k-384
ギラつく太陽、吹き荒れる砂嵐、底冷えする夜。
そう、俺たちは今旅の途中。砂漠の真っ只中にいる。
あまりに暑すぎるので、ロシナンテ(馬)とメイクイーン(牝馬)に水属性補助魔法スクリーンをかけた。
スクリーンは体表面に水の膜を作り温度の急激な変化を緩和する、エアコンみたいな効果のある魔法だ。本来炎、氷のブレスに対抗するための魔法だけど、当然暑さ対策にもなる。
体調が復活したハン先生に教えてもらい覚えた。
スクリーンとサスペンションの効いた最新馬車のおかげで道中快適に過ごすことができた。
この後予定ではラフィット氏の治めるトラキア商業国家連邦に入ることになる。
その後西に行き肥沃な森林地帯のある精霊王国メキア。
さらにはメキアから南東、トラキアの南側に位置する峻厳な鉱山が立ち並ぶガンド王国を巡る予定だ。なんでも英雄王と呼ばれる土鬼族の王様がいるらしい。
そろそろトラキアとの国境検問所が見えてくる頃。
国境検問所に入った俺たちはラフィットの署名が入った通行許可証をトラキア側の国境警備兵に見せトラキアに入国することができたのだった。
◆
さらに南進した俺たちは、死砂漠と呼ばれている一体に突入した。
暑いだけではなく、激しい砂嵐、凍りつく夜、襲い来る砂漠型モンスターから付けられた名前だそう。この難所を抜けられてこそ一流商人なのだそうだ。
俺たちは何度も通り抜けた経験のあるハインリッヒの道案内で、巨大流砂、モンスターの巣があるような場所を避けつつ、さらに南を目指した。
不意にアッシュが唸り出したと思うと、馬車が停止。
「テキダ!!」
御者台に座るジュノが叫んだ。俺たちは武器を手に取ると外に出て辺りを警戒した。すると。
ボコボコボコボコ ザパア!
急に地面が盛り上がったかと思うと、地面からピンク色の巨大な化け物が現れた。
【パニックワーム:トラキア地方の砂漠に生息する巨大ワーム。土の中を移動し人や馬を襲う。脳に悪影響のある依存性の高いブレスを吐き、ブレスを吸い錯乱した獲物を食らう習性をもつ。体力513、魔力567、気力712、力352、知能287、器用さ331、素早さ341 保有スキル:パニックブレス、超吸収】
グロロロロロ
唸り声をあげる超絶デカイミミズのようなモンスター。きもす。
地中から出たばかりのモンスターの体から砂漠の土砂が大量に流れている。モンスターは牙だらけの大きな口を開け何かを吐き出した。
ドチャッ
「ヒッ!」
サラサとアイリスがそれを見て短く悲鳴をあげた。
それは丸飲みにされた人と馬が全てを吸いつくされ体液まみれの骨だけになったものだった。どこぞの戦士だったのか金属製の鎧が消化されずに残っている。
「こいつには錯乱ブレスがある! 気を付けろ!」
俺は注意喚起したが時すでに遅し。
デザートワームの頭の付け根部分が大きく膨らんだかと思うと、マスタードの色をしたブレスを吐き出しのだった。




