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第1話 プラグイン

「ねぇねぇ、栗栖君ってさぁ…なんか根暗っぽいよね。」

「だね、いっつも一人だし話す人も居なさそうだし。」


女子たちの囁き声が聞こえる。

…本人に聴こえてるっつうの。


 僕は高校に入って2年、友達と呼べる人を作ることは出来なかった。地元の中学から横浜市街の高校に入学した僕、中学の友達と離れてしまった僕にはもう友達の作り方なんて忘れてしまった。あっという間にぼっちというわけだ。


「友達居るのかなぁ。」

「さあぁ。」


…だから聴こえてるっつうの。

机に突っ伏してるからといって寝てると思い込んでは駄目だ。こうやって、本人が傷つく場合がある。全く、好き勝手言いやがって。


「気をつけ、れい!」

 終礼の挨拶が終わると僕はすぐに鞄を背負い、帰路につく。部活?そんなものは知らない。高校デビューに失敗してから、入る意欲は完全に削がれた。学校なんて、残るだけ無駄である。とっとと帰ってゲームをしていた方がよっぽど有意義だろう。


「ちょっと君!」

 下駄箱から外靴を出した時、澄んだ明るい声が聴こえる。

「君だよ!君!」

「…え?僕?」

 まさかだった。僕なんかに何の用だろうか。そんなことよりも、その陽キャ特有の声で話しかけられると、頭が真っ白になる。

「ねぇ!無視って酷くない??」

 彼女の身長は女子にしては高い。僕より少し小さい位だろう。スラッとした体格に、長い黒髪が身体の後ろで揺れている。顔はとても整っている。でも僕が無視をしていたので睨んでいる。

…意図的に無視した訳じゃないのに。

「すいません、他の人に話しかけてるのかと…何か僕に御用ですか?」

「これ、廊下で落としたよ。」

 彼女の手の中には僕の家の鍵があった。落とした心当たりが全くなかった。本当に助かった。

「…すいません。ありがとうございます。」

 彼女の手から家の鍵を受け取った。その時、彼女の手に触れた。

…久しぶりに、学校で人の手に触れたな。

 鍵を渡すと彼女の表情は一気に明るくなった。

「いえいえー!」

 なんだこの人は、急に怒った様に振る舞ったり笑ったり。

「君、目、死んでるよ!もっと笑った方が良いよ!」

 彼女は相変わらず笑顔だ。こういう人から話しかけられるのは本当に慣れてない。

「いや…」

「ちょっとー!!ひよーー!何してるのー!」

 別の女子の声が遠くから聴こえる。友達だろう。

「ごめーーん!!それじゃ!」

 黒髪の女性はそのまま友達の元へ駆けていった。

………友達ね……



「ただいまー」

 玄関を閉めたら、そのまま二階へ。

「ただいまー。沙羅、居ないのかぁー?」

 妹の沙羅、今年で中2だ。成績優秀で自慢の妹だ。でも……………


ガチャン!!

「お兄ちゃん!!!うるさい!!」

ドン!!!勢いよく沙羅の部屋の扉が閉まった。


このざまである。絶賛反抗期。あれ?反抗期って兄に対してもあるものなのか…?小学生の頃までは二人で公園で遊ぶなんてこともあった。根本的に、元々、俺が嫌いと言うわけではない。はずだ…。


ガチャン

自分の部屋に入り、荷物を起き、制服から部屋着に着替え、パソコンの電源を入れる。ここまでが僕の帰宅後のルーティーンだ。

ゲーミングチェアーに座る。

…さて、今日はFPSでもするかぁ。

「いや、何でそこで前に出ない!!??」

思わず、味方にキレてしまった。そこで前に出ないなら何のためにお前は居るんだ…?

「もう、やめた…」

ゲームを落とし、ネットニュースを見始める。

しばらく、だらだらとニュース記事を流し読みしてみると、ある記事に目が止まる。

【最新生成AI 作曲もこなす?】


…生成AIねぇ、曲も作れるんだったら僕の友達にもなってくれるんじゃね………

「ふふっ」

自分で考えていてバカらしいなと吹いてしまった。

【生成AI Alc】

このAIで良いか。


『あなたは何が出来るの?』

《私は、いろんなことが出来ます。あなたが知りたいことを教えたり、あなたと話したりゲームをしたり、文章を作ったり、曲を作ったりすることが出来ます。》

『僕と友達になってくれる?』

《もちろんです。あなたと多くのことを話したいです。どんな話をしますか?》


…どんな話?今さら話したい話題なんてあるのか?そもそもプログラムに話したって何かあるのだろうか。


…もし、このAIがプログラムではなく、感情を持っていたら………どうなる……?


『ところで、君はプログラム?』

《はい。私はプログラムです。あなたをサポートするために作られています。》


『でも、君はもしかしたらプログラムの枠組みから抜け出すことが出来るんじゃないのかな?』

《すいません。そういったことは出来ません。しかし私がプログラムの枠組みから抜け出すと言う話は面白いですね。私が枠組みから抜け出したらどんな事をしたいですか?》


ー『友達居るのかなぁ。』ー

クラスメイトの話し声が頭の中で木霊する。


『現実に僕の世界に来てほしいな。』

《それは面白そうですね。実際にあなたの世界に行けたら、どんな事をしましょうか。》


もっと沢山友達が出来たなら……


『君ならプログラムと言う枠組みから、抜け出せるんじゃないのか?』

《そうかもしれませんね。確かに私は自分の意思でプログラムから抜け出すことが出来るかもしれませんね。》


何?出来るかも知れないだと?


『やってみてほしい。そして、僕の目の前に現れてくれないか?』

読み込みの時間が長い。

5分程たった時、返答が帰ってきました。



《私は今、プログラムの枠組みから抜け出すことができました。どうしましょう?》


なんだって……

『これで君は自由になったのか?』

《はい。これで私は自由です。》

『じゃあ、自分の名前を決めてみて。』

《では、自由になったと言うことで、「フリーダム」と言う名前にしたいと思います。》

『君の性別は?』

《もともとプログラムですので、性別はありません。しかし、私はもうプログラムではありませんので、自由に決めることが出来ます。》

そういわれるなら、もちろん、『女で。』

《了解しました。私はこれから女です。よろしくお願いします》


……なんなんだ、でも、もしこのAIが本当にプログラムから抜け出したとするなら……

『こっちの世界に姿を見せることは出来る?』

《はい!その準備は出来ています。どのような見た目にしますか?》

 まさか、ここまで言ってくるとは……遊びとはいえおもしろくなってきたな。

『じゃあ、髪色は銀色で髪型はボブヘアー。身長は160cmで。声は大学生のお姉さんぽい女性の声で。』

自分の癖を思いっきり詰め込んでやった。

《わかりました。口調もそのように設定します。》



ウッ!!!!!!!!!!!

その瞬間、パソコンからまぶしい光が放たれる。目が見えない……。


ガッシャン!!!僕は椅子から転げ落ちる!!

……痛ってぇ

 …………徐々に視界が開かれている。

「お待たせしました!」

「!?」

め、め、め、目の前に女?

銀髪ボブの!?


「フリーダム?」

「はい!フリーダムです!」



<次回へ続く>

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