蕾が開くその前に2(改)
「・・・わ・・ふ、わああぁ・・・」
食後、離れの住人全員と賑やかな来客1名とで居間に移り姫君達からの贈り物を眺めた。
焼き菓子は何でもオーランド殿下が用意し、シア様からは華奢なレース編みで縁取られたハンカチ、ミンナ姫からは薔薇の装飾が施された手鏡が贈れていた。
「まぁ、素敵じゃないセシル!姫君からの贈り物はどちらもいま上流階級のご令嬢がたの人気の品ですよ。それに、殿下からの焼き菓子は王家の方のための特別なお菓子です。頑張った甲斐がありましたね。」
頬を紅潮させて品々を見つめるセシルにフェンリルが丁寧に説明をしていく。
「え・・・これってお高い品ばかりですよね。こ・こんなことって、私本当に受け取っていいんでしょうか⁉」
思いっきり僕に向かって振り向いた。うん、そりゃ動揺するよね。この国の王子様とお姫様から一侍女見習いにこんな高価な贈り物、でも三人ともこれでも気を使わないようなそれでいて乙女のハートを鷲掴みっ!な気配りをした贈り物であった。
「いいんだよ、セシリア。きっとシア様から話を聞いて君に功労賞をあげたくなったんだよ。ここは、遠慮せずに受け取るのが礼儀だよ。」
にっこり笑って安心させるように言うとセシルも納得いったようで、あとはフェンリルとハンカチを広げたり鏡を念入りに見たりし、フェンリルはわざわざハンカチに合う服を縫わなくちゃなどと二人ではしゃぎ始めた。
「ガウス様、昨夜の魔具の件は成功ですかな?」
「ん〜、それはどうだか検証してみないとわからないです。なにせ僕は緊張して会場では何も感じなかったのですが、セシルには指輪から僕の様子が伝わったらしいですし。でも、帰りの馬車で緊張が解けた時に耳飾りから温かいモノが流れ込んできて本邸までの間ぐっすりと眠れたんです。あれは、セシルの歌の効果と同じものでした。だからお互いが力を通じ合わせていたのは間違いないとは思いますけど。目標まではまだまだです。」
「何だよ、目標って。」
「この離れ以外でも自分で安定できるような魔具をつくることだよ。いつまでも、安心して外出できないしセシリアの力に頼りっぱなしというわけにもいかないだろう?」
「別にいいと思うけど?」
「それじゃ、あの子をいつまでも解放できないじゃないか。それに・・・僕はあの子を外の世界にも連れ出してあげたいんだ。」
不思議に人を惹きつけるため身の安全のために離れから出た事のない少女。それが昨夜は魔具を通じて成年の儀の会場の雰囲気を感じとり僕のダンスに同調してそれだけで楽しかったて笑った。けれど、このままでは自分自身の成年の儀に出られるのかも危うい身の上。
「ん?」
「どうしたオブリー」
「いや、セシリアの髪の色が・・・」
「「あ」」
「少し変わってきていますよね。この前までは灰色でしたが。」
「・・・銀色に見える。今は光の角度によってだけど。銀・・・オブリーさん、髪の色って変わる事あるんですか?」
「そうですね、生まれたての赤ん坊が成長し髪色が変わるのは聞いた事がありますが。」
「おい、なんだよ。髪色が変わるとどうなるんだ?」
「わからない。セシリアの能力は未だに解けてないし。でも、でももしあの髪が銀になったら・・・」
「銀髪になったら?」
「あの子を自由にできるかもしれない。」
「は⁈」
「銀には魔除けの効果があるんだよ。それだけでとりあえず誘拐なんて禍々しい事を考える輩は近づけなくなるな。あとは用途にあった魔具を作る事ができれば、普通の娘と変わらずに過ごせるんじゃないかな?それ以前にあの能力が解明できればいいけど、それは僕も似たような立場だし。安定して力が使えれば・・・」
そこまで話すと僕は自室へ向かうために階段を駆け上がった、普段なら行儀が悪いと注意されるがそれどころじゃない。
「ガウス様⁈」
「ごめん‼オブリーさん、暫く研究に入るから食事なんかはまた部屋までお願いできるかな⁈」
「かしこまりました。」
「ウィリー、暫く会えないけどセシルには時々会いに来てっ!じゃね‼」
バタンと大きな音を立てて閉まったドアに向かって主にウィリーの声が聞こえたけどもう何を言ってるかわからない。
この日から僕はセシリアのためだけに魔具の研究に取りかかった。あの子の笑顔が忘れられない、だけどあの笑顔はあの子自身が体験して笑わなきゃ意味がないんだ。僕を通じて擬似体験だけの世界にあの子を閉じ込めちゃいけない、そう。それじゃまるでここは彼女の・・・
「鳥籠なんかにするもんかっっ」