k-242
コボルトキングを倒しへたり込んでいた俺の元に、ロシナンテ(馬)が駆けよって来た。
「……よかった、無事だったか」
俺はロシナンテ(馬)のたてがみを撫でていたら、周りにいたブルーウルフたちも近寄ってきたので頭を撫でてあげた。
「お前たちもありがとうな」
周りを見渡すと明らかにモンスターたちの動きが鈍くなっている。
というか連係できておらず、バラバラに動いているだけだ。
とはいえまだ100体以上のモンスターがいることには変わりはない。
「それじゃあ、もうひと働きしますか」
余ったポーションを飲み干しロシナンテ(馬)に乗った俺は、ブルーウルフたちとモンスターを倒すことにしたのだった。
◆
モンスターをあらかた片付け終わった頃にはすっかり日も落ち、夜になっていた。
倒したモンスターの処理は朝になってからということにして、一度全員町の壁の中で休むことにしたのだった。
家に辿り着いた俺は軽く湯で汚れを落とした後、ベッドで泥のように眠ったのだった。
真夜中、変な時間に目が覚めた。
視線を横にずらすと、テーブルの上に乗ったランタンが柔らかな光を発していた。
どうやら俺は、ベッドに寝かされていたようだ。
横を見ると、ユリナさんがスヤスヤと寝息を立てている。
アッシュは俺の足元で可愛い寝息を立てている。
どのくらい眠っていたのだろう。
確か夜飯も食わずに眠ったはずだ。
そう思ったら急に腹が鳴り出し、ついでに体の節々が悲鳴をあげていることに気がついた。
「のど渇いた……」
俺はユリナさんとアッシュを起こさないように、そっとベッドから抜け出し、テーブルの上にあった水差しの水をコップで飲んだ。
テーブルの上にはパンが置いてあったので、とりあえずそれをかじる俺。
すると、アッシュがベッドから降りて足元で俺を見上げ、しっぽをフリフリしだした。
「しー」
「マンマ、チョーダイ!」と吠えそうな予感がしたので、人差し指を口元に当てジェスチャーしつつアッシュを片手で抱き上げ、キッチンへと向かう俺。
キッチンの窓から見る町は、すっかり静かだった。
鍋に食材を放り込み、煮込みながら橙色の炎を見つめてボーっとする俺。
一歩間違えれば死ぬところだったな。
いや、むしろ助かったのが奇跡に近いのかもしれない。
今になって手が震えてきやがった。
平和ボケしていた俺には理解できなかったけど、敵に立ち向かわなければ確実に全てを失っていた。
ボーっとして何もできませんでしたで済む話ではなく、何もしなければ滅びてそれで終わり。
それ以上でも以下でもない。
「世界は実は物凄くシンプルに出来ているのかもしれん」
飯を食って腹を満たした俺は、アッシュを抱き上げ、もう一度ベッドで眠ることにした。
ユリナさんを起こさないようベッドの布団を掴む俺の指は、もう震えていなかった。




