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かけだし勇者の放浪日記  作者: hearo
異世界と旅立ちと運命の出会い
10/64

鬼と蟲人 3

本日で掲載開始一週間となりました。

なんとか更新を続けられております。今後ともよろしくお願いします。

宿に戻ると夕方近くになっていた。徒歩での移動はやっぱり時間がかかるな。

今日中にかたしておくべき事はもう無いはず。後は風呂と夕飯を済ませれば寝る位しかすることがない。かといって、どちらもまだ少し早い。


「すいません、ここらで剣を振れるところはありますかね?」


宿の店員さんらしき人にたずねると、中庭を使って良いといわれた。ありがたい。


鎧をすべて身につけ、中庭に出てヴァックストゥームを振るう。出発前にも少し素振りをしたが、訓練量としては足りていないのでやっておいて損は無い。

それにチェストプレートやガードをつけての動きは確認していない。問題は無いと思うが、何事も試しておくのは重要。でないと死ぬというのは訓練でいやというほど味合わされた。


100回ほど素振りをして、次は各形のつなげを練習する。昨日、蟻と戦う前にもやったやつだ。

一通り振り終えたのはあたりが暗くなる少し前。


「……こんなもんか」


剣を収める。暑い。まだ涼しい時期らしいけど、これ夏になったら訓練なんてやってられないんじゃないか?

ステータスカードの魔法に冷暖房機能があったはずだが、魔力が勿体なくて使えない。


ふと、宿の出口を見たとき窓際にフードつきの外套を着た人物がこちらを見ているのに気づいた。

見られていたのかな?

目が合った気がしたが、すぐに居なくなる。怪しいが……まあ、いいか。

泥棒とか気をつけないといけない。ぱっと見分からない剣はともかく、サークレットはそれなりに高そうな見た目だし、狙われる可能性はある。


部屋に戻って鎧をはずし、着替えを持って銭湯に。

一応部屋の周りを気にしてみたけど、俺に気づかれるようなへぼい泥棒じゃそもそも仕事にならんだろう。

公衆浴場で何事も無く風呂をいただき、部屋に帰って洗濯物を魔法で乾かす。魔力の節約のため生乾き。後は自然乾燥っと。


酒場で夕食をとり、再度部屋に戻ったのは20時前と言った所。

この時間になるともう真っ暗だ。

部屋のろうそくを幾つか灯すが、焼け石に水だね。電気はまだ存在しなくて、灯りはサービスだが金はかけたくない。

そんなわけで、便利なステータスカードを使うことにする。


照明(ライト)


ショートカットを置き換えて、部屋に明かりを灯す。

照明(ライト)は一定時間の間、光球を空中に漂わせる魔術。街中でも魔王城でもよく使われている生活魔術の一つだ。

一般的な効果は2~3時間位。雨の日の昼間よりは少し明るい程度の光量だけど、夜の室内を照らすには十分だ。


特別やることがあるわけじゃないが、さすがに寝るには少し早い。どうしようかと少し迷ってから、ステータスカードを開いてレポートモードを起動する。

まぁ、初日だしな。えっと、ここに文章を打ち込めばいいんだよな。


今日の稼ぎ。害虫駆除30ゴル。素材売却24.5ゴル。併せて54.5ゴルの収入っと。出費は宿が18ゴルに昼飯が2.8ゴル、夕食が3.2ゴルで併せて24ゴルっと。

もらったギ酸の売却代を含めなくてもプラス収支なのはありがたい。所持金は……全部で108.5ゴルか。830ゴルまでは遠いな。

冒険者家業の稼ぎは素材の売却益の方が高いから、早いとこ狩りをできる環境に移らないと辛い。


稼ぎの話、明日鬼族と会うことをレポートに打ち込んで、送信ボタンを押す。

たった十数行の文章なのに、打ち込むのに結構な時間がかかった。灯りが弱まっている気がするので、1時間は経過しているだろう。入力に手間取ったので、改善要求を出すべきか?

しかし、ほんとにやることが無くなってしまったな。今日はさっさと寝ることにして、今度レポートに夜は暇だと要望を書いておこう。


剣で灯りを散らして、ベッドの中に潜り込む。

意識はしていなかったが、疲れては居たらしい。

環境が変わって寝られるのかという疑念は、足音もたてずにやってきた睡魔によって生まれる前に刈り取られてしまった。




鬼族……。

24の人類の1つ。昼の種族の末席にして、人類の脅威。人食いの種族。


この世界の人類は、神話の時代に『始まりの女神』によって創造された。

魔王に言わせると『この世界のシステムその物』である神族や精霊族を含めその数24。

彼ら|約束の地≪プロミスド・ランド≫の住人はこれを1日に割り当て、生み出されたと言われる順に昼の種族と夜の種族に分けているが、鬼族は昼の種族の末席にあたる。


24の種族には、それぞれ役割があるとされている。

例えば、人間族や夜の種族の筆頭である妖間族の役割は農耕。エルフなら採取。ドワーフなら採掘といった感じだ。

この『役割』はその種族を『始まりの女神』が作った時に与えたものであり、多くの場合『役割』に応じた能力を持っている。


そして鬼族に与えられた『役割』は『人類の脅威』。


彼らは『人類の脅威』であるために強靭な肉体を持ち、餓えず、病まず、戦いの中でのみ死す。そして『人類の脅威』であるために、彼らは女神のかけた2つの呪いにさいなまれる。


1つは不滅の呪い。いわく、鬼族を殺したものはいかなる種族であれ鬼族へと変わる。

1つは人食いの呪い。いわく、人を食わぬ鬼族はいずれ理性を失い餓えた獣となって、人類の命奪うまで戻ることはない。


ほかの人類は鬼族の脅威から身を守るため、力を合わせ、知恵を絞り、互いに協力し合わなければならない。

人類が人類で争わぬための楔の種族。それが鬼族。




朝、目が覚めたのは外がうっすらと明るくなる頃だった。


この世界の朝は早い。明るい時間は限られているから、日が昇ると同時に動き出すのだ。

大きく伸びをして、体をほぐす。顔を洗いに出ようとして、ここが魔王城の私室でないことを思い出した。


「タオルと……財布と鍵だけもっとけばいいか」


中庭にある流し場で顔を洗って戻る。まず日課のステータス確認をしなけりゃならない。

ステータスカードを見ると、『メッセージが届いています』との表示が出ている。なんだろうこれ?

とりあえず、ステータスを確認。


体力:121

魔力:30


筋力などほかのステータスに変化はなし。体力は最大値付近まで回復している。魔力も30を超えた。問題はない。

ステータスカードをメニューモードに切り替えると、レポート表示のところにマークが付いていた。メッセージってこれか。




ミーナです。

ちゃんとレポートを送ってもらえて安心しました。これからもよろしくお願いしますねっ!


まずは初仕事お疲れ様です。

無事冒険者登録ができたようでひとまず安心ですね。これからが大変ですが、頑張っていきましょうっ!


鬼族の冒険者の方は少ないですが、居なくはありません。不安は有りますが、お会いするのはよいと思います。ただ気をつけてください。個人差もありますが、鬼族の発狂周期は2〜3か月に1度が多いと聞きます。

魔王様の話では、呪いはその人の魔力に大きく影響を与えるそうです。サークレットの魔力可視化機能や、ステータスカードにある解析(アナライズ)を使ってください。

違和感があれば接触はできるだけ短くするべきと思います。今のアキトさんでは、鬼族と戦ってもまず勝てません。

無理はしないでくださいね。


ミーナより




……なんかこれ、ほっこりするな。定期的に送ることにしよう。


しかし、鬼族は理性を維持するために年間3〜4人殺さなきゃならないって?人数は少ないらしいけど、それにしてもやばいだろ。


この世界は凶悪な犯罪は少ないらしいし、魔王の政策で犯罪者は手厚い労役に処されることが多いと聞いている。都市部で生きている鬼族は死刑執行人になっていることが多いらしいが、そんなに犯罪者が出ているとは思えないんだよな。


全体で100人、200人じゃないはずだし、その辺どうなっているのかは疑問だ。ステータスカード(こいつ)のテストは鬼族のためでもあるらしいし、機会があったら調べてみよう。


食事をしてから装備を整えて、宿を引き払って冒険者ギルドに向かう。少々荷物が重いが、今日出発するなら再度宿に戻るのは時間が勿体ない。


シルケボーまでは馬車でおよそ3日。

道中は馬車なら2〜3時間おき、徒歩なら4〜5時間おき位の間隔で中継村が存在する。エターニアに食料を供給する農村兼宿場だ。

シルケボー行きの乗合馬車は、日に4本は出ているらしい。料金は1日5ゴルの先着チケット制。途中下車しても金額は変わらない。


シルケボーまで徒歩で移動しようと思うと一週間近くかかる距離だ。昨日の依頼を受けて中継の村で仕事をするにしても、やめてシルケボーまで出るにしても、エターニア(ここ)でよい仕事が無けりゃ昼前の馬車には乗りたい。


節約のために歩くことも考えた。だけど街の外でも歩いていたらお金を落とすモンスターに遭遇する、なんて事はない世界だ。ちゃんと依頼を受けないと単に時間を浪費するだけだ。

予定より少し早く着くと、ギルドの前で冒険者らしき人たちが列を作っていた。なんの列かと問うと、今日の仕事の張り出し待ちの列だそうだ。ギルドが空くのは8時だが掲示板が空くのは8時半らしく、邪魔なので外で列を作るんだと。


人数はそう多くない。たぶん5〜6グループ。30人は居ないかな。首都のギルドにしちゃ少ない気がする。

とりあえず目的は掲示依頼の確認ではないので中に入る。受付に行くと、昨日のお姉さんが商談スペースに通してくれた。どうやらまだ相手は来ていないらしい。


「そういえば、外の掲示待ちの冒険者って首都にしちゃ人数少なくありませんか?」


時間があるので先ほど疑問に思ったことを聞いてみた。


「ここに張り出される仕事は少ないですからね」


なにせ首都。もうこの近辺は開拓されつくしていて、冒険者が必要な仕事が少ないらしい。依頼の数は衛星都市、離れた村の方が豊富なので、仕事を探す冒険者が集まるのはそちらだそうだ。


しばらく待っていてください、と言われパーテーションで区切られた商談スペースで待機。掲示板を見に行きたい気もするが、順番もあるので仕方ない。

受付のお姉さんがその人を連れてきたのは、それから10分ほど経った頃のことだった。

明日も23時に更新予定です。


■生活魔術

日常生活でよく使われる魔術の総称。

魔力の必要量が少なく、魔力が少ない人でも努力すれば覚えることが出来る。

代表的なのは発火(ファイア)

照明(ライト)小加熱(マイルドヒート)も生活魔術とされるが、難易度は高めで覚えている人は少ない。

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