26.Denza Macabra
封魔札をとってもらったリキュスカさん。
どうします??
「この部屋に?」
相変わらず緊張した面もちのジム。
先ほどの封魔札はがしで若干魔力を使ったものの
目立った疲れはもう見えない。
「・・・ええ、おそらく。
滝山はこの屋敷に居るときはいつもこの部屋を書斎として使っているわ」
そう案内された場所はリキュスカがいたホストルームから
2階登った階の一番奥だった。
「開けて・・・大丈夫かなぁ?コレ」
用心深い事を言いながらも大した魔力も感じないので
のんびりとしている京介の声はこの場にそぐわないようにも見える。
「ええ・・・おそらく・・・腕のたつ彼の護衛はもう居ないはずよ。
クリスが・・・吸血鬼族族長と名乗る男がいたけれど・・・
そんな強い人じゃなさそうだし」
リキュスカは表情を抑えた声色で説明しドアノブに手を掛け扉を開ける。
「やぁ、みなさん。
揃いも揃ってお目見えとは・・・
結局、わたしが揃えた駒は負けたわけですね」
滝山は落ち着き払った様子でマホガニー材のデスクから3人を見据える。
「手駒を倒し籠の中のお嬢さんたちを助けわたしのところまで来ました」
じゃあ、ここで私が出来ること・・・・そうですね
では最後の足掻きってヤツをしてみますか」
かたん、とデスクの引き出しを開け取りだした札を
トランプのように扇状に広げる。
(あれが・・・リキュスカに張ってある封魔の札・・・)
「足掻くのは勝手だけでども、足掻く前に聞いてもらおうか。
ただの人間であるお前など今は全く驚異にはならない。
大人しく降参し我々の裁きを受ける方が得策ではないか?」
ジムは冷静に諭す。
「どの道・・・
裁きを受けても生き地獄になるのは目に見えてますしね」
逃げは私のポリシーに反するのですよ。
滝山はそう言い席を立ったかと思うと手持ちの札を京介の腕にある
美樹目掛け飛ばしてきた。
「なっ!」
ぱーんっ
美樹の手前50センチでリキュスカは札をはたき落とし炎で焼いた。
「そう・・解ったわ・・・改心する気はありませんのね。
じゃあ貴方に贈りますわ・・恐怖のダンス(Danza Macabra)を」
高く低く切なく甘く・・・
異国の言葉が美しい旋律を紡ぎ、長い銀髪をたなびかせて歌うその姿は
芸術の女神そのものの様だが次第に滝山が苦悶の表情を浮かべ始めた。
「だめだ!!リキュスカ!!」
やっぱり魔力を解放するのが早かった・・・。
ヤツを殺したい気持ちは解るがもしもここでリキュスカが
禁忌を犯して滝山を殺せば極刑は免れられない。
「うぐ・・・」
みるみるうちに青ざめ口角から白い泡・・・
そして次第に血の泡を吹きだしだ。
周囲を圧倒する程の濃密な魔力がリキュスカの痩躯から溢れだしてきた。
「間に合わない・・・・これが・・・」
セイレーン王族の力。
圧倒的な強さ。
今まで抑えられていたエネルギーが一気に吹き出したのだろう。
京介やジムですら全身に鳥肌が立つのを止められない。
がたん。
滝山は前のめりに倒れ二度と動けない物体となった。
さよなら。滝山さん。
悪人結構好きです。




