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俺はターニャとアッシュに起きたことを話すことにした。
本来は初対面の人に話すようなことじゃないんだけど、この村はこちらの事情を話すべき特別な “理由” があった。
彼らは、俺のもっている牙の持ち主 “竜神グラシエス” を崇める信者の集まりだったのだ。
彼らグラシエス教信徒は世界を席巻するゼラリオン教に押され、迫害を受け、このような場所に隠れ住まないといけなくなった。
数百年前にとある王国に “竜の巫女” と呼ばれるグラシエスの加護を受けた勇者が誕生したが、ゼラリオン教団によって王国は滅ぼされたらしい。
その際、命を落としかけた竜の巫女は竜神によって天に連れ去られたという伝説が教典に残っているのだそうだ。
ターニャとアッシュとのこと、そして牙を俺が持っている経緯を説明すると、タリフ翁は教典を持ってきた。
なんでも牙に魔力を込めて写経することで、魔王のような存在に対抗する特殊な力をもった聖遺物が出来るかもしれないとのことだった。
俺はターニャとアッシュを守るために出来ることは何でもやると決めた。
俺は、タリフ翁から教典をありがたく受け取ることにしたのだった。
そして、タリフ翁は孫のシエラさんを「お供に是非」と言ってきた。
タリフ翁の家系は竜の巫女の末裔の血筋で、シエラさんは先祖返りのような強い力をもっているそうだ。
信頼できる戦力があるのはありがたかったので、俺はその申し出を受けることにしたのだった。
話が終わったところでタリフ翁は村人を集め、ささやかながらと言いながら宴を開いてくれたのだった。




