k-407
丘陵地から見下ろした鉱山都市ミルスランは慌ただしい一日を終え、眠りにつこうとしていた。
仕事を終えた山師たちが一斉に家路についていく。
異国であるということを除けば元の世界でよく見たほっと息のつくような時間。
遠目なのではっきりとはわからなかったが、山師たちは国境兵と同じ土の民が大半を占めているようだった。
都市の最奥に目を向けると王の住む武骨な造形をした巨大な城の姿。
俺は、鉱山や火山に囲まれた荒々しい土地に相応しい都市だなと思った。
都市の正門にたどり着いた俺たちは、バンデット王の手紙を魔鉱機兵に乗ったドーリア兵士に見せた。
するとその兵士は敬礼一つ、「城に案内します!」とドーリア語で言うと、魔鉱機兵で馬車を先導してくれた。
ハインリッヒからは、バンデッド王は一代でその武力と統率力で国民をまとめ上げた英雄王である、と聞いている。
王はどんな人なんだろう。
おそらく圧が半端ないであろう英雄王と会うのは正直かなり抵抗もある。
だけどここまで来てそんなことは言ってられないよな、と覚悟を決めたところで、王城に到着した。
城の中に通され、しばらく質実剛健といった感じの客間で待たされた後、バンデット王との謁見の準備が整いましたと執事が告げにきた。
執事に案内され、近衛兵が警護する玉座の間に入る。
事前にハインリッヒから教わった作法に則り挨拶をし、バンデッド王と対面する俺たち。
無骨な形をした玉座には、金髪を刈り上げた頭に銀色の鋭いツノが二本。褐色の筋骨隆々とした巨躯。
バンデッド王は、英雄王という名に相応しい姿をしていたのだった。




