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星浦メルの傷口

 



 「夜遅くまでご苦労様です〜。刑事の鷹岡さん呼んでもらえますか〜?『一葉が来た』と伝えていただければ分かると思います」


 奥村一葉は気だるげな態度で、警察署の立番に声をかけ署内に入って行った。


 「さぁ…星浦さん、ちょっとこちらの受付ソファで待っていてくださいね〜」と奥村はソファを指さした。


 「あぁ…はい」と私は言ってソファに座った。そして奥村も私の隣に座った。あ、貴方も座るんだ。


 「奥村さんなんで警察?」


 「盗聴と逃亡防止」と奥村は即答した。



 「ねぇ星浦さん…どうして俺が」 と奥村が言いかけたところに『おーい奥村ぁ』と廊下の奥から男の声がした。


 奥村は「やっほー」と言ってソファから立ち上がり廊下の奥の暗闇へと歩いて行った。


 廊下の奥から談笑する声が聞こえて、2〜3分後に奥村だけ戻ってきた。


 「さっきの刑事さんは知り合い?」


 「そうそう〜。元々公安で一緒だった〜」


 あぁ…やっぱり奥村一葉は公安の人間なのか。声に出したかったがやめた。もう疲れているから余計な会話をしたくない。


 「さて3階の部屋で話しましょうか」と奥村は言ってエレベーターのボタンを押した。


 「奥村さん今から私達何するんでしたっけ?」


 「あぁ…えーとお互いの手の内を明かして、戸田コオリをどうするか話し合いましょう的な…」


 なんか凄いフワフワな返答が来た。それもそのはず。今は深夜2時半、昼からドタバタ動いている私達はもう脳も体も限界を迎えていた。



 奥村に案内された部屋は殺風景な取調室だった。


 「私、犯罪か何かしました?」


 「いやー警察署って殺風景じゃない部屋ないんだよね」と言って奥村は奥側のパイプ椅子を引いた。


 「星浦さん、どうぞこちらに〜」


 「あぁはい…」

 私は取調室奥側の席に座った。パイプ椅子がギシッと音を立てた。


 グレーの机を挟んで、奥村のパイプ椅子に座った。


 「えー星浦さんいつから俺が警察だって気づいたのー?」と奥村は手を組んで聞いてきた。


 「いや警察に関しては勘です。まずアカリとあなたの写真、あれ合成でよね。爪が甘い。アカリ左利きなのに右手でラーメン啜っていました」


 「あぁなるほど。もう早い段階でバレていたんですね…時間なかったんだよ。あれ1日半で作ったんだよ褒めて〜」


 コイツ…素でも相当ちょけている。合成の技術は奥村が印刷会社の開発職という点で納得がいく。


「…それよりも、奥村さん“コオリへの執着が異常”でした。コオリの話をする時、コオリの家を突入した時、全部顔に出てました」


 そうあれは…


 「好きな人に対してする顔でしたよ。好きなのコオリのこと?」


 まさか…会って1日目の人と恋バナをするなんて思いもしなかった。しかも警察の恋バナ。


 「…」


 「ちょっと奥村さん??」


 奥村は黙って俯いていた。


 「少し失礼…」と言って奥村は立ち上がり、部屋から出ていった。あらあら耳真っ赤にしちゃって。奥村のやつ自覚なかったんだな。まぁそりゃそうだ。女将さんの話だと、コオリと奥村が初めて出会ったのは、コオリが16で奥村は20後半。犯罪、犯罪。成人が未成年に欲情するのは犯罪です。私は頬杖をつきながら奥村が帰ってくるのを待った。


 自分が捕まえた未成年の女が再び罪を犯そうとしているのであれば、必死になってそれを止めにいくだろう。


「お待たせしたね…」と言って奥村は戻ってきた。顔の火照りは治ったようだ。


 取調室の暖房がどんどん暖かくなってきたのか。私は袖口に隠していた手を出した。



 「奥村さん話を整理させてください。あなたは戸田コオリが再び山崎に接触するのを恐れて、アカリの彼氏と偽って山崎に近づいた」


 「えぇ」


 「あなたも警察という組織の1人。まさか完全にプライベートでコオリを追っている訳ではないですよね」


 「もちろん。あぁでも詳しくは話せないですよ。まぁ戸田コオリが所属していた美人局組織、あれ主犯捕まってないし、バックは某大国だから公安が動いているんですよ…」


 「なるほど…」


 「でもよく山崎に接触できましたね?」


 そう、アカリが自殺した後、公安の奥村は即座に山崎にアカリの彼氏と偽って近づきアポイントを取った。


 「ははは…まぁそんなの楽勝です。敵が多くて味方が少ない人ほどチョロいです。『アカリの彼氏』『あの事件は冤罪』の二文で釣れたよ」



 「ふーん…」



 「奥村さん」


 「なんですか?」


 「随分、ペラペラ話してくれるんですね。」


 「まぁ…ね。俺たち1日戦友ですから」と言って奥村はハッハッハと笑った。何だろう。警察のこの男から言われると腹が立つ。


 「何か企んでいるでしょ?」


 「あら〜バレました?」


 「早く教えて。もう私眠いんです」


 最後に時計を見た時、夜中の3時だった。おそらく今は朝の4時ごろだろう。



 奥村は大きく息を吸って、1分ほど黙ってから私の方を見た。




 「君さ星浦さん…あなたが性被害に遭っても戦えなくなったのはさ…」



 睡魔によって落ちていた心拍がドンと大きく打ったのをキッカケに急速に早まった。


 「な…何の話ですか?」

 しらばっくれても無駄だ。コイツは警察だ。バレている。



 「いや…すみません。この話は良いです。あなたも山崎シンスケからレイプされていますよね。すみません辛いと思いますが、あなたには戦っていただきたい」


そう言って山崎は膝に手をつき私に向かって頭を下げた。

 


ポイント入れたくれた方、ブクマつけてくれた方ありがとうございます〜。数字の変化がやりがいですー。

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