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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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モノローグ・エルザ2

 私はエルザ。レスタの町で宿屋「陽だまり亭」を経営している。


 私にはお付き合いをしているジュノという彼氏がいる。


 彼とは幼馴染で、今は冒険者という危険な職業についている。


 そして私にはジュノと共通の親友がいる。名前はケイゴとユリナという。


 私にとってもジュノにとっても、毎日のように行き来をして、本音をさらけ出せる数少ない友人だ。


 レスタの町はずれに住んでいて、二人は本当に幸せそうに暮らしていた。


 しかしその二人を、この町を牛耳るハインリッヒという貴族が私欲のために捕らえようとした。


 私の父は町議会の議員をしており、元々父と母がこの宿を切り盛りしていたものを私が引き継いだ。


 ハインリッヒの動向も父経由で情報を仕入れることができた。



 私はマルゴとサラサと共に、ケイゴとユリナがレスタを去るところを見送った。


 ケイゴの手紙には必ず戻るなんて強がりが書いてあった。


 そんなの無理に決まっているじゃない。あなたが優しいのは知っているけど、優しさは時に罪なのよ。


 ジュノもケイゴと同じことを言っていた。


 男って本当にバカ。そんなことで私が喜ぶとでも思っているのかしら。


 その後、マルゴがケイゴとユリナを助けるから協力してくれと言ってきた。


 当たり前じゃない。私はむしろその言葉を待っていた。


 私とジュノは当然協力すると応えた。




 私の役割は裏方。


 町議会議員のお父さま、バラックのツテを最大限活用することと、宿屋をレジスタンス『蒼の団』のアジトとして管理すること。


 信頼する使用人たちには声をかけ、協力してもらうことにした。



 ケイゴとユリナが理不尽に追われていることにどうしても納得がいかない。


 なぜ、あんなに良い人たちが理不尽な目にあわなければならないのかが、全く理解できない。


 「貴族だからなんでも言うことを聞け」と教わってきたけど、納得なんてするもんか。




 でも、お父さまには本当に申し訳ないわ。


 せっかく議員という名誉職についたのだから、娘としては平穏な日々を過ごしてほしかった。


 でも、状況がそれを許さない。こんな横暴を放置しておいたら、お父さまの地位だって危ういかもしれない。



 それも含め父に親友であるケイゴとユリナがどんなに酷い目にあっているのかを話したら、少し考えた後、協力すると言ってくれた。


 私は思わず父を抱きしめてしまった。


 もう後には引けない。


 ジュノが武力で戦争をするなら、私は私で武力以外の戦争をしよう。




 失敗する可能性は高い。


 ならばせめて、後悔しないようにしよう。信念のまま突き進むんだ。


 私は親友たちが負っている荷物を、自分にも分けてもらうと決めた。



 それから私は目を閉じ、ケイゴの小屋で皆で乾杯して馬鹿騒ぎしている自分たちの姿を思い浮かべ、



「もう迷わない」



 レジスタンスの決起集会となる会場設営に取り掛かったのだった。

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