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奥村一葉の仮面①

今回は短いよ!

 「あなた警察でしょ?奥村一葉さん」



 私はそう言って奥村の顔をまっすぐ見つめた。


 奥村は私のコートの襟元を掴み、私は奥村の右腕を掴んでいる。客観的にみたら男女の痴情のもつれにしか見えないだろう。でもここは歓楽街すすきの。私たちのことなんて誰も気にしていない。


 「えぇ俺が警察!?あり得ない。疑うなら昼に渡した名刺に電話しても構わない。てかなんなら俺が目の前でかけましょうか?」と奥村は茶化すように言った。


 「今、印刷会社に勤めているのは本当でしょうね。でもそれは警察の仕事のためでしょ?」


 「えぇ星浦さんどうしたんですか?急にコナンくんみたいになって…」



 「もう疲れた。いいよ奥村さん。別に正体を突きとめたいわけじゃないの。私はもう面倒くさいことには巻き込まれたくない。コオリ探しはここで降ろさせてもらう」


 私はそう言って掴んでいた奥村の腕を離した。だが、奥村は私の襟元から手を離さなかった。


 「離してください」


 「いいの?君が戸田コオリの代わりに、ハニトラして警察に行った阿婆擦れ女って世間から認識されるよ?」


 奥村は口を動かさず腹話術のように言った。寒さで口が痺れて動かしづらいのだろう。


 「別にもういい!それで!私がハニトラしたことでもういい。もう、行動するのはコリゴリなの。第三者は病院行け!警察行け!…戦えってすぐ言うけどね!それがどんなに大変なことか分かっていない!ニュース見たら分かるでしょ?性被害を告発した女が世間からどう追い込まれていくのか!!」


 「…っ」

 奥村は何か言おうと思ったが黙り込んだ。思い当たる節があったのだろう。


 「いいよ!山崎が世間に私が犯人だと嘘告発する前に、私が全部喋って自殺するから!!アカリみたいにね!!」


 そう言って怪我をした奥村の左手を思いっきり掴み、襟元にかけていた力が抜けた隙に奥村から逃げ出した。


 私は秋の汚いすすきの 町を駆け抜けた。5分ほど走って振り返ったが奥村はついてきてなかった。手を上げてタクシーを捕まえた。車内に入り込み近くのラブホに泊まろうとスマホの電源入れた時、閉まっていたタクシーのドアが開いた。


 男が急に車に乗り込んできた。


 「えっ?」


 「運転手さん、すみませーん。近くの警察署までお願いします」


 奥村一葉だった。顔は真っ赤で息は切れている。奥村も走って私を探したのだろう。でも…


 「どうやって…」



 「もう全部話すから…君にはコオリに会ってもらわなきゃ困るんだ」


 そう言った奥村一葉の顔は、とっても弱々しく疲れ切っていた。そうだ。今日私と彼は一緒に行動を共にしてきた。山崎に会い、飛行機で北海道に行き、ボクサーに襲われ、寿司を食べ、包丁を突きつけられ、夜のすすきの を走り回った。


 彼とは1日戦友だ。目を瞑り眠りに落ちるまでは…今日一日が終わるまでは彼と戦友でいてあげよう。そう思いながら、夜のすすきの 街を眺めた。


 


ポイントもブクマも嬉しいです!嬉しいので今日投稿する予定なかったんですが描いちゃいました!

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