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ちいさな僕のお姫様  作者: にしのかなで
二章
8/30

成年の儀2

この屋敷の三男ウィレムは先日、近衛隊見習いから正式な入隊試験を突破し成年の儀の後配属先が決まるという報せを持って来た。


「同じ敷地内に住んでるのになっかなか会わないもんなぁ。最近じゃお前が飛び級試験に卒業試験、試験づくしで近寄る事も駄目だと母上から言われて退屈だったよ。」


一足先に内定をもらっていた彼はやっと僕が試験から解放されたと知るとすぐさま飛んで来た。


「ところでさ、セシルはどうだ?ちゃんとやれてるか?」


セシリアはセシルの愛称で公爵家と離れで呼ばれていた。公爵家の末っ子でセシルが来た当初から懐かれずまいっていたものの、それでもルディより先に出会い遊び相手となり今でも妹同然気にかけている。セシルの嫁入りは俺の納得いく奴じゃないと駄目だ、など8歳の少女に対し少々気の早い心配までしているから、将来年頃を迎えたセシリアは難儀するかもしれない。


「セシルならフェンリルさんの指導でうまくやってるよ。お茶の淹れ方も上手くなって、最近はお菓子作りを習ってるようだね。もうすぐ来るんじゃないかな?」


勝手知ったる離れのなか、出迎えたオブリーに挨拶をしてすぐズカズカとルディの部屋に入ってきた友人だ。いくらご主人様のご子息とはいえ、普通は客間に通されてそこで会うのが普通だろうに。

丁度ノックがされどうぞと促すと噂の侍女見習いが入ってきた。


「ウィレム様、お久しぶりでございます。近衛隊試験合格おめでとうございます。」


今日は肩より下に伸びた髪を両脇で三つ編みにしてリボンで結んでいる。彼女の髪型はフェンリルさんの気分で日により可愛らしくセットされている。ニッコリと笑顔を向けられウィリーも上機嫌だ。


「有難う、セシル。今日は何のお茶を飲ませてくれるのかな?」


と、いいながらサッサと部屋を出ようとする。


「おい、待て僕を忘れてないか。」


「あ、お前はまた後でゆっくりと。さぁ行こうセシル、試験で疲れた身体に温かいお茶を注いでおくれ。」


クスクス笑ながらセシルがではどうぞと客間に案内する。突然の来訪だったので夜着のまま迎えてしまったからすぐさま着替えて階下におりていく。最近は魔具の研究に没頭していて、朝も昼もない。客間では既にウィリーがお茶とセシルお手製のお菓子を手に付けている。ソファに腰掛けるといいタイミングでフェンリルが軽い食事とお茶の用意をしてくれた。礼を言ってお茶を流し込む。温かい液体が身体の隅々まで行き渡り同時にお腹が空いてきた。今何時なんだ?と、思いながら食事替りのサンドウィッチをつまんでいると呆れた顔でウィレムが


「お前、ちゃんと食べてるか?目の下の隈も酷いな。何やったらそんな酷い顔になるんだ?」


セシルのお菓子が余程美味しかったのかお代わりまで頼みながら指摘する。そう、最近は全く上手くいかない魔具の研究に少し疲れていたのは事実。だけど作っているモノまで明かせない。それが魔術技師だ。それから、他愛もない話をしているとオブリーが封書を持ってきた。

一つは魔法省の蝋印が押され内容は卒業を認めるというもの。もう一つは王家の印があり、成年の儀への招待状であった。


「あ、それなら俺にも来てる。で、どうする?」


「何を?出席なら勿論するさ、王家からの御招待だからね。」


「うん、そりゃそうさ。でもさ、その二つとも夜会があってパートナーが必要だろう?俺は従姉妹のハーバル令嬢を誘ってるんだけど、お前アテはあるの?」


「・・・それ、全員参加?ダンスとかするの?」


「そりゃまぁね。成年の儀は特に女の子にとっちゃ社交界デビューだから気合い入ってるよ。俺、毎日ダンス教師がついてハーバルのステイシアに恥かかさない様特訓の日々。」


「僕、いないよ。今からじゃ間に合わないんじゃない⁉」


お菓子をつまんだ後の指先をペロッと行儀悪く舐めてから


「やっぱりねー。あのさ、うちの姉さんが良ければパートナーを務めるって言ってくれてんだけど、なにせ二つとはいえ年上だしどうかなって母上と二人がかりで聞かれてんだけど。」


「卒業パーティーもお願いします。あと、ダンス教師、僕も習いたい!」


「あ、それはフェンリルに任せていいよ。厳しいと思うけどオブリーと二人がかりでみっちりやってくれるよ。」


さすが、完璧有能侍女。


「じゃ、母上と姉上にそう言っとくから。」


そう言うとヒラヒラと手を降って本邸の方へ帰って行った。


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