか?」
「ああ、すまねぇな。俺ぁ役割があるから残ったが……仲間は牙狼族でないんでエターニアの方面の連絡に行ってもらった。やばそうだし、金に成らねぇ仕事をさせるわけにもいかん」
「そうですか。わかりました。まずは現状を説明しますね」
サクラさんが蟲人との遭遇、撤退について順に説明していく。話を聞く村長、ラルフさんの表情は険しい。
「なるほど。嬢ちゃんは戦力としては微妙か。時間稼ぎったってきつそうだな……」
「多分、村の人達じゃ手も足も出ないでしょうね」
「兄ちゃんは?」
「魔力が回復すれば支援魔術くらいは出来ますが、接近戦はおそらく死にます」
「素直に断言できるだけましだな」
俺も命は惜しい。敵を目の前にしても身が竦まないような訓練をしてきたが、あれとまともに戦うような能力はない。
「他に冒険者や傭兵は居なかったんですか?」
「街道沿いとはいえ、宿を取るものくらいしか立ち寄りませんので。昼の乗り合い馬車で来た方は他にも降りましたが、鬼人相手だと聞いて早々に立たれてしまわれました」
「シルケボー、エターニアの双方に救援依頼を送ってはありますが……早馬でシルケボーに着くのが明け方、エターニアに着くのは日が登ってからといった所でしょうか。救援は運が良くて2日後か3日後か……その間、乗合馬車も止まりましょう」
まいったな。流石にそんなに待ってはくれない気がする。
俺達がこっちに逃げた事は蟲人も把握してるだろうし、いつ森を抜けてくるかも解らない。
「今日の便から乗合馬車は止まるわね。参ったわね……発狂した鬼人を捕まえておく設備なんて無いわよね?」
「残念ながら」
「……いざと成ったら、俺が殺るが……悪いな嬢ちゃん。流石にあんまり乗り気しねぇ。出来れば上手く捕まえたいところだ」
「私もこんなことで同胞が増えても嬉しくないもの、構わないわ」
そう言ってため息を着く。
「相手が鬼人化した蟲人でも、やっぱり呪いは伝染るんですか?」
鬼族を殺したものは鬼族に成るという鬼人化の呪い。こいつがあるせいで、おいそれと倒すことも出来ない。
「鬼人化の呪いは、鬼族にかけられた呪いの中でも最も強力なものの1つよ。回避する手段は聞いたことが無いわ」
そうすると、やはり殺さずに無力化するしか無いのか。
鎧の上からステータスカードに触れる。魔力がフル回復していたとしても、あいつを抑えるような魔術が使えるだろうか。
「私が言うのもなんだけど、発狂した鬼の捕獲なんてそうそう請け負ってくれる人居ないと思うわ。ヘタしたら1週間位救援は来ないかも」
「流石にそりゃ無いと思うが……出来るのは時間稼ぎの準備をしつつ、ここが見つからないことを女神様に祈るくらいか?」
「……ご利益ないわよ?」
鬼族はだいたい女神教徒では無いらしい。
ラルフさんは役割を果たそうとしていることから、少なくとも始まりの女神を信仰しているのだろう。
「……危険はありますが、討伐に時間がかかるようなら一時他の街に避難することも考えるべきでしょうか?」
「女子供だけでも逃しといたほうがいいかもしれねぇな。鬼人化したのはカミキリムシの蟲人だったよな?」
「ええ。ベニホシよ。多分、私達が討伐したののツガイね」
「なら、鬼に成ってても1日の移動距離はそう多くないはずから、となり村が行動圏に入るにゃ数日かかるだろうが……」
「護衛できる人材が居ないわよ?街道で鉢合わせしたら逃がしたはずの人たちが全滅って可能性もありえるわ。相手が1匹だから下手に動かないほうが得策じゃない?」
「……むぅ。確かに。しかしいつまで待てばよいか分からぬとなると……っと、すいません。人が来たようですな」
キルナさんが部屋を出た。蟲人発見の知らせじゃなきゃ良いが……。
それにしても、時間がネックか。罠を作って捕獲とか出来ないか?……むりかなぁ。サクラさんが散々ぶつけた木に潰されなかったくらいだからなあ。
「お待たせしました。宿にお願いした食事が出来たそうで、いま並べさせますね」
「ありがとうございます。すいません、外の流し場お借りしますね。サクラさんはどうします?」
「私も行くわ。すいません、ちょっとお時間もらいますね」
「いえ。お疲れでしょう。見張りは立てておりますし少し休憩しましょうか」
どうせこちらから打って出る事は出来ないと、ラルフさんも頷く。
小手と鎧を順に外す。ウヘェ、ちょっと肌寒いや。変えのシャツは……しまったな。昨日泊まった森の入口の家に置いて来ちまってる。
「改めて見ると……結構ヒドイわね」
サクラさんはと言うと、自分のレザーアーマーを眺めながら渋い顔をしている。
「……バッサリやられてますね。よくそれで大丈夫でしたね」
インナーまで裂けて、白い肌がチラチラと目に入るのが非常に気になる。
「ちゃんとハルバードで受けたんだけどね。かすっただけでこれよ」
ソフトレザーアーマーだから防御力は低いほうだろうけど、あの痕を見るに俺がまともに受けたら良くて戦闘不能だろう。
外に周りって簡単に手と顔を洗い村長宅の居間に戻ると、村長さんがタオルと服を用意してくれていた。
「ハンスから荷物を置いてきてしまったと聞きましたので」
ハンスさんナイス!
「ありがとうございます。すいません、食事も無理を言ってお願いしたのに」
「いえいえ、これくらいは構いません」
「いいからさっさと食べましょう。特に、あなたが食べなきゃダメなんでしょう」
サクラさんに促されて席につく。
用意してくれたのは、パンに焼いたベーコンと卵を挟んだサンドイッチと野菜のスープ。
この世界の定番メニューの一つだが、結構な量を準備してくれたらしい。ありがたい。
「今日の糧を、全ての命と全ての人類に感謝を」
「いただきます」
スープをすすり、手づかみでパンにかぶりつく。やべぇ、うめぇ。
油の乗ったベーコンはパンとの相性が抜群だ。スープもシンプルな味付けだが、細かく切った野菜は食べやすく食が進む。
「ごめんなさい。お代わりいただけます?」
「はやっ!?」
サクラさんが空になったスープの皿を、使用人さんらしき年配の女性に差し出していた。
「……鬼族は食べなくても生きていけるけど、食べたほうが力がでるのよ」
「いや、そんな説明いらないですけどね」
2つ目のサンドイッチに手を伸ばす。とにかく今は飯を食う。
「すいません。こっちもお代わりお願いします!」
一山あったサンドイッチとスープは、ものの15分ほどで綺麗サッパリ消えてなくなった。
「よく喰ったなぁ、おい」
「……5人前くらいはあったんだけどねぇ」
ラルフさんと給餌をしてくれたおばちゃんが呆れている。やっぱ飯食わずに走りっぱなしだと腹は減るもんだな。
「ふぅ……これで風呂入って布団に潜り込めりゃ最高なんだけど」
「特に何か出来るわけじゃないから、それも有りねぇ」
サクラさんもお腹が膨れてのんびりモードだ。
っと、今のうちにステータスカードを確認しておこう。
名前:アキト・ハザマ
年齢:17
種族:人間族
状態;健康
レベル:1(1)
筋力;117
体力:102
瞬発力:103
知識:213
守備力:91
魔力:3
経験値:181
Next:119
……多少戻って入るが体力がまだ1割以上減っていて、瞬発力も落ちてる。流石に休憩が足らないか。
魔力は0まで使ったのが3に回復しているが……これ、0近くは回復は早いからくせに、此処から先の戻りが遅いからどこまで戻ってくれるか。
経験値も少し増えてるかな。多分ネズミを倒した分だ。やっぱり効率悪い。
これ、レベルアップしたらアレとも戦えるように成るんだろうか?
……考えるまでもないな。
「そうつはなんだい?ギルドカードじゃ無いみたいだが」
ラルフさんが珍しそうにステータスカードを覗き込んだ。
「ある人から借りてる試作品のマジックアイテムですよ。自分の体力とか魔力とかを数値にして可視化出来るんです」
表向きの機能は説明していいことに成ってるから、差し障りの無い話をしておく。
「へぇ……何に使うんだそれ?」
「魔力の管理とか便利ですよ」
実際、ステータスの表示機能の恩恵はそれくらいしか無い。
「ねぇ……ちょっと気になったんだけどさ、アキト」
「なにか?」
「あなた、魔王様と連絡取れないの?」
「……は?」
取れないかって聞かれると……レポートなら送れるけど……。あれ、リアルタイム性無いしなぁ。
「なんだ兄ちゃん。魔王様の関係者なのか?」
「私も何日か前にあったばかりなんだけどね。彼、一応魔王様のマジックアイテム被験者らしいのよ」
「ああ、通りでけったいなもの持ってるわけだな」
ラルフさんが頷く。
「俺は大森林で前に同じような奴に会った事があるけど、妙なマジックアイテムを使ってたな。なんでも街の近くだと街の方角がわかるとか」
それに何の意味があるんだ?
「冒険者ギルドにある長距離通信魔術って、魔王様の発案だったわよね」
「そういや俺もそう聞いたな。導入され始めたのは俺が冒険者になる前だ。初心者講習の時、最新の依頼伝達システムって話を聞いた覚えがある」
「同じような遠距離会話の魔術とか使えないの?」
「確かに紛失防止以外にも、あっちに連絡というかレポート送る機能はありますけど、即効性が無いですよ。送れるタイミングも限られてますし」
確か、冒険者ギルドとか魔王と取引のある商館なら送信可能なんだっけ?なんにせよ、大きな街じゃないとダメらしい。
ここに来る間のレポートも、中継した大きめの集落で送信して、次の大きな集落で回収していたっぽい。
まぁ、そういうところなら通話機能が……あ……。
「……通話機能あるじゃん」
すっかり忘れたっ!つーか1分80ゴルかかるとか言われて記憶の隅に追いやってた!
「あるの!?」
「いや、えっと……使えるか知りませんが、あるって聞いてます」
「おおっ、そりゃすげぇ!魔王様の城つったらエターニアだろ?今から軍が動いてくれりゃ、籠城する時間が短くてすむ」
「いや、でもですね。……使えるかわかりませんし……問題が」
「何?結構差し迫ってるから、出来るなら救援を読んでもらいたいんだけど」
「……金がかかります。1分連絡するだけで80ゴルほど」
「………………」
「………………」
無言で顔を見合わせるのはやめてくれ。
「いや、馬で約2日の距離をなくせるなら安いもんじゃねぇか」
「金欠の俺には死活問題なんですよ」
「……そこはスポンサーをつけましょう」
サクラさんは使用人さんに頼んで、村の男衆に声を掛けに行った村長を呼び戻してもらった。
「依頼……ですか」
「ええ。役割があるラルフさんや鬼族の私はともかく、彼の仕事は蟲人1体の討伐で、それはもう終わってるのは知ってるわよね?」
そういや今回の依頼はあくまでハグレの蟲人1体を討伐だったな。
「いえその……もちろん、依頼を出したいのは山々なのですが……蟲人の調査討伐費を出しておりまして正直な所、あまり払えるお金がありません」
「それにハンスからの話も伺っておりますが……鬼人化した蟲人でしょう? ギルドから回っている依頼作成書からすると、最低依頼価格はたしか一人辺り2000ゴル以上だったはず。それだけで村の1年分の稼ぎが飛んでしまいます」
「最低依頼価格ってなんです?」
「知らねぇのか?冒険者に依頼する時の仕事内容に応じた最低価格だよ。なんかややこしい法律を魔王様が作ってな。これに違反するとしょっぴかれるんだ」
「なら、彼にエターニアとの連絡を依頼するのは?」
「おそらく定形外依頼になると思いますので……ちょっとお待ち下さい」
キルナさんは今を出ると3分ほどでゴツい本を抱えて戻ってきた。
「ええっと……郵送ではなく……やはり項目自体がありません」
「あれはなんです?」
「兄ちゃん初心者なのか。ありゃギルドが配ってる依頼作成マニュアルさ。詳しい中身は知らねぇが、こういうちょっと離れた村からギルドに依頼を出すときに、仕事内容を調べてかかる金額なんかの目安にすんだよ」
なるほど。ギルドへの依頼ってそういうシステムもあるのか。
「街の中に支部がありゃ、窓口で手続をしてくれるんだがな」
よくよく聞いてみると、冒険者ギルドは仕事の斡旋をしているだけではないらしい。
臨機応変に活動が出来る事がメリットの冒険者であるが、外敵の多いこの世界では冒険者保護の観点からギルドが課している制約が多い。
依頼に関しても依頼者が冒険者に対して不当に安い金額や違約金をかけないように、また冒険者が難易度に見合わない依頼料の引き上げをしたり、逆に相場より安く売り込みをかけて値下げ競争にならないよう、かなりの制約を設けて管理している。
違反者には罰則金や依頼受諾拒否、斡旋拒否、場合によっては憲兵に通報することもある。
そうやって依頼者と冒険者双方の利益を守ることが、ギルドの役割なんだそうだ。
ちなみにこれ、初心者講習でやるらしい。俺は記章を使ってすっ飛ばしたから、その辺の話は聞いた覚えが無かったわけだ。
……もしかしたら座学でやってたのかもな。記憶に無いけど。
「ラルフさん、なにかいい案しらないですか?」
「そうだな……緊急時事後依頼ってのがあるが……村に金が無ぇのはどうにも出来ねぇな。何にしても、まともに依頼だしゃ無理だろうな。素直に借金じゃねえか?」
「そんなっ!ギルドの金利を考えたら完済がいつに成るか見当もつきませんよ!」
「んあこと言われたって、その依頼承認するのは俺だぜ? 中途半端なことしてギルドに睨まれたら、連絡を頼んだ二人にまで迷惑かからぁ」
「それに本来なら冒険者になりたての人間族が関わるような話じゃねぇ。無事帰ってこれただけで奇蹟みたいなもんだ」
「適当な依頼を出すんじゃダメなんですか?」
「ギルドの監査は結構厳しいからなぁ。3ランクになると講習があるんで、その時に教えてもらえるさ」
なんだか結構面倒臭い話だな。
そもそも使えるか分かんないんだけど……。
「200ゴルくらい融通してもらえれば良いんで、なんとかなりませんかね?」
「……そうですね。苦しくは有りますがそれくらいなら」
「契約はどうするのよ?」
「必要ですかね?」
「兄ちゃん、そういうイレギュラーなのはやめとけ。今回は良くても、後々困ることに成るぜ」
そうは言っても、ここに残ればヘタしたら1週間以上缶詰だ。
今回の件でわかったが、剣もサークレットもかなり優秀なアイテムだ。出来れば手放したくない。ってことは、来月15日までに830ゴル貯めなきゃいけない。
ここであまり時間をムダにするわけには行かないんだ。
かと言って、村を見捨てるのも気が引ける。
サクラさんははじめから残るつもりっぽいし……一人で隣村まで街道を歩くことは出来るだろうけど、途中であいつと遭遇しないとも限らない。
それに勇者なんて職業貰っちゃってるからなぁ。
細かい仕事の積み重ねが明日の評判に繋がるわけでさ。勇者は腰抜けだと後ろ指さされることになるのは避けたい。
「……そういえば」
ふと、あることを思い出してギルドカードを確認する。
「すいません、依頼を放棄した場合ってどうなります?」
「放棄?……契約によるが、違約金が発生する事が多いな」
「依頼って前金制も有りますよね?その場合は?」
「違約金額に前金分がプラスされるだけだと思うが……」
「ギルドカードの失敗件数が増えることに問題は有ります?」
「ん〜……内容にもよるな。あまり気にしても仕方ないことだが。俺も討伐依頼なんかで、現場に行ったら既に終った後だったとかあって失敗貰ってるしな」
「私もあるわね。ターゲットが他の獣に狩られちゃって、近くに別の個体も居なくてお手上げだったわ」
「……例えば輸送とかは?」
「輸送か……。輸送は配達ギルドが請け負わない依頼だから、難易度が高い事が多いな。特に期限が厳しい物が多い。俺もそういうのは受けないようにしてきたが……何を考えてるんだ?」
「いえね、ちょっと……」
………………
…………
……
投稿前の編集と執筆の両立はけっこう大変ですね。
あとがき解説はしばらく掲載が無いと思います。
気になった点などありましたら、感想お待ちしております(ぉ
明日は23時更新予定です。