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お題小説

少年とラジオ

作者: 水泡歌

こんにちは。


今日はテーマが「ラジオ」ということで僕のラジオの思い出を投稿させてもらいます。


兄の「ラジオ」に憧れていた小学4年生の時。


ある日、祖父が僕にこう言ってくれました。


「おじいちゃんのラジオを貸してあげよう」


家から徒歩5分のところに祖父の家はあって。


そこに行くとピカピカの買ったばかりのラジオが置いてありました。


「おじいちゃんのもの」と言いましたが、明らかにそれは僕のために買ったものでした。


それから僕は何度も何度も祖父の家にラジオを聴きに行きました。


僕の傍に座り祖父はただ微笑んでいました。


好きなバンドの曲が流れると祖父に自慢しました。


このバンド、カッコ良いだろう、おじいちゃん。


何度も何度も説明するのに祖父はいつも横文字のそのバンドの名前を間違えていました。


中学生になるとラジオより楽しいものが出来ました。


兄の高校入学をきっかけに我が家にパソコンがやってきました。


インターネットに夢中になり、祖父の家には行かなくなりました。


母は怒ったように言っていました。


「少しは遊びに行ってあげなさいよ。おじいちゃん、寂しがってたわよ」


「うん、いつか行くよ」


僕の返事はいつも「いつか」でした。


「行ってあげなさいよ」そんな言葉を聞き飽きた高校の時、母の言葉が変わりました。


「おじいちゃん、亡くなったわよ」


いつもの怒った顔に悲しみが混じった表情でした。


僕は祖父の家に行きました。


寝室で祖父は布団に寝かされていました。


久しぶりに顔をみて思いました。


ああ、こんなに……と。


いつの間にこんなに年をとってしまったのだろう。


僕の知らない祖父がそこにはいました。


いたたまれなくなってあの頃行っていたラジオ部屋に行ってみました。


驚きました。


そこにはピカピカに手入れされたラジオが置いてあって。


その横には僕があの頃好きだったバンドのCDが積まれていました。


ラジオをつけてみると偶然にもラジオDJがあのバンドの名前を言っているところでした。


僕は久しぶりにボーカルの声を聴きました。


優しい曲でした。


ラジオDJがその曲の発売日を告げました。


僕は壁にかけられたカレンダーを見ました。


祖父の達筆な字で「CD発売日」と書かれていました。


カレンダーに書かれたそのバンドの名前は相変わらず間違っていました。


あんなに言ったじゃないか、おじいちゃん。


そう思いながら涙が止まりませんでした。


今日はその曲をリクエストさせてください。



では、聴いてください。


「少年とラジオ」。



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