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夕方俺たちは迎えの馬車でラフィットさんの宮殿に向かった。
ラフィットさんの宮殿にはオアシスから贅沢に水が引き込まれ、プールや庭園が造られていた。
応接で彼は、色とりどりの宝石を身に着けゴージャスな笑顔を浮かべて迎えてくれた。
俺は土産にラフィットさんに水属性を付与した鉄の板【ウォーターボード】を何枚か渡した。
彼は「おー感謝感謝の大感謝だよ。この砂漠では水が命の次に価値があるからね!」的な雰囲気のことをランカスタ語でもないこちらの言葉で言った。
「ええ。これからも宜しく頼みます」
俺もどちらにせよ言葉は通じないので、日本語でそう返したのだった。お互い笑顔とジェスチャーがあれば意外となんとかなるもんだよな。
ここに来る途中で見た市場には、世界各国から珍しい織物や宝石など、貴重なものが多く流通しているようだった。
この間の交易でそれらの品は今後も仕入れたいし、それ以外にも貴重な品がありそう。
ラフィットさんとはこれからもウィンウィンの関係でいたい。俺は彼にそう伝えたのだった。
「ところで一応以前サラサ商会でお見せしたグラシエス様の神像(商品名:神像くんα)をお持ちしているのですが、いかがでしょう? 効果を考えると悪くない話だと思いますが」
俺は商品を布から取り出すと、こちらの言葉に翻訳した手紙を添えジェスチャー混じりでラフィットさんにすすめてみた。
ラフィットさんは眉毛を片方だけあげると、笑顔のままやんわりと「いらない」と言った。理由は街を案内した時にでも話すよ、とも言った。
「そんな話はさておき、キミたちを歓待する準備はできているよ!」的なことを言うラフィットさん。
俺たちは御相伴に預かることにした俺たちはラフィットさんが用意してくれた、宮殿に面したオアシスの水辺に設けられた宴会場へと移動することにした。
……
宮殿の外に出ると外はもうすっかり夜になっていた。
砂漠の夜空には星々が輝いていた。それがオアシスの湖面が鏡となって幻想的な風景を醸し出していた。
手を繋いで歩きアラビアンナイトなデート気分の俺とユリナさんは、感嘆のため息を漏らしたのだった。




