ダリアの心意気①
10月4日色について少し修正しました!
産まれた時から私は可愛い
母親が外国人だからこその美しく可愛い顔立ち。顔というのは化粧や整形などでしか変えられない呪いのパーツ。
運のいい私は少し努力すれば…
「可愛い〜!」
「天才!」
「神に愛された子!」
ほら、完全完璧に可愛い子の完成!
顔だけが良いなら反感を買うかもしれない。でも、それをねじ伏せることが出来る圧倒的実力!周りが考える事は簡単。媚びを売る事のみ!天然を演じるのはナンセンス。すぐボロが出るから。演じるのならば、ゆるふわ!これ一択!
顔もいい。剣道も強い。勉強もできて、運動神経もそこそこ。
私は完璧。そう思ってたのに……
「GYAAAAAAs」
「いやぁぁぁ!」
「来るなぁぁぁ!」
「い、や、ちょっと待ちなさいよぉ!」
なんなんだ、コイツは!?
化け物じみたその姿。これは最近巷で話題の…
「か、かいじん…!」
「GYAAAAAAs」
怪人が近付いてくる。当然だ!もう周りに人は居ない。取り巻きたちはすぐ逃げた。女子はまだいい。あの子たちは確か文化部で、習い事も特にしてなかった。けれどあの男は確かサッカー部キャプテンだったはず。足の速さを活かして逃げやがった!
「GYAAAAAAs」
こうしてる間にもダリアの元へ怪人はやってくる。
どうする。足は挫いた。竹刀で立ち向かうか?いやダメだ。あの怪人、見るからに硬い。恐らく鉄の鎧!こちらが折れる上相手を刺激する!カバンを投げて時間を稼ぐ?目はこちらを既にロックオンしている!体を防ぐ盾を投げる訳には…!
「GYAAAAAAs」
「っあ…」
ダリアの目の前には怪人の顔。鼻息がかかるほど近い距離。何をしても無駄。ここで死ぬのだとダリアは悟る。せめて最後は…
「失せろゴミムシィィィ!」
ボキッ
タダでやられたくない。その一心でダリアは竹刀で切りかかる。だが相手は化け物。叶う訳もなく、相手に傷ひとつ付けずに、長年剣道をしてきた相棒の竹刀はあっけなく折れた。
「GYAAAAAA!!!」
「ッ!」
怪人は手を振り上げる。ダリアは目を瞑る。
キランッ!
バスッ
「GYAA……」
「…?」
音がした。何も無い。ダリアは目を開け前を見る。
「…はぁ?」
そこには光る赤い剣と、倒れ伏す鉄の怪人の首無し死体が転がっていた。怪人の体には赤いインクが着いており、インクは後ろにも続く。振り返れば怪人の首は自分よりはるか後ろにあり、剣が勢いよく切りつけた結果、飛んでったのだと分かった。剣道を嗜むダリアだからこそかろうじて剣だと分かる警棒のようなその剣先に、ダリアは困惑する。
「よっ、と。大丈夫かい?お嬢さん?」
「え、え、はい大丈夫で〜す!」
「…ふむ、このインクは君を選んだらしい。少し着いてきて貰おう。」
飛んできて軽々と着地した女性にダリアは驚くもすぐに猫を被り言うことを聞く。落ち着いてみえようとも困惑しているのだから、早く説明が欲しい。アーチャーが戦っている時、インクなどなかった。それはつまりこの剣が特別なのであって…
「…ここだ。」
「ほわぁぁ……」
着いたのは、隠れ家的カフェだった。
「いらっしゃいませ。」
「ああ、色よ永遠に。」
「…かしこまりました。」
「?」
ガガガ
「えっ」
カフェの店主が女性の言葉を聞き、なにかレジを操作すると店主の横の壁が開き、地下への階段が出てきた。
「さて、話はこの中でしよう。」
「まずは自己紹介を。私はこの地球のパラレルワールドから来た存在で、今は明日空と名乗っている」
「私は赤麻紀ダリアで……は?」
「む?」
「パ、パラレル!?何言ってんのあんた!?バカなわけ?」
「私は至極真面目だよ。まずは説明を聞いてくれ。」
私のいた世界では色に力が宿ることが常識だった。赤には情熱、青には信用、黄には希望、黒は闇、白には純粋、など。その力を研究し、平和を探求していたのが、私の所属する組織、ホワイトピース。平和を求めていた私たちに宇宙からの客が来た。平和を探求し惑星を渡り歩いていると言うその宇宙人を信じ、私たちは色について教えた。教えてしまった。
「テンプレな話?」
「正直そうだ。よくある話だな。」
その宇宙人は色をインクにし、力を人工的に蓄える技術を覚えた。宇宙人はその力を利用し地球を支配しようとしてきた。もちろん産まれた時から色に囲まれている私たち地球人に勝てる訳もなく、宇宙人を捉えることに成功した。が、平和ボケしていた私たちは宇宙人の悪巧みに気が付かなかった。
「勝ったのね…不穏だけど。まぁ大体予想できるな〜?」
「一応は語らせてくれ」
宇宙人は黒のインクと白のインクを探求し、インクを使うことで人を変化させる技術を身につけていた。人を化け物に変える力だ。平和を愛す私たちは化け物を殺せるわけなく、地球は侵略された。ホワイトピースはその技術で更なる侵略のために洗脳され、奴隷になった。
「え、あなた洗脳されてるの…?!」
「前まではな。」
私は化け物を研究し、さらなる力を得るために利用されていたが、うっかり白のインクに触れてしまい、純粋な気持ちで物事を考え、気付き、洗脳から解放された。そこから私は洗脳されてる振りを続け化け物を怪人と名付け、研究し、怪人が元に戻る方法が、現状ないと知った。せめて安らかにと思い、インクで作った武器。通称インクウェポンを作り出した。私はそういう才能があってと言うか、ありすぎてというか、自我を持ってしまったんだがな…
「え、じゃ、じゃあ、さっきの怪人は…」
「元人間だ…今も苦しんでいる。優しい人間なんだ。皆、人を傷付けたくないはずだからな。心苦しくも、戻す方法がない以上、殺すしかない。」
インクウェポンを作ったことで洗脳を解いたのがバレ、殺されそうになったものの、もしものために作っておいた物でこの世界にやってきた。その私を殺すため、パラレルワールドまでも支配するために怪人はこの世界にやってくる。私の作った装置を使って…な。
「はぁ!?なんで!」
「電源を切り忘れた。今もわんさか怪人が出てくる装置に私では近付けない。」
「インクウェポンは!」
「私には使えない。洗脳されてたとはいえ、宇宙人の組織にいた私が嫌なんだろう。」
「武器が自我持つと大変なのね…」
ガバッ
「えっ、ちょっ、なんで土下座!?」
「頼む、君は選ばれた。インクウェポンを使い、怪人を、人を殺して欲しい。」
「…そ、そんなの、アーチャーとかに頼めば…」
「こちらもアーチャーを探してはいるが見つからない。たとえ見つかっても、インクウェポンが気に入るか分からない。」
「アーチャーは既に怪人を何体も殺している。人と知った時、もしかしたら殺せなくなるかもしれない。アーチャーのおかげで助かっている命は多い。活動を辞めてもらう訳には行かないんだ!」
「頼む。君しかいないんだ…!」
「……分かった。相手が人でも、今は悪人。人でもないし、もしその宇宙人が来たら家族も…そうよね」
「ああ、もちろん。きっと君の家族も怪人にされる。」
「なら、協力してあげる。」
「!…ありがとう!」
「ところで、ゆるふわ系の猫かぶりはいいのか?」
「あっ、」




