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ちいさな僕のお姫様  作者: にしのかなで
二章
9/30

成年の儀3(改)

あっという間に成年の儀だ。

ウィレムが訪ねて来てから大慌てで礼服やら作法やら何より大事なパートナーへのエスコート&ダンスの練習。しかもこの後には卒業パーティーもあるのでダンスのレパートリーが幅広く特訓された。

パートナーを務めてくれるアナスタシアは同じ屋敷から出立するので自分の用意ができたら本邸に迎えに行く。慣れない礼服だけでうんざりなのにフェンリルが張り切って髪の毛をセットしてくれる。


「ふふ。嬉しいですわ〜、私この日が来るのがお仕えしてから楽しみでしたの。普段のガウス様はちっとも外見に拘らず気が付けばボサボサ頭にラフな着こなしで学校に通われてましたけど今日はそうはいけませんからね。」


「でも、僕は癖毛だからセットなんてやりにくいでしょう?それに魔法技師は動きやすい服装の方がいいんですよ。」


「いいえ!今日ばかりはそれが間違いだったと気づかれますわよきっと。この一点の曇りもない艶のある黒髪に、普段は伸ばし過ぎて見え隠れするまるで夜空に浮かぶ月の様な淡い金の瞳。今宵はその隣に暁の姫君と称されるアナスタシア様が並ばれるなんて、溜息ものです。」


結局、面倒臭くて伸ばしていた癖毛は今日の為に切り落とされることもなく後ろで濃い藍色の紐で結ばれ、前髪も魔力に影響するかもしれないからというと切らずに普段より見栄え良くととのえられた。


「さて、手袋よし。ローブよし。ハンカチよし。」


一つ一つ指差し確認していく姿はまるで母親のそれだ。


「あ、ちょっと待ってくださいこれつけなきゃ。それと、すみませんセシリアを呼んできてもらえますか?」


前以てポケットに入れていた飾りを片耳に付ける。それからもう一つポケットを探り様々な色の魔石を取り付けた指輪を取り出す。


「セシルを連れてまいりましたわ・・・何ですのその耳飾り、素敵ですけど。」


曖昧に笑ってセシルを手招きする、


「僕の魔力、まだ安定していないでしょう?だから今日はセシルの力を借りようと思って。セシル、手を出してくれる?」


素直に出したそのまだ幼い指に小さな声で魔法を詠唱しながら指輪をはめる。するとセシルに誂えたかの様にピッタリと指に収まった。


「あ、はい。わかりました、これルディ様の耳飾りと繋がってますね。えと、私はこちらでルディ様の力の安定を支えればよろしい・・・これであってますか?」


今日はもう仕事もないので髪を真っ直ぐに降ろし一旦瞳を閉じて何かを感じ取ったあと僕を真っ直ぐ見据えて問うてきた。その瞳はいつもより濃い翠色をしている。何とかここまでは上手くいったようでホッとする。


「うん、そう。よくわかったね。」


「指輪が教えてくれました、不思議ですね。何かあってもどうすればいいかこれがあれば大丈夫な気がします。」


「それは、今言った様に僕の耳飾りと繋がってる。だから、離れていてもセシルの力を感じて僕の魔力が暴走する事はないはずなんだ。開発中だから、今日はとりあえず王宮迄の距離と帰る迄の時間に合わせて慌てて作ったから完璧とは言えないんだけど、だから・・・」


僕はセシルの目線に合わせて屈むと彼女の頭を両手で抑え二人の額を合わせた。


「「神の御加護があります様に」」


驚いた事に二人同時に同じ祈りを呟き、僕はそうして合わせた額からセシルの負担が少しでも減る様魔力を注ぐつもりだったが、彼女の方からも何か温かいモノが流れ込んできた。


「セシル、なに?いまの。」


「祝福です、今日はルディ様の大事な日ですから何事もない様に楽しんでこられます様にと。」


「ガウス様っ!今日から貴方様は大人の仲間入りですよ、いくらセシル相手とはいえ女性との接触にはお気をつけてくださいませ。」


何が起きているのか心配と不安とマナー違反にフェンリルに叱られた。


「すみません、でも僕もアナスタシア様をエスコートなんて慣れない事をするから何が起きても不思議じゃなくて不安なんですよ。」


頼りな気に笑ってローブを羽織る。


「大丈夫ですよ。きっと何事もなく帰ってこられます。」


ルディの意外な不安が通じたのか、励ます様ににっこり微笑むとオブリーに本邸へと案内するよう引き渡された。後ろではセシルが見送りの挨拶をしてくれている。そう、僕は意外にも緊張しているのだ。何事もなく終わるようにと。


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