27.悪魔族長リリス
女は強いのです。
「ふぉっふぉっ。
結構イイとこまでいったけれどやっぱり手を広げすぎたか」
どこからもなく声が聞こえてきたかと思うと3人の丁度真後ろに
突然小柄な老人が現れた。
「サっサタン!!!」
「おお、京ちゃんか。お前相変わらずまだまだぼんぼんだなぁ」
ふぉっふぉっふぉっと独特の笑い方をし京介を茶化し
「ご隠居なんで?」
狐につままれたような顔で質問するジムに
「ジム坊や、隠居している身には娯楽は必須でな」
ふぉっふぉっと高笑いした。
「そしてこりゃ見たことない別嬪さんがおるのぉ
姉さんは・・そうか、セイレーン族か。
いいのぉセイレーン族は美女揃いだからのぉ」
ふぉっふぉっ・・・・
京介は何だか段々腹が立ってきた。
「サタン!いくら前・悪魔族長だからといって・・・
戯れにも程があるでしょう!」
「ふぉっ。
京ちゃん。怒るなかれ。
儂は異種族間協定に違反するような行為はしとらんぞ?
滝山には確かに封魔札と人形を与えた。
しかしそれは儂が彼から『対価』をもらったからじゃ。
それよりも・・・いいのかね?契約無しで滝山を殺してもうて・・・」
そうだ・・。
サタンの戯れよりも今はリキュスカの大罪の方が大問題だ。
いくら理由があるとはいえ情状酌量という制度がないのが異種族間協定だ
「後悔しているのは楽な死に方をさせてしまった事だけですわ。
どんな理由にせよ契約無しで人間を殺めるのは重罪・・・
もちろん心得ております」
観念していたのだろう。
自嘲気味ながらも神妙にリキュスカはつぶやく。
いかなる事情があっても異種族間協定により裁判にかけられれば
このままリキュスカは死罪・・・
もしもうまくいっても生涯幽閉はさけられないだろう。
「でも・・・」
「いいのよ、Mr.オカミ。姉様の敵は一応取りましたし」
安心させようと見せる笑顔。
なぜだかその笑顔は美樹を思い出させた。
「お疲れさま、リキュスカ」
そんな空気をぴしゃんとせき止めた声・・・
書斎然とした部屋にはどう考えても似つかわしくない
ゴージャスな深紅のドレスにゴージャスな肢体、
そしてハニーブロンドの絶世美人。
「リリス!」
「大魔女様まで出てくるってことは
滝山のことは悪魔族でも追っていたのか?」
ジムの質問にはわずかに片眉をあげただけの仕草で答え
「リキュスカ、お務めお疲れさまでした。
異種族間協定委員会会長として、そして悪魔族長として
お礼を申し上げますわ。
滝山の処刑は協議会で可決され貴女にそれを命じたのはこの私・・・
そのことをもう隠す必要はありません。
この不良族長たちにも説明なさってももうかまいませんよ?」
「リリスさん・・・?」
リキュスカは不思議そうな悩んでいるような・・・
不可思議な表情を見せる。
そんな彼女にリリスはまるで姉のように穏やかな声で
「貴女のお姉様、インペリアとは幼少の頃の別荘で一緒に遊びましたわ・・・
懐かしい・・・・インペリアが亡くなって本当に・・・・。
この件では随分辛い思いをしたのにこんな役を命じてしまった
私を許してね」
「り・・リリスさん・・・」
インペリアの緑の双眸からクリスタルのように輝く涙が溢れ・・
そのまま崩れ落ちる。
「・・・・ねぇ、他種族の介入を嫌う悪魔族が
セイレーンに助け求める?」
腑に落ちないジムはリリスに耳打ちする。
「ふふ・・・さぁ・・」
毒婦の甘い笑顔・・・・
これはリリスに大きな借りが出来たみたいだ。
そんな慈悲深い大魔女様はくるりと振り向きその形相を阿修羅へ変えた。
「おーとーおーさーまー」
その迫力は怒れる竜のごとし。
ハニーブロンドが溢れる怒気でたなびいている錯覚すら見えるようだ。
「り・・りりすちゃん・・・ね、怒らないで。
パパ反省しているから・・ね?」
これがかの有名な恐怖の悪魔族長サタンだろうか?
そこには腰ぬかさんばかりにおびえる一人の中年男がいる。
「問答無用!!!」
ばちーんっ
盛大な平手打ちが炸裂する。
ばき、ぼこっ、どさっ・・・・
明らかに骨が砕ける音に肉が裂かれる音なども含まれている。
オソロシー・・・・
さすが現・悪魔族長リリス様
その恐ろしさは父をも凌ぐ・・・。
「りりすちゃんっごめんっ・・・ぐあっ・・・」
ご愁傷様です・・・大魔女は怒らせちゃいけません・・・
ぼろぼろになったサタンにもちょっとだけ・・・
ホントちょっとだけ同情も・・・するかな?
いや、しないか。
もう少し!!
あと少しで終わりますのでいくばくかお付き合いを




