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霊薬を飲んですぐに優しい光がヴィオラちゃんの体を包み込み、まるで癒しの光のようだった。
しばらくすると、ヴィオラちゃんの体に劇的な効果が現れ始めた。
玉のように浮かんでいた汗とともに熱が引いていき、呼吸も安定し始めた。
蒼白だった顔色も良くなってきた。
最終的には意識を取り戻したかと思うと、ベッドで自ら上半身を起こし「オカアサマ、ヴィオラハノドガカワイタデス!」と元気いっぱいに主張したのだった。
愛娘の回復にゲルニカ陛下とイザベラ王妃は滂沱の涙を流して喜んだのだった。
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それからは大忙しだった。
用事が済んだので帰ろうとしたらシルフィード様に引き留められた。「王家の恩人を何もせず帰すようなことがあれば、王国の名折れ!!」的なことをジェスチャー混じりで言われた。
いや普通に帰していただくのが一番嬉しいのだけども……と思いつつ、遠慮して口に出せないのはNOの言えない日本人の悲しい性か。
俺はユリナさんに心の中で謝りつつも、濁流に身を任せることにした。
それから王都中の貴族に早馬で伝令が走ることになった。ヴィオラちゃん快気祝賀パーティを開くのだそうだ。
横を見るとイザベラ王妃がユリナさんに話しかけていて、「ユリナさん、パーティまでお茶会でご歓談するのはどうかしら? 美味しいクッキーがありましてよ?」みたいな感じのことを言っていた。
そう言われた瞬間、笑顔がピシッと凍りつくユリナさん。
わかる、わかるよ!
俺は心の中でユリナさんに激しく同意する。だがこのまま固まっていると不興を買う恐れがある。
俺はすぐさま「アリガトウゴザイマス!」と45度の最敬礼と一緒にランカスタ語でフォローを入れたのだった。
断れなくてごめんよ、ユリナさん……。
それから俺とユリナさんは、緊張感漂うロイヤルお茶会に参加するハメになったのだった。




