始まり
深夜の住宅街。誰もが静かに寝ている時間。
「 GYAAAAAAs 」
人とは思えないその姿。手はカニのハサミを持ち、足は六つ。二階建ての家より少し小さいくらいの
その身長に機械じみたその声は、人では再現出来ないだろう。つまり化け物。怪人だ。
「なぁ〜ん」
猫の声。少し機械じみたその声は普通の猫ではないだろう。けれど気にするものは居ない。なんせ
人間は寝静まっているし、
怪人も、もう眉間が白い矢に貫かれ倒れふし、脈は止まっている。足先は灰へと変わっており、
風化している。この様子ならば、5時間後には
全身が灰へと変わり、風に吹かれて消えるだろう。
それを見届けた黒いマントは猫を連れて、
去って行った。
6年前。突如現れた怪人。周囲の人間はそれぞれ
腰を抜かしたり、逃げたり、叫んだり。
なんにせよ恐怖を持っていた。カメラを向ける
能天気は、怪人の壊した物の瓦礫に飛ばされ消えてしまった。
「助けて。」
その一言ですら出ないような状況。
「なぁ〜ん」
猫の声。少し機械じみたその声は普通の猫ではないだろう。けれど疑問を持つものは居ない。なぜなら
それよりも不思議なことが起こったから。
そう、怪人の眉間が白い矢で貫かれたから。怪人は動くのを辞め、倒れふした。
人間は巻き込まれなかった。しばしの沈黙。
「助かった!」「良かった!」「誰の矢だ!?」
「お母さん!怖かった」「助けてくれたのは誰?」
助かったことへの安堵。そして誰が助けたのか、
という疑問。そのふたつがあった。
その後も怪人は現れた。その度に白い矢は怪人の
眉間を貫いた。何度も何度も。
誰が打っているのか?それは分からない。
でも助けられたのは真実で、感謝している。
それは間違いなかった。
人間はそのヒーローを「アーチャー」と呼んだ。
怪人が現れて3年後。
政府公認ヒーロー「カラーヒーローズ」
通称COLORSが現れた。
ジャス・レッド ふわふわ系女子。剣使い
ジャス・ブルー 理系女子。 銃使い
ジャス・イエロー 上京系女子。斧使い
人間は派手な戦闘を。姿は可愛く、そして優しい
そんな創作みたいなものを求めていた。
その上、「アーチャー」はCOLORSが出てくると
あまり動かなくなった。
「もう、アーチャーいらないんじゃない?」
SNSで呟かれたその言葉で、爆発した。
いつしか人間は3年間、たった1人で国を守っていた
「アーチャー」をCOLORSの活躍の場を奪う邪魔者としてしか考えていなかった。「アーチャー」が
いなければ国民は政府に3年放置され、町は怪人が溢れ、人間は大半が死んでいた、いや国は
滅亡していたかもしれないのに。休暇を与えよう
などは思わなかったのだ。
「ふふっ」
その状況を見て笑うのは「アーチャー」
なぜ笑うのか、その答えは簡単。
「アハハ、アーッハッハッハッ!」
「あー、おっかしい!」
「求めてるものがあると簡単に意見を変えて、
その上たかだか1人の意見聞いただけで皆同じ
思考!?本当に物事考える脳あるのかしら?
あの人たちとまるでおなじ。大人って本当に
おっかしい!」
「でも感謝するわ。これでダークヒーロー路線
行けるわね。やっとしたいことが出来る!」
「アーチャー」はヒーローはヒーローでも、
ダークヒーローになりたかった。だから、わざと
怪人を倒して回った。いつか政府公認ヒーローが
現れたその時に、当たり前を崩すため。たったそれだけで「アーチャー」を批判するもんだから、
上手く行きすぎて笑っていたのだ。
「さて、あとはやりたい放題するだけよ。」
「ああ、楽しみ。あの人たちはアタシが
アーチャーだと知ったら、どんな表情を
するのかしら?ああ!これから忙しくなるわよ」
「なぁ〜ん」
「あんたにも手伝ってもらうわ。よろしくね。ミケ」
とあるマンションの一室。少年はその部屋にいた。
なかなか直せないもので、口調は女性だけれど、
れっきとしたダークヒーローの卵。アーチャーは、
白猫は、確かにその部屋にいた。
私飽きやすいので完結しないかもですが、
気長にお待ちくださいませ。