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陛下やバイエルン様の前で薬を調合するのもどうかなと思い調理場を借りようとしたら、目の前でやってくれと言われた。
「じゃあ、始めますね」
俺は持ってきてもらった野外錬金用の簡易テーブルを窓際に広げ、その上に水ガメ、ヒシャク、オタマ、ハシ、包丁、まな板、すり鉢、鍋、魔核製魔動コンロ、ポーション素材等々を並べていった。
とりあえず準備は整った。
まずはお湯を沸かす。
その横で薬草類、レッドグリズリーのアレはすり鉢ですり潰し、後で比率を量る必要があるので材料ごとに皿を分ける。
錬金術中の魔力切れが起きると素材が台無しになるので、ベルジン魔力草を口に入れ、ガムのように何度もかみしめる。
それから煮立ったお湯に決められた順番、比率で投入し、魔力を込めつつ混ぜ込むこと半時ほどし液体が発光すればOK。
そうして出来た液体を念のため鑑定して問題ないことを確認。
ポーションビン詰め作業は液体を冷やしてからで、自然冷却でもいいけど、鍋の外からアイスの魔法で冷却。
常温まで冷えたポーションをビン何本かに分けて入れ封印、完成。
その一部始終を見ていた陛下、バイエルン様は拍手喝采。宮廷錬金術師は苦々しい顔。アルペンドレ男爵は期待と不安が入り混じった顔をしている。
「アルペンドレ男爵、これをどうぞ」
俺はそう言ってビンを渡すと、アルペンドレ男爵はグイっと一気にいった。
すると頭皮だけでなく、くすんでいた皮膚という皮膚がピチピチになり、モチロン頭はフサフサに。
薄くなった頭をカモフラージュするためにつけていたマフィア風シルクハットが髪の毛に押し上げられるほどだったよ。
ジルさんがもってきた鏡で自分の若返った姿を見て、アルペンドレ男爵は号泣。
俺の両手を握り泣きながら御礼を言うと、「ローズうぅぅ!!」と叫びながら部屋を出ていったのだった。
良かった良かった。
賠償金を受け取るのと謝礼を受け取るのとでは後味が全然違うからな。
これで気持ちよく金貨10万枚も受け取れるというものである。
俺の錬金術を見て感動したのか陛下とバイエルン様は陛下の装備を作るところも見たいと言い出した。
特に断る理由もないので快諾し、明日の日中に来てくださいと伝えて今日のところは帰ることにした。
あー、魔力使ったから疲れた。
帰って風呂にでも入って寝ようっと。




