(モノローグ・ハインリッヒ)急報
「さて、ケイゴの小屋に寄る前に森のモンスターでも狩っていくか」
散々俺のことを馬鹿にしていた奴の中で、俺はまだ弱いままで世間知らずのボンボン貴族ということになっているに違いない。
貴鉄クラス冒険者の実力を見せつけるいい機会だ。森でヘルハウンドあたりでも狩っていけば、奴も俺のことを認めざるをえないだろう。
それから俺は、暖かい陽気に包まれるレスタ南の森で狩をすることにしたのだった。
森に入ると中はやけに静かだった。
小動物や鳥の音がしない。
「……もっと奥を調べてみよう」
なぜか胸騒ぎがしたので、俺はもっと森の奥を調べることにしたのだった。
森の奥深くに入っていくと、次第に禍禍しい気配が漂ってきた。
匂い消しに木の葉や泥を塗り静かに気配の元をたどると、その気配の主が判明した。
「あれは……、コボルトキングか!! それに何だあの数は」
俺は息を押し殺して驚いた。
コボルトの最上位種であるコボルトキングの元におびただしい数のモンスターが集まっていた。
見えるだけで、少なくとも4~500はいる。
群れの主であるコボルトキングは巨大な蜥蜴型モンスター、アーマーリザードにまたがり、片手に巨大な戦斧をもち軍を睥睨していた。
「コボルトキングが他の種族も率いるなんて、聞いたことがない」
群れの中にはコボルトファイターの上位種コボルトファイター・エヴィリオンがコカトリスやサーペントを操っているようだった。
格下のゴブリンやホブゴブリンたちも群れの中におり、どうやらコボルトキングはゴブリンどもも従えているようだった。
「これはまずい。すぐにでも町に知らせねば」
あの数の不意打ちを食らえば、レスタの兵士団ではひとたまりもない。
するとスンスンと鼻を鳴らしたアーマーリザードが俺に向かって咆哮。
と同時にコボルトファイターエヴィリオンが弓を速射した。
矢は草むらに隠れた俺のすぐそばを通り、木の幹に深々と突き刺さった。
それは一瞬の出来事で、後から俺の心臓が早鐘のように鳴り出したのだった。
それから後のことは必死すぎて覚えていない。
俺はその場から逃げ出し、気がつけばレスタの南門に駆け込んでいたのだった。




