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モノローグ・ジュノ1

 俺はジュノという。


 レスタという町でしがない冒険者家業をやって細々と暮らしている。


 俺には変わった友人がいる。そいつの名前をケイゴという。


 何故か放って置けなくて、最初の頃は色々世話をやいたものだが、最近では逆に色々世話になったりもしている。


 奴はレスタの町と強いモンスターが生息する森との間に住んでおり、狩の休憩に結構な頻度で立ち寄らせてもらっている。


 奴は器用で、料理も上手いし、ポーション作成、武器防具のメンテナンスもできる。


 俺の町の貴族がケイゴに迷惑をかけた。本当に申し訳ない。


 あいつは本来であれば町の住民ではないので、貴族に命令される立場にないはずなのだが、あの貴族に理屈は通用しない。


 ケイゴは言葉は通じなくても、道理は理解できる男だ。上手く貴族に睨まれることを回避したようで、俺も一安心だ。



 レスタでは武器屋のマルゴというオッサン、商人のサラサと仲良くさせてもらっている。


 サラサとは、俺が泊まっている宿屋を切り盛りするエルザという女の子と三人で幼馴染だったりする。


 実は俺の初恋相手はサラサだった。


 いや、「だった」というのは変か。それは今も好きなことに変わりはないのだから。


 だがサラサは商人であるお父さんの家業を引き継いだ良い所のお嬢様だ。それに対して、いつ死んでもおかしくない野良犬のような冒険者。


 釣り合いが取れていないにもほどがあるだろう。


 なので俺はこの恋心をひた隠しにすると決めている。



 しかし、ケイゴはどうやら気がついているようだ。あいつはなんだかんだで鋭い。観察眼がある。


 でも、あいつは何も言わずに黙ってくれている。本当に良い奴だ。




 どうやらサラサはマルゴのおっさんに惚れているようなのだ。あのにぶいオッサンは気づいていないのか、気づかない振りをしているのか。


 今の関係性を壊すことはしたくないし、成功する目もないのにわざわざ玉砕することもないだろう。


 自分の恋心に蓋をしさえすれば、誰も傷つかない。全てが丸く収まる。


 だからこれが一番なんだ。



 ……恋は甘くて切ないと言うけど、今のところ切ないところしかない。


 やれやれ、本当に恋心とは厄介なものだ。

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