冤罪で苦しんだ男①
電車を降りて札幌駅に到着した。私たちは観光もせずすぐに地下鉄に乗り換えた。奥村は羽田空港で買ったマフラーを私に渡した。
地下鉄に乗って4駅目で降りた。もうコオリの家はすぐだ。
夜の銀杏並木を奥村と2人で歩いた。18時50分の平日、人々は家路に急ぐ頃だ。
銀杏の落ち葉を踏みしめながらコオリを思い浮かべた。
「最初は星浦さんだけで行ってください」
「え?」
「僕は近くでその会話を聞いています」と奥村は言って私の黒いコートにカメラ搭載のヘアピンつけた。
「コオリがハニトラをしたと認めたら殺すんですか?」
「そうだね…殺してお寿司食べて自首かなぁ」と奥村は笑った。
「もう一度聞くけどさ、奥村さんはなんでコオリを殺したいんだっけ?」
私は奥村の顔を見ずに胸元のヘアピンをいじりながら聞いた。
「だからアカリを自殺に追い込んだからだよ。彼女がアカリに告発しようなんてそそのかさなかったら、アカリは死ぬことがなかった…。それに人を貶めるためにハニトラなんて最低だ」
そう言って奥村はイヤホンをつけた。
「ここだ。このアパートの203号室だ。」
コオリが住んでいる家は4階建ての白いアパートだった。築年数も4〜5年だろう。女性が一人暮らしするにはうってつけの物件だと思った。
「じゃあら星浦さん…僕は下のエントランスで待機しているからね。幸運を祈るよ」そう言って奥村一葉と別れた。
私はコンクリートでできた階段を一段一段わざと音を出しながら登った。よく分からないけど気持ちが高揚しているのは間違いなかった。
* 山崎にハニトラをしたのか?
* アカリに山崎に仕返しするように促したのか?
私がコオリに聞かなければいけないのはこの2つだ。いや3つか…。あと1つは…。
コオリの部屋のドアの前203号室に着いた瞬間だった。
「お前が戸田コオリだな?」と後ろから声をかけられた。声の主は男。どこか聞き覚えのある声だった。とってもとっても苛立ちと怒気のこもった声だった。
違います…と言おうと振り返った瞬間に拳が自分の目の前に来ていた。
「え…」
ドオオォンという音が鳴った。私が次に目を開けた時には視界が灰色になっていた。これは床のコンクリートの色だ。そしてポタポタと水滴が床に黒いシミを作る。黒い…いや、赤黒い。血だ。殴られたのか。床に這いつくばる私は必死で呼吸をして息を整えた。
「お前のような女がいるから、冤罪は産まれて男が苦しい思いをすんだ!!」と耳がキンキンと痛くなるような大声で叫ばれた。
私は顔を上げて男の顔を見ようとした時には、またすでに時遅し。男のカカト落としがもう決まる直前だった。
…私がコオリに聞かなきゃいけない3つのこと。1つは何故山崎にハニトラをしたのか。2つ目は何故アカリに会ってあんな画像を渡したのか、そして3つ目は…。
「あららら…星浦さん大丈夫ですか?」
駆けつけた奥村一葉は、男の渾身のカカト落としを涼しい顔で受け止めた。それでも確実に奥村の左手の指の骨たちは砕けた。
ねぇ…コオリ…あなた奥村さんとどういう関係なの?
扉の先にいる戸田コオリに私は語りかけた。
湯船からの投稿
なんだか前作の未来読んでくれている人多くて嬉しい。




