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k-36

 16:30

 帰宅。色々やっていたら、結構時間を食ってしまった。


 なぜか、ジュノとサラサが俺の家の庭のテーブルに腰掛けて談笑していた。お前ら暇なのか。そうなんだな。


 俺は荷馬車を厩の横につけ、馬を厩に入れ水を飲ませる。ちなみに俺の愛馬の名前はロシナンテだ。


 二人は、食料やインゴットやらの荷下ろしをしてくれた。


 俺は、今日の獲物である、バトルブルに塩をかけニンニクをすりつぶしたものを塗りこみ下ごしらえをする。


 あとは野菜を適当に切る。今日は牛肉でバーベキューだ。


 牛肉には赤ワインということで、厳密には赤ワインではない、果実酒をテーブルに出す。


 コップと皿とフォークを三人分出し、肉を焼き始める。


 とても香ばしい匂いがする。肉を噛むと牛肉特有の肉汁が口一杯に広がる。至福の時である。


 それを、赤ワインっぽい果実酒と一緒に飲み込む。最高である。


 サラサとジュノも至福の表情を浮かべながら、モグモグと口を動かしている。すると、キャインという獣の悲鳴が聞こえてきた。


 ブルーウルフがいつの間にやら接近してきて、アンクルスネアに引っかかったようだ。


 しかしでかい。体長3メートルはある。なんか体の色が違うような気がするが……。


 俺たちは、武器を取り臨戦態勢をとる。狼は通常団体で行動するものだからだ。


 すかさず、俺はドヌール毒の矢をブルーウルフに打ち込む。矢が体に命中し、ブルーウルフは体を痙攣させ倒れる。


 俺たちは小屋の周りをぐるりと一周したが、敵らしき姿は見当たらなかった。


 俺たちはもう一度倒したブルーウルフの前まで移動し、一応鑑定をしてみる。すると。



【アッシュウルフ:ブルーウルフの上位個体。レアモンスター】



 と表示される。


 俺たちは、仕留めた獲物を解体しようと、アッシュウルフに近づくと、落とし穴からクーンと切なげな鳴き声が聞こえてきた。


 それは、アッシュウルフの子供だった……。


 俺は、その子狼を抱き上げる。子狼は尻尾をフリフリさせた。しかし……か、可愛い……。


 その子狼に、バトルブルのステーキを小さく分けたものと水を上げたら、尻尾をふりふりして、喜んで食べていたよ。


 お腹一杯になったのか、ロシナンテの傍にある藁の束にトコトコ歩いていき、尻尾を丸めて眠りだした。



 ――俺は子狼の親を手にかけてしまった。

 


 狼は俺を殺しにかかってきていた。やむを得ないとはいえ、俺はこの子の親の仇になってしまった。


 無邪気な子狼の姿を見ていると、チクリと棘のような何かが心に引っかかり、罪悪感でいっぱいになった。


 罪悪感からなのかはわからない。アッシュウルフの子供は、俺が責任をもって育てることにした。


 小さいころから育てれば、もしかすると人間に懐くかもしれない。


 大きくなって、もしも人間に危害を加えるようなら、その時は俺が責任をもって処分するしかない。




 ――そして何より、親の仇であると知ったこの子が、俺に復讐心を抱いたとしたら。


 そのとき俺は、弱肉強食のこの世界における誠意をもって、全力で相手をしてやろう。


 そう思った。



 ◇◇◇



 アッシュウルフの成体の方は、俺とジュノで解体した。


 牙を鑑定したら、【アッシュウルフの牙:武器の精錬に使うと金属が変質する】と出たので俺がもらうことにした。


 皮の方も上位個体ということで、結構な価値があるようで、トータル金額を按分してその中から、牙の代金を差し引き清算することにした。


 素材の買取はサラサの商店が、ギルドへの討伐報告はジュノが行うことになった。


 それと、俺はこのアッシュウルフの黒寄りの灰色という色合いが気に入り、サラサにジェスチャーでマントに加工するよう頼んだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] ロシナンテ? ドンキホーテの馬かな。 子狼がチョロくて可愛いので、このまま仲間になると良いなと思った。
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