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森人兵士団の兵士長ミハルさんは、「すまなかった。ここ最近森を荒らす輩が増えていてな。許してくれ」的なことを、歌うような独特の抑揚の言葉で言った。
俺たちはメイリーンさんとミハルさんの案内で精霊都市の中へ入った。
中心には大精霊樹が聳え立っており、その中に精霊王が住まう宮殿があるそうだ。
一体どういう構造になってるんだ?
ミハルさんが呪文を唱えると、精霊樹にぽっかりと馬車が通れるくらいの穴が出現。
穴の中に入ると決して暗くはなく、それはさながらアクアリウムの中にいるような、幻想的な風景が広がっていた。
精霊樹の中には広大な敷地と宮殿があった。ただメイリーンさんによると、空洞というわけでもないらしい。テイムホテルの亜空間みたいなもんかな、と思うことにする。
そしてすでに精霊王のエリューン王が待っているそうで、玉座の間へと通されたのだった。
……
初めて会った翡翠の玉座に座るエリューン王は不思議な見た目をしていた。
翡翠色の美しく長い髪の毛、美しい肌、身にまとう薄手の羽衣には木のツタが巻き付いており月桂樹の王冠を頭に乗せていた。
森人に輪をかけての年齢不詳ぶりでまるで人間ではない、というか精霊王というくらいなのだから精霊に近い存在なのだろう。
王の前まで進んだ俺は作法に則り、へだり下りすぎず片膝を地につけ、中腰で頭を垂れ挨拶をした。
そこまでの地位にない他のメンバーは、両膝を完全に遜った体勢で礼儀に失しないようにただ黙して礼をする。
そして俺たちは、キラキラした瞳でじっとこちらを観察する精霊王が口を開くまで、首を垂れ続けたのだった。




