花開くその側で2
翌朝、いつも通りの時間にセシルは降りて来たという。朝食に降りる前に自室の窓から何気に外を見下ろすと、朝日に銀の髪を煌めかせながら東屋の方をじっと見ている。そういえば、雛鳥親子の話が途中だったなと思い出し着替えを済ませると階下へ降りる。
「おはようございます。オブリーさん、すみませんが本邸の奥様に面会をしたいのてお伺いをしていただけますか?用件はセシリアの髪色の変化と司祭様へのお別れをさせたいのです。」
「かしこまりました。」
その後、セシルがまだ外に居るのに気付き僕も庭に出る。
「おはよう、セシリア。」
「あ!おはようございます、ルディ様。」
「例の巣を見てるのかい?」
「はい、もうすぐ飛びたてそうなんです。飛ぶ練習をしているのですが、私、蛇なんかに襲われるんじゃないかと心配で・・・」
「そういえばさ、昨日の話し腰を折っちゃってゴメン。えと、鳥の親子を見ていて何か解ったって言ってたよね?それって、何?」
「・・・すみません、変な事言い出して。でも、覚えていてくださったんですね。」
「うん、なんか気になって・・・教えてくれる?」
「・・・あの・・・。蛇が雛鳥を襲うのを親鳥が威嚇したり陽動したりするのを見ていて私、もしかして私の両親もそうだったのかなと・・・」
「・・・・・」
「つまり、私は何故か不思議と人を惹きつけるようですし、ルディ様に同調する力や歌で植物の成長を早めたりしかもそれは魔力ではなくて未だに何なのかわからない・・・そんな私をこの離れへと隠すために私は司祭様に預けられ奥様に見出され無事にここに居場所が出来たと・・・。」
「セシー・・・」
「ルディ様の養父母様を見ていて、羨ましかったけど私、生まれて来てはいけないとか愛されていないいらない子だったんじゃなくて生まれた時からきっとあのひな鳥の様に大事にされてきたんじゃないかって、いいえ!きっとそうなんです。」
「セシー・・・セシー、セシー」
僕はギュッとちいさな体を抱きしめた。
「君は愛されているよ、みんなが君を愛してる。その通りさ、きっと君のご両親は君が自分で飛べるまでここに隠すために司祭に預けたんだよ。そしてセシー、君はもうすぐ飛べるよこの髪の変化が証拠さ!」
「・・・はい、はい。セシーもそう思います。ありがとうございます、ルディ様。」
その時東屋の方から鳥の鳴き声と羽ばたきが聞こえた。
「ルディ様!やりましたわ、あの子飛べました‼」
弱々しいがしっかりと目的地を見据え空へと羽ばたいて行く。少し高い木から見ていた親鳥が子どもを褒める様に鳴きながら周りを飛び交う。
二人で親子を見送りながら心で思った。
(飛べるよ、セシー。それはもうすぐさ)