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ちいさな僕のお姫様  作者: にしのかなで
一章
3/30

セシリア

離れには執事のオブリーと侍女のフェンリルが住み込みで働いている。離れと言っても三人で住むには広すぎるので部屋数は当然余っていた。客室などもあるが、屋敷預かりの住む離れには普通客人は来ないからセシリアの部屋は選び放題だ。しかし、何せ幼い故に慎重にどの部屋を使うか二人の使用人は真剣に悩んでいた。その間、セシリアはルディにピッタリくっついている。

仕方なく彼はセシリアの手を取り離れの中を案内する事にした。ちいさな手を引いて2階へと上がる。


「セシリアは一人で眠るのは平気?」


今まで孤児院で大勢の子供たちに囲まれて生活していたのだから突然一人部屋を与えられて夜は寂しいだろうと思いつき聞いてみた。


「はい。でも、まっくらなところはこわいです。」


うーん、そうだろうねぇ。


「みるふぉいのおうちでは、みんなであつまってぎゅってしてねてました。みるふぉいのおねえさんたちが、よるおはなしをしてくれてそれをきいてるうちにねむってしまいます。わたし、わたしはまほうつかいのおはなしがだいすきでした。」


まだ少し舌っ足らずな言葉を紡ぐ。


「ミルフォイのお家って孤児院のこと?」


「はい。こじいんのこどもは、みんなみるふぉいです。しさいさまがみんなじぶんのこどもだからとおなまえをくださるのです。あ、でもちゃんとじぶんのおなまえのあるこたちはそのなまえをつかいます。わたしはせしりあのなまえもしさいさまからいただきましたけど。」


あぁ、聞いたことがある。身寄りのない子供たちは大抵その教会や孤児院の名前が苗字になるんだよな。なんでも、成長して自立してからも親代わりの後見人になるとか・・・。


「セシリアはお父さんやお母さんのことは覚えてないの?」


「・・・おぼえてません。」


「そう。あ、荷物はどこに置いてあるのかな?」


「えっと、しょくどうです!おへやがきまるまでそこにおいておきましょうねってふぇ・・・ふぇん、りるさんが。それからおいしいココアとおかしをいただきました。」


美味しいものの味を思い出したのか、ふふっと嬉しそうに笑う。そんな話をしながら僕の部屋の前に着いた。


「さぁ、ここが僕の部屋だよ。」


僕たちが2階で寛いでいた頃、1階の二人は幾つか部屋の候補を決めたらしくしばらくして僕の部屋にやってきた。


「失礼します、ガウス様。セシリアさんのお部屋なのですが・・・。」


オブリーはまだ独身で女性と子どもだけでは心配だとこの離れの一階に部屋を与えてもらっている。フェンリルは僕に何かあった場合に備えて2階に、そして新しい侍女見習いは幼い少女という事で危険な一階は避けフェンリルが同室しようかと申し出てたけれど、それでは仕事で疲れた彼女が休めないだろうと3人で話を詰め結局ルディの廊下を挟んだ向かいの部屋にした。これなら暗闇が怖くて泣き出してもルディもフェンリルも気づきやすい。


「じゃあ、私は部屋の準備をしますね。セシリアさん自分のお荷物を運べますか?」


「はい!いまはこんできます。」


自分の居場所ができた事にホッとした笑顔で階下へ駆け下りて行く。フェンリルは、手早く向かいの室内を見回し倉庫に向かい子どもに相応しいカーテンや寝具を用意する。なんだか、みんながちいさな新参者を歓迎しこの日離れは賑やかな一日となった。


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