地の底へ
あらすじ
キシリカの過去を聞いた。
「ではぶりーふぃんぐといこうかの」
場所は第三坑道。
ある日炭鉱夫の1人が行方不明との報告を受け、捜索したところ魔物の群れを発見。
最終的な死者、行方不明者は20人に上る。
第三坑道はオー=カワラの主要な坑道のひとつであるため速やかな奪還を頼みたい。
「…とのことだが」
「買い物とか枕投げ大会してたわたし達がバカみたいじゃない!」
ホントそう。
街の人が苦しんでる中何をしてるんだおれら。サイコパスみたいじゃん。
「説明しなかったわしも悪かったやもしれんのぅ…」
「引きずってでも連れてきなさいよ!」
「だって、若者らしく遊ぶことも大事かなーって」
「変なとこで気を遣うな!」
それは置いといて。
「魔物が急に湧いたことから恐らくじゃが坑道のどこかしらが巣穴と繋がってしまったのじゃろう」
「そいつらをどうすんの?全員倒すの?」
だったらかなりキツそうだ…
「さすがにそれではキリがない。なのでこれを使う」
キシリカが何かを取りだした。
「お札?」
「わしの戦友の魔法が込められた呪符じゃ。これはの、物の耐久性を上げる魔法が込められている」
結構バリエーション豊かなんだなこの世界の魔法は。
「これを使って巣穴の入口を埋め立てる」
「頼んだよ」
いつの間にか昨日見たムキムキの女の人が立っていた。
「あぁ、任せておけ」
おれ達は暗い坑道へと入っていった。
「あいつはな、今回の件で夫を亡くしている」
「えっ…」
暗い道を進みながらキシリカが言った。
「あいつの夫が魔物の発見者でな、他の人を逃がそうと残ったそうなんじゃ」
3人の間に重たい空気が流れる。
「…なら絶対閉じねぇと。これ以上死人を出しちゃいけない」
「いい心がけじゃ」
うんうんとキシリカが頷く。
その時、ぴたりとキシリカがとまり、くんくんと臭いを嗅ぐような動作をしだした。
「これはまずいかもな…」
「どうしたの?」
「空気が澱んどる。これは…ガスか?」
そういえば炭鉱などはメタンガスが発生することがあるそうだがそれだろうか。
「これは通常発生するガスではないの。魔物由来のものか…?」
「1人でブツブツ言ってないで教えてくれよ」
「お前火を出してみろ」
お易い御用とばかりにおれは火を出した。
「あら?火がいつもより大きくないかしら」
言われてみれば火がかなりデカくなっている気がする。これが成長というやつかな?
「なるほどぉ!」
急に大きな声出すなよ。びっくりしちゃうだろ。
「結論から言うとな、お前魔法使うな」
「へ?」
今絶賛調子いいのに?
「可燃性ガスやもしれぬ。使わない方がいい。それと」
キシリカが手を振った。
…?急に空気がキレイになったような…
「窒息する可能性もあるでな。空気で即席のがすますくを作らせてもらった」
「器用ねぇ…」
おれが魔法使えないとなるとお荷物になっちゃうじゃん。
「おれはどうすれば…」
「今回は見学じゃな。ガハハ」
ガハハじゃねぇよ。
「___来るぞ」
次の瞬間、キシリカの雰囲気が変わり少々物騒な空気になった。
…?坑道の奥から…なんだ…?
「『破壊する掌』」
グチャッという嫌な音と共に襲撃者は動かなくなった。
辺りに錆臭い臭いが立ち込める。
「これが件の魔物ね」
体長は2mほど。
身体には黒い鱗がびっしりとついている。
確かにキシリカが言っていた通り大きなトカゲといったような感じだ。
「まだだ!」
奥から新手が3匹出てきた。
ガキンッ!
「ッ〜!こいつらアホみたいに硬いわよ!?」
「鱗の流れに沿って斬るのじゃ!」
キシリカが2匹の頭を潰しながら言った。
「なるほど、ねっ!」
ソニアがトカゲの身体を引き裂き、誇らしげに言ってみせる。
「確かにこっちのが斬りやすいわ」
「よし!先に進もう!」
「なんもしてなかった奴は仕切っちゃダメよ」
…
奥に進むに連れて魔物の数は増えていった。
「長い!なんもしてないのに疲れる!」
「魔法使いは身体が資本じゃあ。その体たらく、鍛え直す必要があるな」
終わった。
「あっ!あれ!」
開けた場所にある穴にソニアが気づいた。ここが巣穴に通じる穴らしい。
…?でもトカゲ共に比べて穴が何倍もでかいような…
____グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!
「うわっ!?」
獣の叫び声が地下に反響し、坑道全体が揺れる。
その唸り声は、昔見た怪獣映画からリアルに怪獣が出てきたような、そんな錯覚さえさせられる。
「親玉じゃ!」
のそりと、そいつが黒い目を怪しく光らせながら這い出てきた。
体長は20mはあるだろうか。途中で戦った奴らとはスケールが全く違う。
鱗は荒々しく発達し、爪や牙も通常種よりも鋭い。
その姿はもはやドラゴン!!
「こんな奴倒せるの!?」
「こいつを倒さなければ地上に上がって来るかもしれん!」
さあ、どうする?
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