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同意のある性行為をした男と再会②

 山崎に靴を脱ぐように命じられたせいで足元が冷える。デニール数の低いスパッツを履いているせいで、もれなく足先全体が寒い。靴下を履いている奥村一葉が羨ましい。


 四谷6階の会議室は日当たりが悪く、机と椅子しかない無機質な会議室は、より陰鬱とした雰囲気を漂わせている。


 スーツを着ていた山崎はネクタイを緩め、胸ポケットから紙切れをとりだした。



 「ふー…はい。じゃあまず奥村くんにご褒美としてコレ。戸田コオリの住所」と言って山崎は奥村一葉に住所が書かれたメモを渡した。


 奥村一葉はメモに一瞬目を落としてから

「ありがとう…これで戸田コオリに復讐できるよ…」と満足そうな顔で言った。


 「ねぇ…奥村さん…待って…。本当になんで貴方は山崎くんを信用してるの?なんで…コオリは関係ないでしょ?」


 「いや山崎さんを信用しているわけではない。だけどアカリのことも信じているわけではないんだ」と奥村一葉は目を細めて言った。


 「山崎さん…スマホを使わせてください」と奥村一葉は言った。


 「あぁ…あの写真のことかな?勿論いいよ」と言って山崎は奥村の鞄からスマホを渡した。


 奥村は険しい顔でスマホを操作した。エクスペリアを使っているのに少し驚いた。


 「星浦さん…これを見てください」と言って私にスマホを差し出した。


 私はスマホの画面を見るやいなや胸がドキンと大きく打った。





 「コ…コオリ!?え…コオリとアカネが会って…えこれいつの写真?このお店って?」


 奥村が見せた写真には隠し撮りのようなアングルで撮られた女性2人が喫茶店でお茶をしている姿が映し出されていた。


 正面に見えるのはアカリだ。確かに私と会った時の服装…同じ席。アカリは私に会う前にこの店に来ていたのか。そしてアカリの目の前にいるのは、全身黒い服にキャップを被った女。


 口元でわかった。彼女の口元はマリリンモンロー。ほくろがあって初めてその美しさは完成される。


 コオリだ。戸田コオリがこの東京にアカリの前に姿を現した。



 

 疑問が確信に変わった瞬間、私の中にあった眠っていた何かが突然起こされた。まだ寝ぼけてはいるけど。



 「アカリが自殺する前日、君とアカリが喫茶店であった同日、戸田コオリとアカリは会っていたんです」


  「そんな…なんで。2人が?」


 「次にこれを見てください」と言って奥村は画面を右にスワイプした。そこに映し出されたのはLINEのやり取りのスクリーンショットだった。


 左上の名前に“氷”と書かれていた。コオリだ。


 「これはコオリと誰のやり取りですか?」   


 「アカリだよ。アカリが亡くなった後にスマホを色々と見させてもらったんだ」


 コオリとアカリのトークに会話はなく、コオリが1枚写真を送っているだけだった。



 そしてその写真は…アカリがSNSで公開した

“海外アダルトサイトのサムネイル”だった。


スクショだから画質は悪いが、多分アカリだ。正常位で半目で裸で性行為をしているアカリだ。


 それよりも、どうしてコオリがこの写真をLINEでアカリに送っていたんだろうか。


 「君の疑問を解決させてあげるよ。そのサムネは戸田コオリが作ったフェイク写真だ。何故ならこのアダルトサイトは日本からじゃ閲覧できない。それに君も分かるだろ?コオリが所属していた学科は…?」と山崎は右手をマイクを持っているよう形にして私に向けてきた。


「…先端技術応用学科。AI技術を主に学ぶ学科だ」



「ピンポン。つまりね…僕の推理を披露させてもろう。僕があの告発動画を出して、それを見た戸田コオリは風早アカリに接触。きっとこう言ったんだろう『山崎に一矢報いらない?』って、それを間に受けたアカリが俺を告発して自殺…」



「それでも…あなたがコオリとアカリをレイプした事実を否定することにはならないでしょ」と私はイライラしながら言った。話が見えないし長い。



「違う…」と終始ニコニコしていた山崎の顔が崩れた。


 「認めるよ。アカリには睡眠薬を飲ませて性行為をした。でも後に同意があったと彼女は認めてくれた。コオリが逮捕された時、アカリも君同様にそう警察に証言した」


 山崎のその言葉を聞いた瞬間、胃の下と耳の中が熱くなった。


「でも戸田コオリは違う…。アイツは違う。アイツは飲みに行った…?」


「アイツは俺を親父を失墜させるために、わざと薬を飲まされて、わざと性行為をされに行ったんだ!!!」


 山崎は顔を赤くして捲し立てるように言った。山崎のそんな取り乱した様子を初めて見た私は胸がとても高揚した。


 山崎の話が本当だとしたら戸田コオリはなんという化け物なんだろうか。アカリのために…今後産まれるはずだった被害者のために自分から被害にあいにいった。



 2年ぶりに私の止まった時計の針が動き出した。山崎に言われなくても私は戸田コオリに会いに行く。会って話をしにいくんだ。



 札幌で産まれた彼女の白い肌と微笑んだ口元を思い出しながらそう誓った。



札幌出身?睡眠薬飲まされに行った?どこかで見覚えが

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