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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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k-325

 謁見の間に入ると、全員が一斉に俺たちを見てきた。



 いや、正確にはターニャを全員がガン見していたと言った方が正しいだろう。



 そして陛下は非常に目力の強い方だが、臣下のお貴族様方も大概の迫力だった。


 中には実は偉かった伯爵のバイエルン様とその息子ハインリッヒの姿が。


 フサフサ頭を取り戻し、無事峰不〇子風美女のローズさんを口説き落としたアルペンドレ男爵もいた。



 急に数十に及ぶオスライオンのような鋭くも熱いマナザシを受けたターニャは「ヒッ!」と短い悲鳴を上げ、俺の右足を小さな手で一生懸命ぎゅーしてきた。


 ターニャは見た目は可愛い女の子でもステータス1000以上の力もち。俺のベヒーモス素材の足鎧がミシミシ音を立てているけど、今は気にしないでおこう。


 俺の左腕に抱っこされたアッシュもビックリしたのか、ウーっと唸っている。



 俺は「大丈夫だよ」と言いながら右手でターニャの頭、左手でアッシュの頭をなでなで。



 その様子を見ていた陛下が「ガハハハ!」と豪快に笑い、列席のお歴々も釣られて笑った。


 思わず「アハハ……」と右手で後頭部をかきながら商社マン的な愛想笑いをする俺。



(自分を偽るのが嫌で商社をやめちまった俺だけど、こんな営業スマイルごときで危険リスク回避できるなら安いもんだと、異世界サバイバルしている間に考えが変わっちまったな……)



 それから俺は勇者と神獣を連れてきたことを報告し、ターニャとアッシュを紹介した。


 さっそく俺はターニャとアッシュの鑑定したてほやほやのステータス表を陛下に手渡し、ここ最近勇者を覚醒させここまで育成したことを改めて報告したのだった。



 それを見た陛下は猛牛のような唸り声を上げ、その唸り声は他の目力の強いお歴々にも伝播。まるで闘牛場のマタドールにでもなった気分だ。



 ターニャにはその力の証明に、竜気法ドラゴニックオーラをフルパワーで発動してもらった。


 プレッシャーに恐れおののくご列席の方々。こんなもんだろうということで、ターニャにオーラを止めてもらった。



 すると陛下は俺に握手を求められ、両手でブンブン、シェイクハンド。「ヨクヤッタ!」と野太い声で礼を言われた。



 陛下は宰相っぽいモノクルをかけた神経質そうなオジサンに声をかけ、何かを言った。すると宰相は部下に金貨袋をもってこさせ、何かを書いた紙と一緒に俺に渡してきた。



【勇者と神獣の保護・育成の功績を称えヴォルフスザーン男爵を準子爵に叙爵するとともに金貨100万枚を与える。また準子爵には法衣貴族2名の任命権を与え寄り親となることを認める】



 そう書かれていた。


 ちなみに法衣貴族とは国から領地は与えられず、名誉と定期的に金銭が与えられる地位の貴族を意味するらしい。その任命権を俺に与え、部下に報いることで褒美とするということなのだろう。



 その瞬間、目力の強いオッサン貴族たちから猛牛のような唸り声とともに拍手が沸き起こったのだった。



 陛下は「今後も勇者を導くよう期待する」的なことを仰ってくれた。



 内心「勇者は国王軍が預かる」と言われないかヒヤヒヤしていたけど、ターニャが俺に懐いているところを見て、任せた方が得策と判断したということなのかも。


 それに俺は王国貴族でもある。どこの馬の骨かわからない奴ではないからね。




 ターニャは目力の強いオッサンたちが苦手なようで、終始俺の右足にひっついていた。


 アッシュは最初眠たそうにアクビをしてコックリコックリしてたけど、メイドさんがお菓子をもってきた瞬間耳がピーンとなり、尻尾を千切れそうなくらいブンブン振って全身で喜びを表現していたよ。



 割り振られた席についた俺は、軍議の様子をジュノに通訳してもらい(筆記してもらい俺が鑑定して解読、発言する際は紙に書いてジュノに代読してもらう)、軍議に参加したのだった。



 大量の金貨はビードラが眠っている亜空間に突っ込んでおいた。


 亜空間を覗きつつ、金貨とドラゴンなんていかにもだなあと呑気に思う俺であった。

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