28.今後
リキュスカさんの未来に幸アレ!です
「さて、お久しぶりですわね、京介。そしてこのコが・・・・
可愛いコね・・・吸血鬼にもせず手も出さず・・・
大事なお人形さんにするの?」
美樹の額にそっとキスをしリリスは京介を見上げ、
紫色の瞳が神秘的な光を宿すその麗姿はいつみても色あせてない。
(ちょっと怖いが)
「どうって・・・出来る限りは人間として生きていく手助けするよ」
どの位の長さかは解らないが・・・・
「彼女の身体はもう人間には戻せませんけれど・・・
異種族間協定法の例外として今回美樹さんを殺したことは無効・・・
つまり貴方に監督責任は問わないとしてもよいのよ?」
リリスならば出来るだろう。
なんと言っても一番の権力者だ。
しかも父・サタンの悪戯心が一枚噛んでいたとあっては
何かしないと気が済まないのだろう。
「ん・・・・いいよ。配偶者じゃなく眷属だから自由もあるしね。
やっぱり彼女を死なせてしまったのは俺の責任でもあるから・・・」
腕にいる美樹を見やる。
「このコ・・・おいしそう・・・」
いつの間にか現れた小さな花魁がじっと美樹を見やりぽそりとつぶやく。
「おいおい、彼女を喰い殺さないでくれよ?」
笑いながら花魁の頭を優しくなでた。
(いつまでたっても子供扱いね)
花魁の嬉しいような寂しいような複雑な感情を
いつものポーカーフェイスから読みとることは不可能だろう。
嫉妬よりはむしろ親愛の情をもって美樹を見つめ、その頬に指を当てた。
「じゃあ彼女のコトは京介次第ってことにしますわ。
あと・・・若干名、組織から逃げ出したメンバーがいるらしいですけれど
それらは私どもに任せてください。
この件についてと今後似た様な犯罪が起こりうる可能性について、
人間界に根付いている貴方がたに助言を求めるので・・・
そのうち正式な要請が来ると思っていてくださいまし。
じゃ、私はこれで。そう言うとリリスは花魁と供にふぅっと消えた。
ほうけたようだったリキュスカも我に返ったように表情を引き締め
居住まいを正すようにジャケットの襟を直す。
「私もどこかの学校で勉強し直して・・・
これからのセイレーン族のあり方を学びながら考えますわ」
インペリアの聖母を思わせるような笑顔とはまた違う・・・
リキュスカが京介とジムに見せたもっと希望に満ちた笑顔は
これからのセイレーン族の明るい未来を予想しているようだった。
「んじゃ、片付いたみたいだし・・・俺も帰るわ。
今夜の飛行機で本国戻らなきゃだしね。
よかったらミス・リキュスカ。
ウチの事務所で働きながらロースクールにでも行きませんか?」
「え?でも・・・そこまでは流石に・・」
いきなりの申し出にリキュスカは実に和風な淑やかさで遠慮を見せる。
「なに、奨学制度を設けると色々と周囲からの覚えもめでたいし、ね。
お互いのためになると思うから・・・・
じゃ、詳しい話しは飛行機の中ででも」
ジムはリキュスカの背中に手を添え
「京介、ミス・大和撫子はお前に任せたよ」
京介にはぽんっと肩を叩き二人して消えてしまった。
え??
ちょっと待ってくれ!
こんな時代錯誤なドレス着たままのお嬢さんをどうしろってんだ!?
置いていかないでくれって!!
美樹だけが平和にすーすーと寝息を立て続けた。
もう少し・・・お付き合い下さい




