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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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 ラフィットさんの宴会は大富豪の名に恥じない豪勢なものだった。


 出された酒はこの土地の特産品であるパープルヘイズという名の酒だそうだ。


 少し舐めただけで得も言われぬ陶酔感を覚えるほどの美酒だった。


 だがここは飲みすぎて失態を犯さないように水にしておこう。ほぼ初対面の国のトップの前で、へべれけになるのはまずいからな。


 一応マルゴたちにも酔いすぎるなよ、と言っておいた。



 また余興が素晴らしかった。異国情緒漂う音楽に乗せ絶世の美女たちがシミターを使って剣舞を踊ってくれたのだ。


 そして驚いたことに美女たちは全員ラフィットさんの妻なのだそうだ。



 凄いなあと思いながら、自然とラフィットさんの鍛え上げられた大胸筋から大臀筋に視線がいってしまい、こほんと咳払いひとつ誤魔化したのだった。


 まあ人は人、自分は自分。大富豪が多くの妻をめとることも元の世界ではあったしな。


 俺はどんだけ凄いのかと頭によぎった自分を恥じた。



「こっちが妻ナターシャだよ! ナターシャは遠い西方の地の貴族の血筋で、この町に旅行に来ていたところオアシスの畔で出会い恋に落ち我が妻となったのさ!」的なことを言ってくるラフィットさん。


 「妻とは~で出会い恋に落ちそのまま結婚した」的なくだりはこれで59回目だった。


 色男ラフィットさんの恋路はまだまだ続きそうだ。


「そうですか、皆さん仲が良さそうで羨ましいです」


 とジェスチャー混じりで一応返しておいたが、大変そうなので全然羨ましくない。


「妻たちはみんな仲がいいのさ!」


 サムズアップに白い歯がきらり。芸能人は歯が命。


 ラフィットさんと話しているとどうも “シンドバット” という元の世界で名を馳せた生粋のプレイボーイの名が浮かんでくるな。


 まあ、NTRとかなっても嫌だからユリナさんをこの人の半径100メートル以内には近づけないようにしよう。


 中にはこれOKなの? って言うくらい若い奥さんもいたしターニャもNGにしとこう。


 俺は笑顔を浮かべながらそんなことを思ったのだった。



 ラフィットさんは「そうだ。このパープルヘイズ気に入ったならキミにプレゼントするよ! 今度買ってくれよ?」と言った。俺も気にいっていたので、「美味しいです! 買います!」と返した。


「それはよかった! ナターシャ、ケイゴについであげておくれ」



 それからナターシャさんのお酌を受けた俺は、ラフィットさんと飲み明かした。


 営業相手にこんなに酔ったのは初めてのことだった。

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