ソニア
あらすじ
ソニアが盗賊に刺されそう。
「ひゃっはぁ!」
気がつくとわたしが倒したはずの男が急接近していた。
慌てて剣で受け止めたが…
「な!?」
剣が弾き飛ばされてしまい、わたしもバランスを崩して転倒してしまった。
「おめーら冒険者のせいでよぉ仲間がどんどん検挙されてんだ。仇、打たせてもらうぜ」
クソ!クソ!クソ!体が動かない!
動け!わたし!
「ソニアぁ!」
こんなところで期待にも応えられずにわたしは___
ヴォイドヴァーン家はスティラの最南端にある「霊峰ヤタテ」の麓の街の代々続く領主の一族だ。
商才で成り上がってきたので、他の貴族には何かとバカにされることが多かった。
「臆病者」「意気地無し」「運が良かっただけ」
そう言われるのにみんなは慣れていた。
でもわたしは違った。
見返してやる。誰よりも、何よりも強くなって。
5さいの頃から毎晩寝室を抜け出して剣を振るようになった。
最初は持つことすら出来なかった剣も2年もすると自分の身体の一部のように扱うことができるようになった。
10さいの頃、麓の街でわたしに勝てる人はいなくなった。
天才だの神童だのみんなから浴びる賞賛の言葉は素直にうれしかった。
いつからだろう。
その賞賛に応えるのが義務だと思い始めたのは。
みんなからの羨望の眼差しが重圧になっていったのは。
街を離れても、彼らの声は途切れなくて___
「肩の力、入りすぎてんぞ」
刃はいつまでたってもわたしに届くことはなかった。
彼が、ダイゴがわたしの前に立っていた。
彼にはナイフが深々と突き刺さっている。
「なんだテメェ!?」
「うるせー、よ、俺の、荷物かえせ」
なんで。
なんで!
「なんで!?」
「なんで、って、そりゃ、」
彼は一文字一文字を噛み締めながら当たり前のように言う。
「目の前で人が死んだら、気分が悪いだろ」
やばい。かっこつけたはいいものの普通に死にそう。
目の前がチカチカする。
ずるっと。
土手っ腹からナイフが引き抜ける感触がした。
次が来る。
「死ねやぁ!」
ならば、見せよう。
ディルデデンダント家に伝わる奥義。
おれはアッパーを打つ構えをめちゃくちゃ誇張したような構えをした。
喰らえ。
「ディルデデンダント奥義『鼻フック』ぅぅぅ!」
指が完全に鼻の穴を捉えた。
「ぐう!?」
さらに。
「『ファイヤーフィンガー』」
「アヅゥ!?」
鼻の中で例のカスみたいな火を灯してやった。
あまりの痛さにか、ヤツは気絶した。ざまーみろ。
だがおれも限界、だ…
「…ゴ!…イゴ!ダイゴ!」
気づいたらソニアがおれを呼んでいた。
「そに、あ」
「気がついたのね!今薬草を…」
「いい、よ」
「え?」
たぶん確定でこれは死ぬ。
前世で同じ死に方をしたからよくわかる。
皮肉なものだ。
だけど、完全に息が止まる前にこれだけは、彼女に伝えたい。
「きみ、は、何をそんなに、重荷に感じて、いるんだ?」
「それは…」
彼女が口ごもる。
「きみの、人生は、きみのものだ」
そうだ。きみのことはきみが決めていい。
死ぬ前にそれだけは伝えたかった。
「___もっとエンジョイしようぜ、この世界」
「っ…!」
あ、ヤバ、もう無理。
意識が黒くなっていった___
「んあ」
目が覚めた。
来世かな?
「ダイゴぉぉぉぉぉぉ!!!」
「うおっ」
ソニアが抱きついてきた。
ソニア!?
おれ死んだんじゃ…
「あなた、不死鳥の加護持ってるなら言いなさいよ!」
「フシチョウ?カゴ?」
なんでもおれが親父にもらったアロマスティックもどき。
本当に不死鳥の体液が入っていたっぽい。
不死鳥の体液を浴びたものは一回に限り致命的な怪我を負っても全回復するらしい。
最初に襲われた時に浴びたっぽい。
しかし、復活する時のエフェクト的な炎で服が全部燃えた。
クソが。
見てくださってありがとうございます!