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ちいさな僕のお姫様  作者: にしのかなで
二章
10/30

成年の儀4(改)

王宮の広間には若い熱気が溢れかえっていた。一生に一度の社交デビューのこの日の為に磨き上げた若々しい美しさを誇りにパートナーと入城して来る令嬢達。昨日迄の坊ちゃん扱いから一人前の男として扱われることに期待を膨らます若い青年達、皆それぞれが煌き合いあちらこちらで挨拶を交わし広間で王族の登場を待っていた。


「痛、痛たた・・・なんですか、アナスタシア様。」


ドレスの裾に隠れたヒールで足を思いっきり踏みつけられて思わず涙目になる。


「なんか、イラッときたから。」


「はあぁ⁈」


思えば本邸を出て馬車に乗ってからここ迄、挨拶を交わした程度の会話しかしていない。扇で優雅に口元を隠しチクチクと嫌味が降ってきた。


「ねぇ、ニーム・ロドリゲス・ガウス。あなたね、そういう人がいるなら前もって言ってくれればいいじゃない。その片耳の飾り、もう片方はこの会場のどの御令嬢に差し上げてるの?」


「え⁈そんな女性いませんよ。」


「じゃ、なんで片耳だけなのよ?おかしいじゃない?私はいいわよ、貴方が本命ではないから。だけど、私が余計なお世話でパートナーを買って出たから泣いてる方がいると思うと、私もうたまらなくなるわ。さぁ、白状なさいロドリゲス。なぜその方にパートナーを申し込まなかったの?まさか・・・断られたの⁈」


美麗な眉を釣り上げたりくるくると表情を変えながら僕を非難し最後には憐れそうに見つめられて多分ルディは余程呆けた顔をしていたのだろう、彼女のご機嫌が悪い原因がこの耳飾りで更にその片割れを持つ相手を興味を持って探している。


「パートナーには・・・誘えませんでした。」


この一言をやっと絞り出すと目の前の姫君はやや釣り上がり気味の猫のような瞳をキラリと輝かせると、はしたなくも僕の手を引いてテラスへと連れ出した。

周りから見たら僕等はどう映っているのだろう「暁の姫君」と称されるまさしく夜明け前の空色の瞳を持つこの女性をエスコートして入城してから何度も男女隔てなく注目を浴びた、そしていま二人はテラスで表向き和かに談笑中だ。にっこりと目の前で微笑む彼女が笑顔を崩さず聞いてくる。


「で?なぜその方をお誘いできなかったの?仮にも貴方、魔法魔術技師学校始まって以来の天才で人気はあるはずよね。」


「いや、それはないですよ。養父の手前、これ以上の学校への被害をなくす為に猛勉強はしましたけど、あれは、すっごく大変な努力と根性で成し遂げ手に入れた卒業資格ですからねっっ!それに、僕に近づくと危険だからって女の子なんか寄ってきませんよ。」


やけくそになって、つい二人とも本邸モードで会話する。


「でもさっき言ったじゃない、誘えなかったって。」


「あぁ、この耳飾りは僕の作った制御装置なんです。仮にもこの王宮でなにかしでかしたらクビが飛びますよ。片耳なのは、僕一人ではまだ安定が難しいのでもう片方は指輪の形にしてセシリアに預けてきたんです。出かける前に確認したらちゃんとリンクしてましたから、アナスタシア様を無事ご自宅まで送り届けられると思いますのでご安心を。ってゆうか、8歳の子どもをパートナーにできるわけないでしょう。あれ?アナスタシア様?どうしました⁉」


「く・・・くく、苦しい〜っっっ!って、あ、あは、は」


話の途中から小首をかしげ、しなやかな猫のように瞳を見開いて聞いていた姫君はいまやテラスに体を預け庭に向けて笑続けている、くそっ‼涙まで流して化粧が剥げるんじゃないた?仕方なくポケットからハンカチを差し出す。


「あ〜、有難う。後、ごめんなさいね笑っちゃって・・・っぷ・・・」


いやもう、完全に体制立て直してから謝って下さいよ。


「私、セシリアにはまだ会った事がないの。今日は成年の儀だから、それより下の姫君達はお越しにならないのだけど第二王子殿下は今日が成年の儀でしょう?その上のミンナ様と私は同い年なのだけど三人で話していたのよ。15で魔法魔術技師学校の卒業資格を得た天才だからパートナーを選ぶのには困らないだろうって。そうしたら、ウィリーが私に頼んできたのよ相手をしてやって欲しいって。それからまた三人で誘えないほどの身分の令嬢なのか、または低い身分でこちらにこられない方なのか。とにかく貴方の噂は王宮でも流れているから一人だなんておかしいって。だから、本邸へ迎えに来てくれた時にその片耳を見てやっぱり本命がいるって勘ぐっちゃったのよ〜、ごめんなさいねぇ。」


それから真面目な顔になって閉じた扇で僕を差し、


「貴方、まったく自覚がないようだけど社交界じゃかなり注目されてるわよ。今日も私の相手を2・3曲踊れば後はいろんなご令嬢からお声がかかるんじゃないかしら?何せ、普段の素の貴方を知らないんですもの。し、しかも・・・8歳の女の子・・・っくっくくく・・・」


あー、はいはい。もうどうぞ思いっきり笑って下さいよ、とルディは諦め顔になった。


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