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ランカスタ王国第六代国王の名の元に命ずる。
ケイゴオクダ(住所:レスタの町、南方)に男爵位の爵位を授与し、ヴォルフスザーンの家名を与える。
【叙爵理由】
先立ってのレスタの町南門における、コボルトキングを含むモンスターの大群との戦闘での武勲。レスタの町のスラム街での社会奉仕活動の貢。今後もランカスタ王国への貢献を期待する。
男爵位の授与に伴い、以下の権限を付与し、義務を課す。
【権限】
ランカスタ王国南端、ボーラシュ平野の統治権。
【義務】
徴税した金員について、毎年王家が定める上納率に則った上納義務(但し、以後3年間の税は免除)。王国有事の際は派兵すること。領内の治安維持、経済発展。
【その他恩賞等】
褒賞としてランカスタ王国金貨10万枚を与える。
バイエルン伯を寄り親とし、バイエルン伯は寄り子であるヴォルフスザーン卿の未開地への入植に協力すること。
レスタの自警団組織 “蒼の団” をヴォルフスザーン卿の預かりとすること。
以上
ランカスタ王国歴三五六年 花の月
ランカスタ王国 第六代国王 ゲルニカ
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目力の強いオッサンもとい、ゲルニカ陛下から宝剣と一緒に手渡された羊皮紙の巻物にはそう書かれていた。
何かの冗談かと思いたいがどうやらそうではないらしい。
領地運営の資金として金貨10万枚はちょっと少なくないか? とか、叙爵理由は王様の寂しい頭を復活させたことだろう? とか、文章全体の中に輝く “未開地” という単語が無性に気になったりとか、色々聞いてみたいことはあったけど、相手は国王。
ここは腰を低くしておくのが吉だろう。
そして宝剣はというと……。
【宝剣デルムンド:希少金属ミスリルで作られた剣。ガンド王国の刀匠デルムンドの銘をもつ一振り。使う者の実力によって攻撃力が変わり、実力者が使えば岩を割るほどの斬撃を飛ばすこともできるとの逸話がある。別名成長する剣。攻撃力+33】
確かに実力者にとっては凄い剣なんだろうけど、今の俺にはちょっと使えなさそうだ。
ヘルファイアソードが攻撃力+25なので大して変わりないし、斬撃も飛ばせないなら火球の出るヘルファイアソードの方が使い勝手がいい。
ということで宝剣はお蔵入りすることになりそうだ。
それよりもこの後、バイエルン邸の大広間で祝賀会を開くそうで、ここが商社マンとして本領発揮すべきときだ。
なぜなら貴族になったとぬか喜びして左うちわで生きて行けるほど、人間社会は甘くない。
人間は良いところもある反面、他人の成功を妬んだり足を引っ張ったりする生き物。
貴族になったと言えば聞こえはいいが、要するに王様という上司が出来て自由が奪われるということでしかない。
王様の不興を買えば首などアッサリ飛ぶだろう。
そんな中、もし地位や名声が欲しい誰かが俺を妬み、失脚させてやろうと王様に悪口でも吹き込んだらどうなるか。
俺の命など簡単に消されてしまうだろう。
なので、権力欲や嫉妬心からの毒殺謀殺誅殺は実際にあると思って動いた方が良さそうだ。
こういった人間の行動心理は、日本や世界の歴史がそれを物語っている。
こちらの異世界の人間だけ心は綺麗だろうと考えるのは、あまりに不用心だと思う。
毒でも新しく作って毒耐性でも上げとくか。あと食器は銀食器に変えなきゃ……。
「これ、ユリナさんと会ってなければもう一度世捨て人に戻ってるところだよな……」
俺は次々と大広間に運ばれては真っ白なレースのテーブルクロスに並べられていく料理を見ながら溜め息をついていた。




