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会議の内容を聞いていると、やはり両国で諜報合戦をやっているようだった。
敵軍に紛れ込ませているスパイによると、こちらにも敵軍のスパイが紛れ込んでいるとのことだった。
そして、こちら側のスパイから有力な情報が入ったとのこと。
どうやら勇者を探す敵軍が戦闘力のある者をスパイとして潜り込ませており、タイミングを見計らい、両軍激突の瞬間挟み撃ちにする計画だというのだ。
そして、その敵スパイはヴォルフスザーン男爵軍に潜入しているらしい。
「えっ」
ジュノの筆記を読み思わず変な声を出し、ご列席の方々の視線が集まった。
アハハ……、と言いながら後頭部をかく俺。
エルフ族出身らしく耳の尖ったランカスタ王国軍の総司令官シルフィードさんにより、この件は戒厳令が敷かれ作戦が立てられた。
それは密にスパイを暴き出し、泳がせ、敵の罠にハマったと見せかけて反撃にでるというものだった。
◆
作戦に従ったスパイを暴き出すという密命を追った俺は、ジュノやマルゴと一緒に兵士たちの元に戻ることになった。
兵士たちは少し休養した後、今の時間は王国軍の訓練場で訓練をしているはずだ。
また男爵軍改め準子爵軍の大半はレスタからの移住者が多く、バイエルン様やハインリッヒが知っている者も多い。
そのため、バイエルン様とハインリッヒにも同行してもらうことになった。
また、敵を見分けるにはアッシュの悪意看破スキルが使えるかもしれないので抱っこして連れて行くことにした。
本当は仲間を疑うようなことはしたくないんだけど。
まあ、それで被害が抑えられるかもしれないなら、協力しないわけにもいかないか。
俺はバイエルン様たちと一緒に兵士を労うふりをして、兵士一人一人に声をかけていったのだった。




